婚約、願い
オレは今、セシティアという男爵令嬢に唐突の婚約の申し出をされた。
「私と婚約をしてくれませんか!」と、異世界人生でまさかの展開だった。
普通ならば取り乱してしまうだろうがオレはそんなこと気にしない!
なぜなら今期最高のモテ期到来だから!
「何をバカなことを言っておるのだ!」
舞い上がってたオレと違いユリアーナは凄まじい剣幕で少し強い口調でセシティアに言う。
「ま、まあまあ、彼女も何か事情があるかもしんないじゃん……」
オレは急いでユリアーナをなんとか宥める。
彼女は取り乱した態度に気づいて少し落ち着いてくれた。
「しかし、なんでオレなんかと婚約を……?」
まず気になる疑問はそれだ……。
男爵は貴族階級でも地位は低いとはいえ、れっきとした貴族の仲間だ。
その男爵令嬢、男爵の娘がこの平民で何の変哲もない武器屋の商人になぜ婚約を申し出たのか。
まあ、ゴールドアーマーという最強の武器はあるが、誰もその正体は知らないはず……。
オレのことを知っているのはハルさんとユリアーナさん、あとはエスカルテ村の恐怖の冒険者ギルドの受付のお姉さん、アイシャさんくらいだ。
だからこそ彼女、セシティアさんの意図が全くわからない。
そんな彼女の表情はなぜか重たく、唇を噛み締め、目は少し怯えているように見えた。
「実は………」
彼女は口を重たく開き、理由を話そうとする。
オレは息を呑み、緊張感が走る。
一体どんな発言が飛び出すのやら……。
「実は、願いが叶うからです!」
「はいはい、願い………願いって、なに?」
セシティアは真っ直ぐ見据えて嘘偽りのない顔でオレを見ていた。
そんな真面目な顔で言われてもこっちからすれば……。
「…ふざけてますか?」
「ち、違います! 私は本気なんです!」
やはり変なことは言ってないように見える。
だが、オレと婚約すれば何か願いが叶うのか。
いつの間にそんなご利益ついたんだ、オレ……。
「要するに婚約したら願いが叶うという迷信を信じてるということか?」
ユリアーナは少しツンとした表情と口調でセシティアに言う。
「違います、私はほんとうに…!」
セシティアはどうやら信念というか確信があるのか意見を曲げない様子。
「だが、そんな願いが叶うとかわからん妄想みたいな話をどう信じろというのだ」
「それは……」
セシティアはそう言われて自信がなくなったのか顔を俯いてしまった。
まあ、ユリアーナさんの言うことは間違ってない。
婚約すれば願いが叶うとかそんなおとぎ話があるわけない、ということは人による噂か……。
セシティアさんは一旦落ち着いてよく冷静になって考えてもらうことにした。
いきなりの急展開でオレも整理が追いつかないし、今日のところは帰ってもらった。
「しかし、一体なんだったんだ?」
頭をかきながらオレはセシティアさんのことを考える。
「さあな、私にもわからない。だが、別に嘘を言ってるわけでもなさそうだった…」
「確かに…」
あの様子だと完全に騙されているようにしか見えないけどな………。
だが嘘を言っているようにも見えない。
だったらほんとにそんな話があるのか…?
いや、でもなんでオレとなんだ?
男ならいくらでも貴族の中にいるだろうに……。
というかセシティアさんはオレのことを知っているのか?
「ダメだ……。考えるだけで頭痛い…」
「…少し、休んだらどうだ?」
「ああ、そうだな……」
「私もセシティアのことで少し調べてみよう。明日はちょうど学校に行くからな…」
「ああ、よろしく……、オレはちょっと店を閉めるわ…」
「…え? どうしてだ?」
「どうしてって、一旦家に帰って新しい武器を造らないといけないからな……」
「………そうか。いつ頃、開ける予定だ?」
「さあね……」
そう言って店の奥へと入っていく。
「……冷たいやつめ」
トビが奥に消えたあと、ユリアーナは少し不満そうに唇を尖らせていた。
——オレは店を閉めて今、夜空で飛行を満喫していた。ゴールドアーマーで……。
というのも、ユリアーナさんが込めてくれた魔力を使ってみるのも悪くない。
そして飛んで試していたらこれはすごい!
オレが使える技という能力は炎、雷、光だけしかなかったが、今度は風という文字が増えている。
風という能力を一覧で見たところ表示されてる技が結構あってすげぇ驚きだった。
さらに風だけでなく、炎や雷などの能力も増えていた。
能力は増えるわ、上がるわでユリアーナ様様だな!
そういやハルさんに魔力を込めてもらったときは炎は魔法石で少しだけだがオレの魔力でもなんとかできたがそれとは桁違いに威力や能力も爆発的に跳ね上がってた……。
雷の能力も然り……。
まあ、それよりももっとすごいのは炎の能力と風の能力が同時に使えるということだ。
例えば、今飛んでるこの飛行能力は炎だけで飛んでいるとかなりスピードは遅くてとても遠くの場所へ行くのに時間がかかるが、この風の能力があれば風力がさらにスピードを加速させてくれる。
それに風に関しては魔法石も使わずに能力が使えるからマジでありがたい!
精霊の生まれ変わり様さまだな!
「よっしゃ! 飛ばすぞ!」
オレはついつい調子に乗って風力でスピードを上げていく。
しかしやはりオレは調子に乗ると何かしらのハプニングに直面してしまう。
スピードを上げた途端に何かが対面してくるようにこっちに向かって
飛んでくる。
「うわっ!?」
オレはそれを避けるために迂回しようとしたがその急な迂回がまずかったのか姿勢のバランスを崩してそのまま空中から地面へと真っ逆さまに落ちていった。
「あああああああ!!!!!」
ドスンという音とともに地面に落下して煙が舞い上がる
オレはまたしても地面に落下した。
「…ああ、毎回同じ展開で嫌になってくるな」
全く知らない土地でオレは嫌気がさしていた—————。




