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公爵令嬢?

オレは気配を消したつもりだったが、うまく消せなかったみたいだ。


目に見えない何かと話していた女性に気づかれてしまった。


「誰なの!? 出てきなさい!」


…ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい、マジヤバい!


オレは気づかれたことによってバクバクと心臓が破裂しそうなほど固まっていた。

気迫に満ちた声色がまた緊張感を漂わせる。


「……わ、悪りぃ。盗み見るつもりはなかったんだ」


オレは両腕を頭の上に上げて降参する、戦う意思がないことをわかってもらうために姿をその女性の前に出ていった。


「そう、……こちらこそごめんなさい」


その女性は少し悪いと思ったのか謝っていたがまだオレのことを敵意のこもった眼差しで睨みつけている。


まあ仕方ないよな。

こんな夜の荒野に男一人で装備もない完全に怪しい人物に思われてるだろうな。


オレと女性の間になんとも気まずい空気が流れていた。


なんて話せばいいのか、さっぱりわからない。


「じゃあ、すいません。オレはこれで……」


「待って!」


オレはこれ以上いるのが耐えられなくなってきたので帰ろうしたが向こうから引き止めてきた。


「な、なにか………?」


オレは緊張で顔もだいぶ引き攣りながら返事をした。


「さっきのことは誰にも言わないで欲しいの!」


「いや、オレに言う相手なんていないんで心配しなくていいですよ!」


オレは自分で言いながら少し心が傷つく。


「…そう、なんだ」


「まあ、だからあんま気にしないで……」


「あの! あなたは誰ですか?」


そう言ってさっさと立ち去ろうとすると、今度は名前を聞かれた。


「ああ、オレはトビと言います……」


「そうか、トビというのか……。私も名乗っておこう」


なんでオレ平然と名乗っているのだろう。

オレが名前を言うと向こうも名乗ろうと一歩踏み出し寄ってくる。


月の光がちょうど当たる位置に立ったときオレはその女性の姿を目にすることになる。

その姿を見たオレは固まってしまった。


「私はユリアーナ・アルフレットと申します。

アルフレット公爵家の娘です」


そう名乗った彼女にオレは見惚れていた。

素直に言うとハルさんに負けず劣らず超絶可愛い。


視る者を惹きつける長くしなやかに伸びた白い髪、綺麗に整った顔、服で隠れているがおそらくは華奢な体でスカートから見える白いむっちりとした太もも、そして吸い込まれるような淡い紫色の瞳の美少女が目の前に立っている。


「お、おい。何か言ったら、どうなんだ?」


そして話すと低くしっとりと優しい声、男勝りな話し方、完璧だ!


「おい! いいかげん反応しろよ!」


「…あ、ああ。その、なんか」


ヤバい! 見惚れてたなんて言えないし、目を見れない。

どうしたらいいんだ! なんて会話すればいいんだ。

今度は別の意味で心臓が破裂しそうだ。


「それよりも、お前は私が怖くないのか?」


ユリアーナはしどろもどろのトビを見てため息をついて先ほどのことについて話す。


「…えっ? な、何が?」


「なっ!? はぁ、お前と話してるとなんかペースを狂わされるな……」


ユリアーナはまたため息をつき、少し頭を抱えてしまっている。

トビみたいな男と話すのは初めてなのだろうか。


「なんか、ごめん……」


「いや、別に構わない。 その、私が一人で話してるのを見て怖くないかと聞いてのだ」


ユリアーナは下を俯き、どこか身構えていて表情はとても険しかった。

オレはそう聞かれても別になんともと思ったがそれでは少し嘘っぽいかと思い、本音をそのまま言ってみることにした。


「まあ。最初は怖かったかな……」


「……そうか、やっぱりそうなんだな」


オレがそう言ったらユリアーナは言わなくてもわかってたよと言うような悲しい表情をして俯いてしまった。

だがその後の言葉がオレの本音だ。


「けど、別にそれは個人の事情だから特にオレがどうこう言っていいものではないだろ。

それよりも一体何と話してたのかが気になってきた」


オレがそう言うとユリアーナは驚いた表情をした。


あれ、……何か変なことを言ったかな。

オレは今更ながら自分の言った言葉が変だと思い始めてたがユリアーナはポツポツと話し始めた。



「実は、精霊と話してたのだ………」


「精霊………?」


「ああ、私は生まれつき他人には見えないものが見えていたんだ。それが精霊。…けどそれは私だけしか見えていなくて周りからはとても気味悪がられてたんだ」


ユリアーナはそう言いながら自分のこの体質が嫌になるほど憎いのかわからないが思いつめた表情をしている。


「…だからいつもこうやって、誰にも見られないように精霊たちと会話をしてるんだ」


「……そうなのか」


「変だろ……」


ユリアーナはそう言ってクスっと笑ってオレをみる。

その表情は哀れだろと言ってるように思えた。

ここでイケメンは彼女に同情して何か気のきく言葉か何かを伝えたらいいのかもしれないがオレにそんなことはできない。

それにオレはそんなこと別に気にしちゃいない。


「ふーん、……あ、そう」


と、いかにも興味ないという感じになってしまうのだ。


「……それだけか?」


ユリアーナも当然このように反応薄いなこいつという表情になっている。


「はい、別にどうも思わない。逆にオレはアルフレットさんがすげぇって思うかな」


「…私が、すごい?」


「ええ。その精霊とやらと話せるのはアルフレットさんしかできないことですし、それは自分にしかない能力ですから、ちょっとだけ徳をしたと思えばいいんですよ」


「……自分にしかない能力」


ユリアーナは小さく呟き、笑みをこぼした。


「まあ、嫌なら不要な付属品って思えばいいですし。オレなんて生まれた時にすごい能力をもらえたらどれだけ嬉しかったか」


オレは自分の率直な気持ちをユリアーナさんに言ってみた。

ユリアーナさんに同情するだけなら簡単だが、その能力は時に自分を悩ませる種になる。

オレはそんな経験なかったから悩む必要がなかったな……。

他人は見えないものが見える、現実世界で言うと幽霊みたいなものか。


「…そうか。…そう言ってくれたのはお前で二人目だな」


「え!? 他にもいたんですか?」


咄嗟に驚いてしまった。

オレはカッコよく決めたと思ったがどうやら先に言ってしまったやつがいるらしい。

なんか真似したみたいで嫌だな……。


「…私の母だ。…もう数年前に亡くなったがな」


おっと、なんか重い空気になったな……。


「…そうですか。それはお気の毒に……」


どう言っていいのかわからないのでお決まりのセリフを言ってみる。


「…私の母も、私を特別だと言ってくれた。とても優しかった……」


ユリアーナさんは優しく微笑みながら囁くように言っているの姿が月の光に照らされて神秘的で綺麗に見えてしまい不覚にもオレはときめいてしまった。

母親のことについてはどう答えようか迷っていたが、ユリアーナさんは何か思い出したように振り向いて言う。


「そうだ! もう帰らないと、それじゃまた会おう」


「ああ、はい、またどこかで……」


ユリアーナさんはそう言って帰ろうとすると何かに躓いて転びそうになった。


「あ!」


「危ない!」


オレはユリアーナさんを咄嗟に自分の胸の中に抱えるように支える。

…が、咄嗟で仕方なかったのだがオレは自分の右手にふとある感触を覚える。

ゆっくりと視線を自分の右手に向けるとなんとあろうことかユリアーナさんの股の部分を触っていたのだ。


そしてオレは疑った。


オレの右手にあたる柔らかく膨らみのある感触、これは?

ふと視線を感じたので顔を上げるとユリアーナさんが顔を真っ赤にしてものすごい形相で睨んでいた。



「いや、これは、わざとじゃ……」


「…とりあえず手を、退けてくれないか」


「は、はい!」


完全に微妙な空気がオレたちの間に漂っていた。



これはどうしたらいいんだ……?

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