衝撃的なこと
———オレはとある美少年を助けていた。
その少年はなぜかこんな暗い路地裏でゴミの男三人組に絡まれていた。
「ていうか、こんなとこで何してたんだ?」
「それが恥ずかしながら道に迷ってしまいまして……」
少年は顔を赤く染めて俯いた。
「どこか遠くから来たのか?」
「いいえ、この街に住んでますよ! ただメイドとはぐれてしまって……」
この街に住んでるならなんで道に迷うのだろうかと思ったがその後の言葉でメイドと話してたので貴族の息子かと心の中で愚痴っていた。
「ならそのメイドも今は探してるだろうから、冒険者ギルドまで行くか?」
「ほんとですか!?」
「ああ、さっきの奴らみたいにまた絡まれたら面倒だし」
「ありがとうございます!」
少年は嬉しいのか笑顔でお礼をしてきた。
うぅ、この笑顔、虜になりそうだな……。
オレはなんとか理性を保ちつつ少年を自宅まで送ることにした。
少年を冒険者ギルドまで連れて行くとメイドらしき人が慌てて近くに寄ってきた。
「ユリカ様! ご無事ですか!?」
「リリー!」
二人は感動の再会という感じで抱き合っていた。
オレは横で見ながら少しだけ引いていた。
「リリー、あのお兄さんが悪い人たちから助けてくれたんだよ!」
「本当ですか!? それはなんとお礼を申し上げれば良いか……」
「いえ、オレはこれで失礼しますね」
用は終わったのでオレが帰ろうとするとメイドのリリーが引き止めてきた。
「何かお礼をしたいのでどうか屋敷に来ていただけませんか?」
「お礼ですか……?」
「はい! 旦那様も大変喜ばれると思います!」
オレは特に断る理由もないのでお邪魔することにした。
どうせ店にいたって売れないし……。
冒険者ギルドから馬車に乗り込み屋敷へと向かっていく。
その間もユリカはメイドのリリーに助けてくれたことをウキウキと話していた。
オレはそれを見ていい気分に浸っていた。
そして馬車が屋敷に着いたので降りる。
「うわー、でっけぇ……」
「どうぞお入りください」
リリーが屋敷の扉を開き中に招いてくれる。
屋敷の中に入るとまさに貴族の屋敷と断定せざるを得ないほど煌びやかで豪華な内装でオレは心臓が口から飛び出そうなほど度肝抜かれてた。
「お父様! ただいま戻られました」
ユリカが大声でそう言うと階段を降りてくる男の姿があった。
「ユリカ、帰ってたのか!?」
お父様と呼ばれる男はものすごく安心したような表情でユリカを出迎えた。
「心配したぞ! 大丈夫だったか?」
「はい、お父様! こちらのお兄さんが助けてくれました!」
ユリカがオレを紹介してくれたのでオレは会釈をした。
「おお、そうであったか! 娘を助けてくれてありがとう!」
「いえ、娘さんがご無事で————、今なんと?」
このお父様は今言った言葉にオレは耳を疑った。
「娘さんって、ユリカは、女の子、ですか?」
「ああ、見た目は男の子だがれっきとした女の子だ! 可愛いだろ?」
「もう、やめてください。お父様!」
ユリカとお父様は戯れあっている傍らオレは
心の片隅でユリカが女の子と知って安心していた。
…なんか、よかった。
「そうだ! 紹介が遅れたな、私はユリウス・アルフレット、アルフレット公爵でこのガルムラ街の領主だ!」
「あ、初めまして。トビと………」
えっ!? アルフレット公爵!? ……てことは…………。
オレはチラリと美少年ではなく美少女ユリカ
を改めて見る。
「どうかしたのか?」
「ああ、いえ、なんでも。あ、自分はトビと申します!」
アルフレットという名前にどこかで見た顔、そして導かれる答えは、ユリカはユリアーナさんの妹と!?
そしてそのユリカの父が、アルフレット公爵……。
なんというか偶然にもオレは考えた計画とは全く違うシナリオだがアルフレット公爵に近づくことができた。
互いに挨拶を済ませたらそのままアルフレット公爵に屋敷のとある部屋に行き、娘を助けてくれたお礼のことで話したいと。
「娘を助けてくれたこと改めて感謝する。ありがとう」
「……ああ、いえ」
自分の武器が売れなくて挙句の果てに鬱憤を晴らすためにやっただけですとは中々言えない。
まあ、ただこれはいい機会だ!
「それで礼をしなければならないと思ってるのだが……」
「あ! でしたら一ついいですか?」
「ああ、いいとも……」
オレが食い気味で言ったのか公爵は若干驚いていた。
「オレの武器を取り扱ってはくれませんか?」
「トビ殿の武器を…?」
「はい!」
これを機に自分の武器をアルフレット公爵にアピールすることができるんだ!
絶対に逃してなるものか!
「オレの武器を少なくてもいいのでお試しにお使いになられてはもらえますか?」
「武器か………」
アルフレットはかなり難しい顔をしている。
やはりもう間に合っているから必要ないということか……。
オレは心のどこかで諦めモードに入りそうになっていた。
「いいだろう。ぜひ君の武器を試させてくれ!」
難しい顔をしていたアルフレットが顔を上げて快く承諾してくれた。
「ホントですか!?」
「ああ、娘の恩人だ。断るわけにはいかない」
オレは心底その言葉に驚きと嬉しさで舞い上がりそうになったが冷静を保ち心を落ち着ける。
「承諾していただきありがとうございます」
オレは姿勢を正してアルフレットに頭を下げてお礼をした。
「いやいや構わんよ。では後日、王都に来てくれ。 ぜひ陛下にもご覧いただきたいからな!」
「はい! わかりま—————」
え? 今なんて?
オレはアルフレットの言葉に動きも固まり言葉も止まり、思考を一時停止した。
「すいません。今なんと?」
「王都だよ。知らないか?」
「いや、知ってます。その後、陛下って言いませんでした?」
「ああ、ぜひとも陛下もご一緒に観覧してもらわねば!」
マジか………!?
「旦那様、確か式典があるのでは……」
メイドのリリーが耳元で告げる。
「あ、それもあったな! ちょうどよい機会だ!」
「いや、ちょっと待っ………」
「それでは明日は是非王都まで来たまえ!」
「あ、はい………」
アルフレット公爵に半ば強引に王都まで来るように言われて嫌とはさすがに言えなかった。
オレの武器を試してみてもらうためには仕方ないか……。
——翌日。
昨日の夜は早めに眠りについたのか朝早く目が覚めた。
王都へ向かう準備を整えてオレは店を出ていく。
今回の移動は普通に馬車に行くことにした。
武器を運ぶのにはこれが最適だ。
保管庫で移動という手もあるが手間がかかるので馬車のほうがいい。
それならすんなり通してくれるし……。
馬車で景色を眺めて揺れているとあっという間に王都に着いた。
馬車は王都の中をしばらく走っているとやがて城へ入って行った。
「うわ!? これが城か! でけぇ!」
やはりこういうのを見ると男心がくすぐられるな。
城の門を抜けて馬車はゆっくりと止まった。
「着いたか……」
オレは馬車から颯爽と降りると城の大きな扉の前に豪華な衣装を着て金の冠を被った金髪の男とその隣りに妻であろう超絶美人な女性にアルフレッド公爵が立っていた。
「お待ちしてましたよ、トビ殿!」
「いえ、こちらこそお待たせしてすいません」
「トビ殿、こちらは我がイグリニア王国の国王、アールグラント陛下だ」
「アールグラントだ。よろしく!」
「初めまして、トビと申します。ガルムラ街で武器屋を営んでおります」
お互いに握手を交わして挨拶をする。
その後案内されて城の長い廊下をひたすら歩いていた。
しばらく歩き続けるとどこかの部屋に辿り着いた。
「ではトビ殿、こちらへ!」
扉を開くとその部屋の中には金髪の青年と少女とその向かいにはユリカとユリアーナさんが対面するように立っていた。
紆余曲折しながらもやっと辿り着いたオレの真の目的の男の娘、ユリアーナさん。
オレは心の中で密かに覚悟を決めた。




