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ボーイッシュ

——サラマンダーを倒すために手助けしてくれたのはこの獣人たちが住む村の『みこ様』と呼ばれる一人のクールな青髪のイケメン美男子だった。


いや、美男子というよりむしろ本当に女の子みたいと表現すればいいのだろうか?


なんとそのクールな彼女? 彼? まあいい!


ケモミミ少女のシティーヌ曰く、その彼女の旦那様がなんとオレだと言うのだ。



…いや、なんで!?



何とも子供の戯言は大人をどうも惑わせる能力があるらしい。


オレが誰かの旦那様って、ありえない!


いやほんと、笑っちゃうほどありえない!


だから問いただす誰が、誰の、旦那なのか!?


そしてみこ様と呼ばれるその人は女の子かそれとも男の娘なのか!?


実際、後半の方が結構気になっているのだ。



「何を言ってるんだ、シティーヌ。ボクの旦那様なわけないじゃないか」



そんな一人芝居を心の中でしているとみこ様がシティーヌを諭すように言う。


そしてクールな感じでさらっと旦那様発言も否定した。


なんかこうもあっさり否定されると心の中で一人盛り上がっていたオレはどうすればいいんだ。



「え〜! そんなことないもん! シー、見たもん!」


「それはきっとシティーヌの勘違いだよ……」


「むぅ〜、ちがうもん! ほんとだもん!」


「こらっ、シティーヌ! 巫女様に失礼でしょ!」


シャルルに止められてシティーヌは駄々をこねている。


みこ様が何度否定してもどこか確信的な何かがあるのかシティーヌはまだ諦めていない様子だった。



「それより。まずは助けてくれてありがとう、トビ」


「あ、いやこちらこそ…」


「ボクはこのアルケミア村の(おさ)をしているライラだ!」



そう言って手を出してきたのでオレも手を出してお互いに握手を交わす。


ライラという名前は女の子なのだろうか?


だが容姿や格好からするとどうも男っぽいが、いわゆるボーイッシュというものか、これは?


オレはライラが着ている服装を見てみる。


その服装は村の長にしてはかなり高潔のような気がしたからだ。


まあ、今考えるのはやめよう!



この後、オレはライラにアルケミア村について教えてもらった。


この村はこの辺りを納めているとある貴族の領地でアルケミア村はその一部の領地である。


ライラは村長としてこの領地で村の開発と経営を任されたのだ。


そしてこの村の開発に賛同してくれたのが獣人たちだった。


だが未だアルケミア村は未開発であり、運営が不安定なのだ。


さらに魔物の襲撃にも対抗できるほどの武器や装備もないため、ライラの能力でこの村全体に結界を張っているらしい。


オレはその話を聞いてライラの服装や村の文化レベルに納得がいったがどうも腑に落ちない部分があった。


それがサラマンダー襲撃の件だ。


奴のこの村への執着というか、襲い方が普通ではなかった。


基本的にというかこれはオレの勝手なイメージだが魔物というもの性質は目の前の獲物があるのにわざわざなぜこの村を襲ったのかだ。


この村の人口はさほど多くはないが魔物の腹を満たすのには

問題はないだろう。


だがこの村の位置とオレがサラマンダーと戦っていた場所とはかなりの距離がある。


魔物の本能なのかそれとも単に奴の嗅覚が鋭いのか、だとすれば俄然納得がいくがそれでもまだ疑問は残る。


それはライラは結界を張っていると言ったが結界がそこら辺にいる魔物に破られるものなのか?


オレも見てみたがかなり硬度な結界だから破られることはないはずだ。


これについてはライラも疑問を抱いていた。


それはさておきオレには未だに残る謎がある。


それが、『みこ様の旦那様』と呼んだシティーヌのことだ。


シティーヌは確信的な要素があったように見えた。


子供の戯言だと切り捨てるのかそれとも信じてみてみるか……?


よし! 切り捨てよう!


やはりオレはこういう話には逃げ腰である。



——オレはライラと獣人たちから歓迎会を開いてもらうことになった。



「すまない。今はこれぐらいしか出せないんだ」



ライラが申し訳なさそうな顔をしながら言うのには理由があった。


それは今オレの目の前にある料理だ。


料理は別段悪くはないが強いて言うなら品数が少ないという点だな…。


まあ、運営が乏しい村ならこれぐらいが普通か……。



「さあ! 今夜はトビの歓迎を兼ねて祝杯だ! かんぱーい!」


「「「「「かんぱーい!」」」」



ライラが盛大に叫ぶと獣人たちも勢いよく声を上げて乾杯した。



「か、かんぱーい……」



オレもそれに釣られて乾杯をした。


それから村ではささやかながら歓迎と称しての宴が始まった。


獣人たちは酒が飲めるのが嬉しいのか宴はかなり盛り上がっていた。



「みんな、トビが来てくれたことを歓迎してるんだよ」


「そうかぁ? 完全に酒が飲めるから嬉しそうにしてると思うけど……」



オレが村の盛り上がりに若干引いた顔をしていたのを見てライラが悟って言ってきた。


あまりこういう場所が慣れてないからなのかもしれないが居心地が悪いわけではない。


ただ慣れていないのだ。



「旦那様! どうぞ!」


「ブッ! ゴホッ、ゴホッ! …お、おう」



酒を飲んでいるといきなり『旦那様』と呼ばれてむせてしまった。


横を見るとシティーヌが満面の笑みを浮かべて料理を運んできてくれた。


『その笑顔の裏には一体何が?』と思わせるような笑みだった。



…まだ諦めてないのか、この子は?



「こら、シティーヌ! 驚かせたらダメでしょ!」



その後ろをシティーヌのお姉さんが別の料理を運んでくる。



「どうぞ、こちらもお召し上がりください」


「ああ、どうも……」


「私はシャルルといいます。この子はシティーヌです。」


「トビだ。よろしく」



オレが挨拶を交わすとなぜかシャルルはどこか気まずそうな顔をしている。



「あの、昼は失礼な態度をとってしまいすいませんでした!」



そう言ってシャルルは頭を下げてきた。


オレは昼の件というと森で初めて会ったときのことを思い出した。



「ああ、あれは別にいいよ。もう過ぎたことだし…」


「ですが……」


「シャルル、もういいだろ。あまり気負いすぎるな」


「はい……。失礼します」



ライラに諭されてシャルルは立ち上がり会釈をしたあとシティーヌを連れて去っていった。



「すまない。シャルルはしっかりしてるがそのせいで一回のミスで自分を責める癖があって……」


「まあ、ミスは誰にでもあるからオレは責める気はないよ」


「そう言ってもらえるとありがたい……」



ライラはそう言ったがどこか浮かない顔をしていた。



「どうかしたのか?」


「いや、昔のことを思い出して……」



ライラの表情を見る限り、あまりいい話ではないな。


オレは一体過去に何があったのか聞くことにした。


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