獣人村の民
黒い魔物、サラマンダーが現れたことにより、オレは全く名前も知らないケモ耳少女とその姉が住んでる村を守るためにゴールドアーマーを装着して討伐開始を始めた。
しかしさすがサラマンダーというべきか、体に覆われている皮膚が強力すぎて倒すのも一苦労だ。
空中を駆け回りながらサラマンダーの皮膚を雷攻撃や炎攻撃を交互に撃ち込み続ける。
流石にここまでくると称賛したくなるほどの皮膚の硬さだ。
……こんなに硬いとは、知らなかった……。
改めて相手したことを後悔した。
「…やっぱり、皮膚硬ぇな」
流石に新種のサラマンダーではない限り、空中までは追ってこないようだ。
「このままじゃ、埒があかねぇ……」
このまま戦いが長引いていたらいつか被害も拡大する一方だ。
なんとかして終わらせないと……。
そう心の中で決心した瞬間、サラマンダーの様子が変わった。
どのように変わったかというとヤツはなぜかオレに対しての殺意がないというより、何か遠くを見ている感じだった。
そこがどこかはわからないが何か嫌な予感がしてきた。
するといきなり奴は地面に穴を掘り始めた。
…何をするつもりだ…?
サラマンダーが何をしてるのかわからずただ呆然と空中に浮いてるだけで予測が難しい。
いや、おおよその察しはつくがそれでも相手は魔物だ。
どんな動きをするかわからない。
そんなことを考えている間にサラマンダーは穴を掘り終えてその穴へと潜っていく。
オレはいつでも戦闘準備をしていたがなぜか奴は地面に潜り込んだあと姿を見せなくなった。
…どういうことだ?
襲ってこないということは逃げたのか……?
いや、そんなはずはない!
心の奥底で底知れない不安を覚えた。
「…サーチ!」
オレはアーマーの調査機能でサラマンダーを探す。
この調査機能は自分が戦う相手を記録して分析を行い、全てにおいての情報を集める。
つまり、逃げれることは不可能ということだ。
サーチでサラマンダーの生命反応を感知すると奴の動きを見える。
「なるほど……」
奴が襲ってこないのはどうやら地中の中にいたからだ。
だが別にじっとしているわけではなくてどこかに向かって真っ直ぐ前進していた。
まるで何かに導かれるように……。
「…どういうことだ? …サーチ!」
オレはその動きに疑問を持つとすぐさま奴がどこに向かっているのか目的地を調べる。
「嘘だろ……。まずい!」
奴が向かっている先を見た瞬間オレは一直線に飛行していく。
その場所は小さな村があり、このままでは村は全滅しかねない。
なぜ地面を掘り起こしている時点で阻止できなかったのか。
今思えばやつはオレとの戦闘中になぜか殺意がなくなり、別の方向を見ていたというのに……。
自分の詰めの甘さをひしひしと考えさせられる。
だが反省するなら後回しだ。
今は村の住人に被害が出ないように急がねば…!
オレはさらにスピードをあげてサラマンダーを追いかける。
——とある小さな村。
その村はとても穏やかで空気が和んでいるのが目に見えてわかる。
田舎といえばいいのだろうか。
その村に住んでいる住民は皆が頭に耳がはえてお尻には尻尾がある獣人たちだった。
服は綺麗とは言い難いがとても身なりが整っている。
そんな村に血相を変えて慌てて駆け込む二人のケモミミ少女たちがいた。
「みんな! 大変! 大変よ!」
突然慌てて入ってきて何事かと村の住民たちは不安になり、顔を強張らせる。
「一体何があったんだ! シャルル!」
色々な獣人たちがいる中でも一際身体が大きくイカつい男がさらに怖い顔をして強めの口調で二人の少女に問いかける。
この獣の強面男は二人の表情、荒い息遣いで只事ではないと
察知しているのだろう。
少女はゆっくりと息を整えながら事情を話す。
「……村の近くで、ま、魔物が……」
「なんだって!?」
少女の言葉で村の雰囲気が一気に重たくなった。
女獣人は怯え、子供は泣きだしてしまい、男たちにも恐怖の顔が伺える。
やはりどの種族にとっても魔物は恐ろしい存在なのだろう。
「い、今……人間の男が、戦って……」
「人間が!? そんなことありえない! …巫女様ではない限り……」
獣人の男は何にありえないと言ったのか。
その他の獣人たちも少女の言葉に疑念を感じているようだ。
「そんなことよりも巫女様にこの旨を伝えねば……!」
「きゃあああああ!!!」
男が今から伝えにいこうとした瞬間、一人の女性が悲鳴を上げた。
その声で誰もがその女性を見るとその表情はまるで悍ましいものを見ているかのように顔は強張り、目は見開き、身体は震えて硬直していた。
他の獣人たちもその方向に目を向けるとそこにいたのは舌なめずりをしながら涎をダラダラと滴らせながらたくさんの自分の獲物となるであろう獣人たちを見るギョロリと目を動かすサラマンダーがいた。
ここで村の獣人たちの恐怖心は最高潮に達した。
サラマンダーを見た獣人たちは大パニックを起こした。
悲鳴や叫び声に泣きじゃくる声などその恐怖は凄まじいことを物語っている。
サラマンダーは本能のままに獣人たちを襲おうとしていたがどうやら何かに塞がれて中々襲えないようだ。
「…よかった! まだ巫女様のチカラが効いている!」
サラマンダーがいくらあがいても襲えないわけだ。
村全体に何やらバリアみたいなものがあり、村の獣人たちは
何とか襲われずに済んでいる。
「大丈夫だ! 俺たちは巫女様のチカラがある限り襲われないんだ!」
誰かがそう言ってまだ大丈夫だと安心したのも束の間その言葉がフラグとなってしまう。
サラマンダーはとてつもない叫び声をあげるといきなりバリアに向かって火を吹き始めた。
するとバリアに少しだけヒビが入ってしまった。
その光景を見た獣人たちはまたもや恐怖の波に呑まれてしまう。
もう襲われないという束の間の油断が悲惨な結末を招いてしまうのだ。
だが今から逃げるとなるともう遅い……。
サラマンダーが火を吹き始めて数分も経たないうちにバリアの一部が破壊されてしまった。
「巫女様のチカラが壊されたぞ!!」
とうとうバリアが破壊され、サラマンダーが村を襲い始める。
村は今度こそ絶望な状況に追い込まれた。
獣人たちは逃げ惑い、大混乱していた。
サラマンダーの火で家を焼かれ、田畑は燃やされ、獣人たちの叫び声や泣き声で村は溢れ返っていた。
平和だった村から一変して悲劇的惨状へと変わり果ててしまった。
「シティーヌ! 早く、こっちよ!」
「お姉ちゃん! 待って!」
あの二人の獣人の少女たちも必死に逃げている。
「あっ!」
「…シティーヌ!」
一人の小さな獣人の少女がつまづき、転んでしまった。
もう一人の少女が助けにいこうとするも他の獣人たちに止められてしまう。
「離して! シティーヌが…!」
「…お姉ちゃん!」
だがそんなことをしている間にもサラマンダーは少女の背後へと迫っていた。
サラマンダーは大きな口を開けて少女を食べようとした。
「嫌だ! 嫌ッ! シティーヌ!」
まさに絶望的な瞬間だった。
小さな少女は何かを悟ったように目を強く閉じた。
「シティーヌ!!!!」
そう叫んだのを合図に一つの光が凄まじいスピードで迫ってきてサラマンダーの顔面に向かって真っ直ぐ突っ込んだ。
その場にいた獣人たちは呆気に取られていた。
サラマンダーに突っ込んだのは他の誰でもないゴールドアーマーのトビだった。




