戦闘開始
——タキア村に魔物の群勢が見えてくる。
敵感知の警報とともにその姿をオレたちの目の前に現した。
数百体にも及ぶ、その数に圧倒されそうになる。
魔物たちの目は殺気で血走り、息を荒く、不気味な笑みを浮かべ、一歩また一歩と少しずつ近づいてくる。
オレはその群勢を目の前にして少し恐怖心が出てくる。
だがそれと同時になぜか高揚感が生まれる。
この戦いをオレは楽しみで仕方ないのか。
だとしたらオレは少々狂っているのか。
狂ってるからどうした、別に構わない。
この戦いは命を賭けた戦いだ。
楽しいぐらいがちょうどいい!
恐怖で怖気付いて戦えなくなるより、よっぽどマシだ!
「ふっ!」
オレは今笑ったのか? 笑ってる? 不思議
だ。
この世界に来て、巨大な魔物と戦ったからか?
もしくは初めて魔王軍幹部と戦うからどんな強い敵か楽しみだからか?
これが武者震いというやつか、いいな!
魔物の群勢が歩みを止めると真ん中に道を作るように整列する。
その群勢の真ん中にはもちろんヴェルシャスがいる。
相変わらずその不気味さという気味悪い笑みを浮かべている。
ヴェルシャスは真ん中の通路をゆっくりと歩いてきて前に出てくる。
「約束通り、三日経ったが貴様らの考えはどうやら変わってなさそうに見えるがそれは我に戦いを挑むとみて間違いないな?」
ヴェルシャスは戦闘に入る前にご丁寧にオレたちに最後の忠告をしてくれるが、悪いがその気はない。
紳士の礼儀作法というものか。
「ああ、見てのとおりだ! こちらはいつでも準備万端だ!」
オレも同じく戦闘に入るぞという申告をする。
こちらもいきなり戦闘突入はしない。
オレも一応、紳士だ。
「フッ! ならばよかろう後悔するなよ、目にものをみせてくれよう! 行け、魔物たちよ! 村を蹂躙するのだ!」
ヴェルシャスの合図で魔物たちは闘争本能丸出しで攻めてくる。
だがこちらも装備は整えた、いざ出陣!
「ショットガン、用意! 照準! 発射!」
オレの声の合図で村の男たちはショットガンを構えて照準を合わせ、引き金をひいて弾を発射する。
すると弾は一つの弾が飛んでる最中に分散して複数の弾になり魔物を撃破。
前衛にいた魔物は一気に砕け散る。
「な、なに!?」
どうやらヴェルシャスは驚きを隠せない様子。こういうものを見たことがないのか、それともこの村の攻撃に動揺しているのか。
ともあれショットガンは造って正解だった。
ショットガンといえばイメージ的には銃口が二つあり、細長いものを思い浮かべると思いが、オレが造ったショットガンは少し違う。
銃口は一つ、言わばスナイパーがよく使うライフルに近い。
なぜそっちにしたか、スナイパーライフルに近いほうが遠方射撃に向いているから。
かなり有効だと思う。
「おお、いいぞ! みんな、そのまま攻撃の手を緩めるな!」
タイガさんの号令とともに村の男たちに一気に士気が上がる。
「これなら、大丈夫そうだな……」
オレはそう言うとヴェルシャスのほうに視線を向ける。
ヴェルシャスも同様にオレを鋭く睨む。
互いにこれから勝負しようじゃないかという殺気だった目で睨み続ける。
オレは左の腕輪に指示を出すと、空中にある保管庫の扉が開いてそこから手のアーマー、足、胴体、顔という順番でオレのもとにやってくる。
空中から来たアーマーがオレの手、足、胴体、最後に顔に装着すると赤眼の目がビカンと鋭く光る。
オレも戦闘準備万端。いつでも戦えるぞというアピールとともに両手の拳を思いっきり突き合わす、そして両手の拳から熱く燃える炎が
現れる。
ヴェルシャスはそんなオレを蔑むように魔族にしては綺麗な白い歯を見せてニヤリと笑う。
バカにされてるのか、それとも歯応えがある奴と思ってくれたのか。
どちらにせよ、本気で潰しにかかるしかない。
どうせ奴とて同じ考えだ。
少しでも妥協や油断をすれば一発で命を持ってかれる。
オレは黄金の武装戦士、この世界で日本の転生者の実力を見せてやる。
ヴェルシャスは戦闘態勢に入ったオレを見て、自分もやる気になったのだろう。
あのコウモリの漆黒の翼を広げて空中へと浮かぶ、オレも魔力を利用して火炎増強で空中へと浮遊する。
ヴェルシャスは浮遊したままオレに向かって顎で一緒に来いという顔でそのままどこかへと飛んでいく。
なるほど。場所を変えるぞ、か。
オレもそのままヴェルシャスの後ろをついていく。
ヴェルシャスはしばらく空中を飛んでいき、どこかの山へと降りたつ。
オレも同時に着地すると、ヴェルシャスはオレの方を向いて言った。
「ここなら、誰にも邪魔されずにお互い存分に戦えるな……」
「そうだな、存分に……」
オレもオウム返しのように答える。
「さて、少し質問しようか? 貴様は一体何者だ? その装備といい、その魔力は? 一体どこから来た?」
ヴェルシャスはまるで尋問するかのようにオレに正体を探るが、オレはなんて言おうかすごく迷っていた。
女神によってこの世界に転生した日本人だ。
と言ってもいいが、それで伝わるのだろうか。
いや、絶対に伝わらない! というチンプンカンにさせてしまうだけだな!
ここは———
「オレは単なる普通の平凡な男だ! 特に何もない! 以上!」
これでなんとか伝わるだろう!
「………………は?」
おっと、ヴェルシャスはどうやら理解不能のようだ。
オレの伝え方が悪かったか、いや間違ってない!
オレは本当のことを伝えただけ、特に話に盛ったわけではないから否定するところは何もない、……はず?
「フン! そうか、なら他に聞くことはない!」
ヴェルシャスは満足気な笑みを浮かべてるが、本当に納得したのだろうか。
「レベル測定……」
オレはその間にレベル測定でヴェルシャスのステータスを見る。
——————ステータス——————
名前:ヴェルシャス Lv.100
名称:残虐な強欲吸血鬼
攻撃力:6885
防御力:4625
魔力:75856
耐性:1865
属性:炎・闇
知力:400
HP:40000
能力:強欲・魔法無効化・魔重力・炎攻撃
闇攻撃・瞬間移動・空間移動・捕食・再生
身体強化・
————————————————
と、まあなんとすごいステータスだこと…。
それに引き換えオレは———
「ステータス起動!」
————————ステータス——————
名前:トビ 25歳 Lv.50
職業:錬成師
攻撃力:3567
防御力:8000
HP:1998
知力:250
魔力:95867
耐性:550
属性:炎・雷・光
能力:錬成・敵感知・盾・炎攻撃・雷攻撃・
光攻撃・回復効果・etc
————————————————————
ん? なんだこれ? 見たことないものが増えてる。 なんでだ?
魔力はまあ、ハルさんからもらったものだからわかる、レベルもジャイアント系を二体、オークやオーガを数体倒したからレベルや体力などそこそこ上がってるが。
この光とか、回復とか、……てかなんだこのetcってやつは? ま、いっか!
オレはなんか知らない間に増えてる能力はとりあえずあとで探るとして、まずはこの戦いに集中せねば。
オレはステータス画面を脇に追いやって再びヴェルシャスの方へと視線を向ける。
ヴェルシャスもどうやらオレのステータスを確認しているようだが、手を顎に添えて首をやや軽くひねっていた。
「貴様、この能力はどこで手に入れた?」
「え? 何が?」
「とぼけるな!」
ヴェルシャスは静かに訊ねてきたかと思えばいきなりすごい剣幕で大声で怒鳴り散らした。
オレはいきなり理不尽なことで怒られてる会社員の気分になった。
なんか憂鬱……。
「こんなもの、一体誰によってこの能力を得たのか? さっさと言え!」
さっさと言えと言われても知らないからな…。
「人間風情が、ふざけたことを、これは、……ぐへぇ!?」
ヴェルシャスがしゃべってる間にオレは接近して右ストレートを腹に一発ぶち込んでみた。
それを受けたヴェルシャスは見事に攻撃を受けて後ろへ真っ直ぐ吹っ飛んで行った。
森の中を勢いよく飛んでそのままでっかい大木に激突。
「よっし、やりぃ!」
オレはとても卑怯なやり方ではあるが、一撃を与えてみた。
森の木は何本が折れて真ん中に幅広い道のようなものができた。
ヴェルシャスはふらつきながらも起き上がり、オレを忌々しい表情で睨みつける。
おう、どうやらイケメン魔王幹部も殴られたら、結構怒るらしい。あの美形な顔が歪んでいるのがその証拠だ。
そりゃそうか、不意打ちだし。
「この金属野郎、なかなか面白いことをしてくれるじゃないか……」
「今のはかなり効いたみたいだな、おかげで
綺麗な顔もだいな……、ぐはっ!?」
まあ、当然そうなるだろう。
オレがイキりたおしている途中にヴェルシャスも不意打ちでオレの胸の中心を同じく右ストレートをかましてきた。
オレもそのまま森の中の木々を折れさせながら吹っ飛んでいき、大きな大木に激突。
「あいこだ、人間……」
「ああ、そうですか……」
オレは立ち上がり、ヴェルシャスを睨む。
両者お互いに睨み合い、いよいよ戦闘開始だ。




