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トビの失恋

—オレは今、目の前に起きていることに

驚きを隠せない。


なぜあの美少女、ハルさんがオレに何の用だ?


…わからん!


「あの、今大丈夫ですか?」


「…あ、はい、大丈夫ですよ!」


つい大声で言ってしまった。周りの冒険者がこっちを見てる。やばい…。


「あ、立ち話もなんですから座って話しましょう!」


「あ、ありがとうございます…」


ハルさんは微笑んで遠慮がちに向かいの席に座った。


…やべぇ、すげぇ緊張する。…これ、やっべぇ、マジやっべぇ…。


「……あの、道具屋さん」


「…あ、はい。何でしょう?」


オレは一人心の中で緊張と戦っているとハルさんが声をかけてきた。


ハルさんは透明な白い肌の顔を真っ赤にしながらオレを見る。


…え、これは何だ?、…なんなんだ?


「実は、お願いがあります!」


「はい、オレにできることなら……」


「いえ、道具屋さんにしか頼めないことです!」


オレの心臓はバクバクと音が鳴っている。


「…ボクと、その…」


ハルさん、オレはいつでも準備できてますよ!さあ、ドンと来い!


「直してください!」


「………は?」


「…あ、いや、えっと、その」


ハルさんはあたふたしながらも落ち着いて話し出す。


「実はボク、こう見えて冒険者なんです」


「へぇ、そうなんですか…」


…知らなかった、ハルさん冒険者をやっていたんだ。てか、ハルさんボクっ娘なんだ。

…可愛いなぁ。


「それで冒険者をしてると装備が古くなってきていつも交換してるんです。けど、道具屋さんは装備を直せると聞きましたので、ご相談に参りました」


…ああ、そういうことか…。


「いいですよ、オレでよろしければ直させてください」


「…ほんと!?やった!!」


オレがそう言うとハルさんは大きな目をさらに大きくして嬉しそうな顔をして喜んでいる。


「ぜひ、明日店のほうにいらしてください。

明日は一日いますから」


「わかりました!ありがとうございます!」


ハルさんは椅子から立ち上がり、ペコりと頭を下げた。


「それでは、明日伺います!よろしくお願いします!」


ハルさんはオレに屈託のない笑顔を向けて別れた。


ハルさんと別れた後、オレは放心状態になった。そして冷静になってからニヤニヤが止まらない。

明日はハルさんがオレを頼って店にくる。

絶対に失敗はできない。オレは気合いを入れて早く寝ることにした。



  —翌日、道具屋にて—


オレは朝からドキドキとニヤニヤが止まらない。今日は待ちに待ったハルさんが来る。


オレの準備は完璧だ。修理の道具は揃えた。

あとはハルさんが持ってくる装備がどれくらいのものかによる、かなり使い古しているらしいからどこか不具合があるのだろうか。


ボコボコにへこんだものか、それか穴が空いていたりするのか、まあそういう場合はオレの錬成の術で直すのは容易なことだ。


そうこう考えていると、店の扉が開いた。


……来た!!


「いらっしゃいませ!」


オレは元気よく挨拶して扉の前に行くと、ハルさんが笑顔で立っていた。


「こんにちは!お兄さん!」


だがオレはさらにもっと驚かされた。いや、驚くのも無理はない。

ハルさんの後ろに見たことないイケメンの男が立っていた。


…あぁん?誰だ、こいつ?


と思ったがオレは笑顔を崩さないようにする。

今はとりあえずハルさんの装備を直すほうが先だ。




「あ、装備のほうを見せてもらえますか?」


「はい、どうぞ。こちらです」


オレはハルさんから装備を受け取り、カウンターへと行く、装備を拡大鏡でくまなく見てみる。


装備は非常に綺麗に磨かれている。多少汚れているが、大丈夫だ。

あとは凹凸の部分が少し見えるな、それとオレの予測は当たったようだ。

穴が少しだが空いているなぁ…。


「どうですか?直りそうですか?」


ハルさんが不安な表情で声をかけてくる。

オレは顔を上げて微笑む。


「大丈夫です。直せますよ」


「本当ですか!よかったぁ〜」


ハルさんは嬉しそうに喜んだあと、安堵した表情をした。

すごく表情がころころと変わってくハルさんはとても可愛いかった。


「これでしたら問題なく、いけますね」


装備のほうはなんとかなりそうだが、それ以上にオレ的に問題があるのはこの男だ。


さっきからハルさんと親しげに話してるのを見てオレは苛立ちを覚える。


ハルさんとたまに目を合わせて笑いかけるこのイケメンに、だがハルさんは可愛いから男の一人や二人はいるんだろうなぁ、だが諦めるにはまだまだ早い!


オレはとある合法的な手段を用いてさりげなく聞いてみる。


「よかったら、彼氏さんの装備もご一緒に直しますよ!」


オレは皮肉のこもった言葉と笑みで話しかける。


「……いや、彼氏なんて…」


…は?どういう反応だ、これは?

…そういうことなのか…。


そのイケメンとハルさんはお互いに顔を見合わせて顔を赤らめている。

オレはその光景をみて、自分の中の恋心がひしひしと打ち砕かれていくような気がした。


「それでは、修理が終わりましたらご連絡いたしますので、こちらにご記入お願いします」


オレはこれ以上見るのが怖くなっていた。

この男とハルさんが付き合っているかはわからないがその先を知るのが嫌になった。

ハルさんの生き生きとしたその表情を見ると

心が傷む。いや、わかってたんだ。オレとハルさんの関係はだだの道具屋としか見てないことを。


オレはあんまりハルさんの顔を見れなくなっていた。


「はい、書けました!」


満面な笑みを向けるハルさん、オレはその笑顔が今はただの知り合いに向ける顔だと思った。


「では、お預かりいたします」


「はい、よろしくお願いします!」


ハルさんは頭をペコりと下げて店を出る。

あの男と笑顔で話しながら、オレは異世界で

失恋した。


そのあとのオレはただ作業をこなしていた。

装備を直して少し綺麗にして、穴が空いたところは錬成で穴を塞いだ。

やってる最中も頭の中にハルさんと男の映像が出てくる。


……やばいな、これはやばい。今すぐこの仕事を終わらせて一人で住める家を探そう。

もうこの村に住むの嫌になってきたなぁ……。


装備を直すのに日にちはかからなかった。

ほんの三日程度、それが終わった後オレは店主にやめることを伝えた。


店主の人は引き止めてくれたけど、オレはやめるの一点張りだ。

もうハルさんとは会いたくない。会ったとしてもあのトキメキはないだろう。


店主さんは残念そうな顔をしていたが許してくれた。


オレは謝罪と感謝を述べて店を去った。


それからオレは村から離れた山へと行き、

そこに自分の家を建てた。

誰にも見られず、誰にも知られずに自分のやりたいことができる。


オレは満喫していた。これがスローライフかと毎日が楽しくなった。


たまに山にある薬草をギルドに持って行ったりしていたからそれなりの金にはなる。


その金でオレはある計画を立てていた。


それは家に巨大な地下を造ること、そしてオレだけが使える武器を造る。


「まさにここがオレの帝国だ!」


これがオレの第二の人生の始まりだ。

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