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男の娘令嬢は嫌いですか

 私は公爵家の長男としてこの家に生まれた。


私は生まれつき他の人たちには見えないモノが見えていた。それが精霊と呼ばれる存在であった。


だがそれだけではない、私は周りの貴族たちの息子と違って女の子が好きそうなものや女の子が着る綺麗なドレスが好きだった。


他のものには目もくれずにドレスを着飾る日々が好きだった。

だけど周りにとって私の存在は異色で変だった。


「お前、男のくせにそんなものが好きなのかよ。気持ち悪りぃ」


「……え? 何言ってるの、普通だよ」


貴族の男の子にそう言われて私は戸惑いを感じていた。


「全然普通じゃねぇし、男のくせに女の子のドレス着るとかおかしいんじゃねぇの?」


「この子ほんとうに男の子ですか? 名前とか女みたいだし、本当に気持ち悪いですわ」


男の子や女の子に言われたその言葉が子供ながらに心に重くのしかかった。

家に帰って私は泣いていた。


心をえぐるような辛辣な言葉に胸を引き裂かれるような思いだった。


けどそんな私をお母様はいつも優しくそっと包み込んでくれた。


「ユリア、そんなことを言う人なんて放っておけばいいのよ。ユリアのことを尊重してくれる人を慕いなさい」


優しく抱きしめて慰めてくれるお母様が大好きで尊敬していた。


お母様は私に色々な可愛い服を着せてくれた、おしゃれを楽しませてくれた。

いつまでもお母様と一緒に暮らしていたかった。


でもそんな幸せな時間は続かなかった。


私とお母様が馬車で王都に向かう途中で森の中で魔物に襲われた。


お母様は魔法で魔物を撃退しながらまだ小さな私を守ってくれていた。

だけど私が背後から魔物に襲われそうになってお母様は私を庇って殺された。


「お母様!」


「ユリア、どんな状況でも負けちゃダメよ……。あなたはあなたらしく生きなさい」


雨が降り、泥と血がついたドレスの悍ましい光景が私にトラウマを植え付けた。


お母様が亡くなり、お父様と生まれたばかりの妹の三人になってしまった。


私はお母様と交わした約束を守るために自分らしく強くあろうと決めた。

誰に何を言われようとも……。


まだ小さな妹のためにもお母様のように優しい存在が必要だった。


私はまだ十歳にも満たない歳で決心した。


だけどそれと同時に私は笑わなくなってしまった。

今までどうやって笑ってたのかすら覚えてない。


月日は流れ、周りの視線は相変わらず冷たかった。

魔法学校に入学してもクラスには馴染めずいつも浮いた存在になっていた。


考えてみればわかることだ。常に無表情で男なのに女の子の格好をしているから。


「ねぇ、みてユリアーナ様よ」


「ほんと飽きないよね、頑固だよね」


周りの辛辣な言葉にも慣れてしまった。

どうせ周りとわかり合えないのならいっそ死んでしまおうか。


そんな時、彼に出会った。


暗い誰もいない荒野で私がいつものように精霊と対話をしてると音がした。


「誰なの! 出てきなさい!」


「ああ、その、盗み見るつもりはなかったんだ……」


彼は両手を上げながら申し訳なさそうな顔をしながら立っていた。

見られてしまった。タイミングが悪すぎるなこの男は……。


私の心の中は完全に焦っていた。

彼はそのまま帰ろうとしたので引き止めて無理だと思っても口止めを交渉してみると


「いや、オレに言う相手なんていないんで心配しなくていいですよ!」


平然と笑顔でいうのを見て拍子抜けするほど私は謎の安心感を覚えた。

そのあと互いに名を乗ると彼と少しだけ話をした。


精霊と対話していた、そのことを話すと彼は驚いていた。

だがそれと同時に彼は私のことを自分にしかない能力と言ってくれた。


その言葉は私の心を少し軽くしてくれた。


これが彼、トビと名乗る男の人との出会いだった。


次に彼を見かけたのは魔法学校にいるときに王都で魔物が現れた時、校長室の窓から飛び降りていく時だった。


その時に彼の体に黄金の鎧が装着していき、空中へと飛んでいく姿を教室の窓から眺めていた。


私は彼の正体に気づいてしまった。


彼が国王陛下やお父様が警戒しているあの黄金の鎧があの人だったのか。


だからこそ私はなぜか徳をした気分だった。

そして彼はまた私を助けてくれた。


連れ去られたあの夜、私はおそらく助からないと思っていた。


薄れゆく意識の中、突如現れた赤い眼をした何者かが目の前に立っていた。

そして私は気を失った。

目を開けると私は自分の部屋のベッドで寝ていた。


メイドに事情を聞くと夜に突然、屋敷のベルが鳴り、外に出てみると私が毛布にくるまって眠っていたらしい。


それを聞いて私は誰が助けてくれたのかすぐにわかった。

絶対にあの人だ、あの人に違いない私はそう確信していた。

なんとかしてお礼をしたいと思った。

居ても立ってもいられずに私はお父様からトビさんが開いている店へとやってきた。


そして今私はトビさんに会えた。


「あの黄金の鎧はあなたなんでしょ? どうなんですか!」


「いや、どうって言われてもなぁ……」


彼ははぐらかそうとしているけど私は絶対に逃さないよ!

私は彼の服の裾を掴み、真剣な眼差しを向ける。


「その、知ってるのは、ユリアーナさんだけですか?」


「…えっ? あ、うん、そうね」


彼はまるで警戒するように聞いてくる。


…私はもしかして正体を知っちゃダメだったのかな……!?


ここまできてなんだか怖くなってきた。


「そうですか! よかったぁ!」


「え……?」


彼はホッとして安心したように笑顔で言ってくる。


私は少しだけ胸の中に現れた危機感が一瞬でなくなったような気がした。


「いや、なんかバレるって気持ちいもんですね!」


「はい……?」


彼はそう言ってあっさりと認めたのだ。

まるで隠す気など最初からなかったように。


「あ、そうだ。なんだったら見ます? オレの最高傑作のゴールドアーマー」


「え? 見てもいいの?」


「はい、って言ってもここには置いてないですけど……、またの機会ということで良いですか?」


「あ、そうなんだ……」


少しがっかりした気分だ。


「ねぇ、トビさん。一つ聞いても良いかしら?」


「はい? なんでしょうか?」


「私と、ユリアーナ・アルフレットと付き合ってほしいの!」


「………………はい?」




唐突の言葉に彼は固まっていた——

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