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最高の能力

——タキア村総出で魔物と攻防戦をする中、仲間の一人が肩に傷を負ってしまった。

タイガは治療をどうにかして行おうとするが、他の仲間も手が空いてない状態だった。

その時ユウナとカイトが走ってきた。


タイガはなぜ来たのかと疑問に思ったがユウナは仲間の傷を治療してくれた。

だが、その治療の仕方にタイガは驚いた。

ユウナの手から謎の光が現れ、怪我したところの傷口がみるみるうちに塞がっていく。


どういうことかと聞くとユウナは申し訳なさそうな顔つきになり、この戦闘は自分のせいだと言い出した。

さらに問いかけるとユウナは子供の頃から魔法が使えるとのことだ。


だが、それよりもタイガはあることが気になっていた。


「ユウナ、魔物に襲われるのは自分が原因ってどういうことだ?」


ユウナは少し目を伏せて語り出した。


「私には人より魔力の量が桁違いに多いみたいです。そのためその魔力のせいで魔物によく襲われて、魔王軍との戦いも私の魔力のせいで、だから私も戦いたいんです! 村のみんなと一緒に! 行くあてもなかった私に優しくしてくれたみんなと!」


ユウナは普段の優しくおっとりした声から想像もつかないくらいにはち切れそうで震える声を大きく力強く自分の気持ちをタイガにぶつける。


タイガはもちろん迷ってしまう、だが他でもない妹の頼みだ。

別に戦わせるわけではない、負傷した者の治療をしてもらえるなら、ありがたい。


「わかった。悪いが、治療のほうを頼めるか?」


「はい、兄上、お任せください!」


ユウナは承諾してくれたタイガを安堵の表情で見る。


「ただし、危険だと思ったらすぐに逃げろ! いいな!」


「タイガさん……」


そう呟くカイトをタイガは睨みつけるように力強く見る。

カイトはふいに目を逸らす。

離脱命令を無視してこの場に来たのはいただけないが、カイトの気持ちも考えてみる。


カイトもやはり一端の村の一人の男、やはり居ても立ってもいられなかったのだろう。


タイガは立ち上がりカイトを真っ直ぐと見据える。

カイトの肩は力が入り、震えている。

怒られると思っているのだろう。

無論、怒ってはいるが、今はそんなのどうでもいい。


タイガはそっとカイトの頭に手を伸ばす。

カイトは殴られると思い、力いっぱい歯を食いしばり、目をぎゅっと力強く瞑る。


だが、それとは裏腹にタイガはカイトの頭を撫でる。

カイトもその行動にびっくりしたのか、普段はキリッとした顔立ちなのに気の抜けた表情をしている。


「殴るとでも思ったか?」


「はい。なので覚悟しておりました……」


今度は少し気恥ずかしそうに目を逸らす。

同じ目の逸らし方でも可愛いもんだ。


「あとでたっぷり叱ってやるから覚悟しておけ! 戦ってくれるか、カイト?」


「…っ! はい!」


カイトは元気満々の声で大きくて頷いてくれた。


「よし、お前ら! 全員死に物狂いで阻止しろ! 負傷したやつはユウナに治療してもらえ! 一匹たりとも中に入れるな! タキア村の根性見せてやれ!」


タイガの熱く真っ直ぐな情熱のこもった指示が村の男たちの士気を最高潮に高めていく。


カイト、ユウナを再び戦力に加えて猛攻撃を魔物の群勢に喰らわしていく。



—とある山の中、いや今は緑豊かな山は消えて、大地が見える。


ここで戦っている者どもが遠慮なく次々と自然の恵を破壊しながら接戦を繰り広げる。


赤く燃え盛る炎がヴェルシャスに向かって発射される。

もちろんそれを瞬間移動で避ける。

しかしトビの攻撃はまだ続いてた、ヴェルシャスの目の前まで来てさらに炎弾を撃ち込む。


ヴェルシャスは防御しようとするが、間に合わずにまともに顔面から喰らってしまった。

そのまま直行落下するかと思いきや、黒い翼で態勢を整え難を逃れる。


態勢を整えたヴェルシャスはトビに向かって魔重力をかける。

トビはまた重力に逆らえず呆気なく落下。

しかし落下する直前で火炎増強で落下を防ぎ、また空中へと向かう。


トビは空中へと舞う中、ヴェルシャスに雷光砲弾ライトニング・キャノンボールをぶつける。

これもまた知らない能力だが、使えるのでよしとしよう。


雷光砲弾は炎弾と違い、方向がランダムのようで避けたところでどれかが当たる。


ヴェルシャスは魔法無効化を発動するが瞬時に空間移動で雷光砲弾を避ける。

白熱した空中戦闘バトルは未だに終戦を迎えることはない。


……流石は魔王幹部、強さもそうだが速さもダテじゃない。

かろうじて攻撃は当たるが、それも少しだけだ。


トビは攻撃力自体はさほどレベル的に高くはない、どちらかといえば防御力にほぼ全力を注いでいる分、ヴェルシャスの攻撃は擦り傷一つつけられない。魔重力というものを除いて。


だがかなりダメージは与えられているはず、それはわかる。

なぜなら先ほどからヴェルシャスの動きが鈍ってきたのだ。


やはり長時間での戦闘は魔力やHPをかなり消費させる。

そして二人の場合は片や攻撃力が高く、片や防御力が高いという五十歩百歩の感じだ。

さらにトビには回復能力、ヴェルシャスには再生能力と。

たとえ攻撃されてもすぐに回復や再生でなんとかなる。


つまりこの戦いはどちらかの魔力やHPがなくなれば勝負がつく。

かなりの大博打だ。

ではどうするか、残る選択は———


「……一騎打ちしかないか」


オレは決断するようにそっと呟く。


「どうした人間? 怖気づいたか?」


「いいや、少し覚悟を決めただけだ……」


「なに?」


オレはアーマーの下で顔はニヤリと笑みを浮かべていた。


ステータス画面を開き、属性の欄にある光という文字を見る。

ヴェルシャスは魔王幹部の一人、生半可な攻撃では効かないのは目に見えてわかる。

ならば倒すには何が必要か、奴の使える属性はオレと同じ炎そして闇、それに対抗できるのはやはり光属性か。


属性の欄の光という文字をタップすると、いろんな攻撃が表示してある。


この一騎打ちに賭けるのなら、攻撃する方法は限られてくる。

また奴は再生の能力もある、だとしたら再生させなければいい、簡単な話だ。


オレは今の魔力を全て使いきるつもりでこの選択に賭けて勝負に出よう。


「……武装変更アーマーチェンジ光武装ライトアーマー


オレは光武装に変更するとアーマーの胸の中心の魔石が神々しく光り輝きだした。


オレはふと魔石に目を落とすと紫色の魔石がなぜか白色に変わっていた。

ただそれだけだった。

特に何か能力が向上したのかと思ったが、別にステータスが上がってるわけではない。

魔力も何も変わってなかった。


…なんだよ、これ? 詐欺か?


魔石がすげぇいい感じに輝き出したと思ったから特別な能力でももらったのか期待したが、とんだ期待外れだ。


「なんだ? あまり変わってないな」


おっと、ヴェルシャスにまで哀れむような目で見られて同情される。


うるせぇな、オレだって予想外なんだよ!

まったく一体誰だよ、こんな能力をくれたのは、わかったら絶対文句言ってやる!


不満はありつつもとりあえずヴェルシャスを倒すことに集中する。


余裕ぶってるヴェルシャスに一撃喰らわすために火炎増強を使って距離を詰める。


「ぐはっ!?」


「おっ……?」


オレは自分でも驚いた。

オレがいたところからヴェルシャスの距離が短く感じたそれどころか、一撃を喰らわすのは喰らわすつもりだったが、ヴェルシャスの綺麗な顔が歪むほどの一撃が入り、そのまま地面へと急落下。

ズドンと音と煙を上げてなんとも無様な姿で寝転んでいる。


「これは、なんだ……?」


オレはすぐさまステータス画面を開くと、今の瞬間移動的なものは光武装の能力で光速移動と表示されていた。


へぇ、そうなんだと自分で驚き、自分で納得する。

こんな能力とは知らなかった。

やはり能力コレをくれた人には感謝しないと!


「おのれ、人間め……」


ヴェルシャスは顔をおさえながら立ち上がっている。

そこでオレはとある能力を試したいと思った。

それは炎弾のような構えで右手を前に出して

攻撃を放つ。


「そう何度も同じ攻撃が効くと……、え?」


するとヴェルシャスの表情は驚きへと変わっていた。

右手から発射されたのは閃光ビームに近かったが、それよりも細く白く真っ直ぐな形で放たれた。

 

「ああっ!?」


その攻撃を避けようとするが、閃光はヴェルシャスが避けるよりも速く、避け始めたころにはすぐ目の前まで迫っていた。


……くそっ!


閃光は直撃して地面から大量の黒い煙幕が立ち登る。


「……なんか、すげぇ能力上がってねぇか?」


オレはやはり驚きが隠せないでいた。


そうしていると煙が風で吹っ飛び、ヴェルシャスが姿を現す。

どうやら間一髪で避けきったようだが、大切な黒い翼は右半分もってかれたようだ。


ヴェルシャスは怒りと悔しさで顔が歪みまくってた。


かなり恐ろしい表情だが、オレは不思議とこの展開を楽しく思えてきてしまう。

現実世界では味わえなかった高揚感、緊迫感がオレには刺激的だった。


魔王軍幹部、ヴェルシャス。

恐ろしい相手だが、オレには光の能力がある。


最高の能力だ!

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