早くも再会
——ガルムラ街にて。
オレがアルフレット公爵家の領地、ガルムラで武器店舗を開いて早二週間。
商人としての知識は今からつけていくとして、まずは知ってもらうことが大切。
店舗の内装は完璧、武器の種類も豊富だ。
そして人もこんなに大勢いる。
だからすぐに売れる!
と、簡単に思ってた自分が甘かった…。
「…全然、客来ねぇ……」
オレは店の地下の作業場でくつろぎながら愚痴っている。
錬成で造ったモニターで店の中を写しているが一向に誰も入ってくる気配がない。
今もこうやって待っていても全くうんともすんとも言わない。
まあ、街を見ていればここはそんなに武器の流通は激しくないし、そもそも冒険者が少ないように感じるのは気のせいか……?
「ハルさんも用があるとかなんとかで今はいねぇし……」
オレは嫌気がさしてきて店を閉めようと思い外を出ると一つの馬車が目の前を通り過ぎようとしていく。
一瞬だけ中の様子が見えたので何気なく見ると見たことのある顔が窓越しで見ていた。
「あ……」
オレは無意識に声を出していた。
その馬車の中にいたのは今回のことで探していたユリアーナさんだった。
まさかこんな早く再会できるとは……!
一夜限りとはいえ脳裏に蘇る記憶に綺麗な顔立ちで事故とはいえ蘇る右手の触感……、ヤバい!
だが一瞬だけしか分からなかったが表情が暗いような気がした。
あの時もあまり笑わない印象が強かったな……。
まあ、いいや! 貴族の娘だ。
何か家の都合で笑わないようにしてるとかそんな感じだろう。
オレはそう思って店を勝手に閉めた。
しかし一回気になると確かめずにはいられなくなるこの性格だ。
ストーカーと呼ばれる覚悟でついて行ってみるか!
———ということで。
現在ストーカー中です。
馬車は今山道を走っているところだ。
オレは今空中武装保管庫に乗って馬車の真上を同時進行中だ。
そして馬車の天井に盗聴器を仕掛けて馬車の中を音声で聞いてみるが聞こえてくるのはただの雑音だけ……、これじゃ全く使う意味なかったな。
一体どこに向かってるのか?
オレは進行予測をしてみる。
今の馬車がいる地点からこの道を走っていくと辿り着く場所は————
王都か! でもなぜ王都に?
そう思っていても聞けないからどうにもできない。
馬車はオレの意思とは関係なく先に進んでいく。
やがて山を越えて見えてきたのは大きな城が中心に構えるイグリニア王国の王都。
馬車は門を抜けて王都の中へと入っていく。
オレは保管庫のまま入るわけにはいかないので一旦離れた場所で降りて王都の門まで歩いていく。
通貨を渡してオレも王都へと入る。
ちなみにオレは人に会うときは冒険者らしく剣を腰に差すようにしてる。
そうでないと疑われそうで怖いからだ。
ま、剣を使うことはほぼないけどな。
オレは馬車につけた盗聴器を聞きながら走っていた。
馬車はまだ走っているようだ。
盗聴器の位置で馬車が走っているところを確認する。
しばらくすると周りの騒音が激しくなってきた。
どうやら人が多い場所で馬車は止まったようだ。
馬車の位置を確認してみるとどうも見たことない場所のようだった。
人が多いというのは当たっていたがその人がほとんど若い男女で全員が同じ格好をしているように見えた。
しかも十代だな……。
十代で同じ格好、そして男女混合で集まる場所か……。
もしかして学校だったりして? いや、まさかそんなことあるわけない!
オレは心の奥底でそう思うようにした、いやそう思いたかった。
なぜならあの夜触ってしまった相手が年下だとあわや犯罪になりかねない。
そんな危機感に一人怯えていると馬車が走り出した音がした。
…ヤバい!
なぜならあの盗聴器はあれ一個しかないため回しないと面倒くさいことになってしまう。
オレは全力で王都の中を走り抜けるのであった。
——盗聴器を回収し終えてオレはユリアーナさんが降りた場所であろうところで膝に手をついて肩で息をしながら立っていた。
そして顔を上げて目の前の光景を見て固まった。
視界を覆い尽くすほどの大きな建物、その建物はまさに高級なデザインがしており、綺麗に手入れされているようだ。
「なんだ、これ…?」
呆然と立ち尽くすしかなかった。
これは明らかに何かの施設であることに間違いはないが、もしかして……。
オレはあまり思いたくないがもしこれがオレの想像するものだとしたらユリアーナさんは
そういうことになってしまう。
だが肝心の人がいない、門は閉まってるし違ったかな……。
目を覆いたくなる真実かもしれない…。
オレは変な危機感が体を襲って立ち尽くしていると————
「トビくん!」
ふいに名前を呼ばれたのでその声に目を向けるとそこにいたのはハルさんだった。
「あれ? ハルさん?」
ハルさんはオレがいることにびっくりした様子で慌てていた。
しかし一番気になるのはハルさんの格好だ。
黒いローブを着て何か難しそうな本を数冊胸に抱えており、頭の上には黒い帽子かぶっている。…しかもメガネ姿が超絶可愛い!
「…そんなところで何してるの!?」
「ハルさんこそ何してるんですか?」
「ボ…ボクは…その……」
ハルさんは恥ずかしそうな顔をして俯きモジモジとしている。
「その…ボクはね……先生してるんだ」
「先生……?」
「うん…。魔法学校の、ね……」
「マホウガッコウ…?」
魔法学校って、…あの魔法学校なのか!?
ハリーなんちゃらという映画に出てくるあれか!
少しだけ覗いてみたいと好奇心が湧き出てきた。
「ハルさん、少しだけ中に入れてもらえませんか?」
「えっ!? そ、それは……」
うーん、やはり難しいか……。
オレが少し考え込んでいるとハルさんが何かを思い出したかのように声を上げた。
「あ、そうだ! ちょっと待ててね!」
そう言って学校の建物の奥の方へと走って行った。
何かいい案でも浮かんだのか……?
それから待つこと数分。
「君がハルのお友達かい……?」
「あ、はい、そう………」
学校の建物からそう言われて顔を上げて答えようとしてオレは驚いた。
なぜ驚いたのか、それはその人の顔に見覚えがあったからだ。
それはオレがまだ異世界に来て間もないころエスカルテ村の道具屋でバイトをしてたころにその時すでにオレはハルさんに一目惚れをして恋をしていた。
確かオレが一人で道具屋で店番してた時にハルさんと一緒に来ていた……。
「お姉さん!」
オレは無意識に指を差してそう叫んでいた。
するとその姉さんは首を傾げてこう言った。
「あれ? どこかで会ったっけ?」
まあ、そうだな……。
会ったのはほんの数分だけだし、そこから全然会ってないからな、無理もない。
「……いえ、失礼しました。初めまして、トビと申します」
「これはご丁寧に、ならば私も。私はハリエット・グランテ。この王都魔法学校の校長であり、ハルの姉だ。よろしく頼む!」
ハリエットさんはニコっと微笑みながら右手を差し出してきた。
オレもそれにならうように右手をだしてお互いに握手を交わした。




