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鉱石採取に美人あり

——翌日、オレはタイガさんの家で朝飯を頂いていた。

昨夜、オーガとの戦闘があったこと、村に侵入してきたことを村長のタイガさんに報告すると驚きで固まっていた。


「そんなことが…?」


「うそ……」


タイガさん、ユキさん、サユリ、ケイタは唖然としていた。

まあ、そうだろうな。寝静まった夜にオーガ二匹も攻めてきたのだ。

オレが夜行性じゃなきゃ、どうなっていたことか。

あの後鍛治場に戻ったら女神はどっかに消えてたし、マジであれだけ伝えるためだけに着物を着ていたのか。


「まあ、撃退はしましたのでもう大丈夫でしょう」


「それはとても感謝いたします」


タイガさんは食べてた手を止めて頭を下げてきた。


「……だけどもしかしてそのオーガってやつがうちの村を襲ってたんじゃ」


「おそらく、そうだろうな…」


サユリさんの言葉でタイガさんも真剣に考えている。


「でも、これでもう心配ないんじゃないの?

オーガはトビさんが倒したから村も安心なんじゃない!」


ケイタがそうやって言っているのをどこかオレはフラグのように聞こえた気がしてきた。


「まあ、そうだな! これでもう安心だな!」


タイガさんは豪快に笑っているがオレは確信した。

うわぁ、フラグ確定したような感じがする。


これはそう長くないうちになんか大きな力を持った何かがこの村に来るだろうな。


オレはそう思っていながらどこかで来ないでほしいと思っていたが、その願いはこの後あっさりと打ち砕れるのであった。



——タキア村、鉱山へ——


朝飯を食べた後、オレはタキア村の近くの山に向かっていた。


山といっても鉱山だから森林などの緑色の風景はなく、岩が大きく目立つ山だった。


そこに何しにきたのか、それはこの村の報酬でもらうことになっている鉱石を取りに来たのだ。


タキア村から離れているが遠くからでも一目でわかるくらいに目立っている、まさに孤高の一角と言ってもいいくらいの鉱山だ。


多少歩くがそんなに遠くはない、徒歩で10分くらいの場所でオレの家からエスカルテ村の距離だから、あまり気だるさは感じない。


この村にある鉱石はかなり強度があり、アーマーに加えればとても強く頑丈な武器として使える。


どれくらい強度があるかは少し実践してみないとわからないしな、それにこの村の人たちの武器は乏しい。


前にいた鍛冶屋の人はどうやらあまり好かれてもないし、いい武器を造っていたとは到底思えない。


この村の武器は刀、槍、弓矢が主流で他の武器や武具はとてもいいとは言えない、ましてや盾となる、兜の鎧すらないときた。


これは早急に鉱石を取ってきて新品の武器を造る必要があるな。


オレはあれこれ考えているうちに鉱山の洞窟の入り口に辿りついた。


入り口は昼間の太陽の光があれど暗いようだ。

オレは左の腕輪をライトの代わりに使い、洞窟を照らして入る。


もしここで鉱石を取る頻度が増えればこの入り口に明かりとなるものをつけないといけないな。


薄暗い洞窟の中をライトを照らしながら進んでいく。

思ったとおり足場は悪くゴツゴツしている、転んで頭をうち、打ち所が悪ければ一発でお陀仏だな。


オレの錬成で直せるかなと思うが、この広さと長い道のりを考えればオレだけの力ではどうにもできないな。


だいぶ歩いたころだろうか、奥の方に何やら大きな穴のような入り口が見えた。


「ここは鉱石の入り口か? 結構歩いたな…。しかしやはり薄暗いな、……進むか」


オレはその穴の入り口に歩いていく、だが気のせいだろうか、その穴に入ってすこし進んでいくと岩場がかなり整理されている。

しかも、とても歩きやすい!


なんでだ? 誰か他に来ているのか?


右沿いの壁をつたい歩いていくと遠目からでもわかるくらいにあちこちにキラキラと輝くものが見えてきた。


「おお! あれはもしかして!」


オレはなぜか財宝を見つけたような気分になり興奮していた。


「おお、これが探し求めていた鉱石か!」


オレは子どものようにはしゃいでいた。

実際に鉱石などは事前に調べてあって写真ぐらいでしか見たことないが、実物はさらに目を惹かせるものがある。


「すげぇな! こんなにいっぱいあるなら武器造り放題じゃねぇか!」


オレはどんどん奥へ進んでいくと、鉱石とは違う別の光を見つけた。


「なんだ、あれ? なんか別の鉱石か?」


その光に釣られて行くと、誰かがいる。


「そこにいるのは、誰だ!」


「ふえ!?」


オレはその人物に声をかける、半分敵意丸出しでその声に驚いてこっちを振り向くとオレも驚いた。

その光を操っていた人物はユウナさんだった。


「ユウナさん!? なんでここに!」


「いや、その、これは……」


ユウナさんはなぜかしどろもどろになりながら答える。

ふいにもその仕草が可愛いと思ってしまう。

というか薄暗い洞窟の中にいるせいか、ユウナさんの瞳が一際キレイに見えてしまう。


「その、鉱石たちの管理を、してました」


「え? 管理?」


「はい……」


そう言ってなぜかモジモジとしているユウナさん、可愛いなぁ……。と、いかんいかん!

オレは頭を振って我に返る。


「管理って、ユウナさんがいつもやっているんですか?」


「はい、一応……」


「どうして管理なんか?」


「その鉱石って、とてもキレイじゃないですか、それでつい、その……」


なんだろう、やっぱり可愛い。

真っ白な肌を赤く染めて俯いている姿はオレの童貞の心をくすぐった。


それよりもオレが気になるなのは……。


「そうですか、そういやユウナさんって魔法使えるんですが?」


「えっ!? 見てたのですか?」


「はい、すごいなぁと思って……」


「あの、みんなには黙っててもらえせんか?」


「え、なんで?」


「実は、その魔法使えるの村で私だけなので……」


「はあ、別に気にすることないんじゃないですか……」


何をそんなに隠す必要があろうか、まあ確かにこの村の住人が魔法を使っているのを見たことがないから、ユウナさんだけ使えるとなれば嫌われるとでも思ってるのかな。

まあ、魔女の生まれ変わりだから、魔法を使えて当然だろうが。


「で、でも………」


「ああ、わかりました。村の人たちには黙っておきます」


「あ、ありがとうございます!」


オレがそう約束するとユウナさんはとびっきりの笑顔でお礼をしてきた。

守りたい! この笑顔!


「それで、トビさんはどうしてここへ?」


「ああ、オレは依頼の報酬としてここの鉱石をいくつか頂こうとかと思って…」


「そうだったのですか! どうぞ、お気軽に好きなだけお取りください!」


「はい、では……」


ユウナさんや、そんなはじけた笑顔で好きなだけ取れと言われたら、なんだかすげぇ取りづらいんですよ。


オレはそんなことを思いながら鉱石採取の作業を始める。


色々な魔道具を取り出して鉱石を袋に詰めていく単純な作業だ。

それをユウナさんは興味深くオレの作業を眺めている。


「あの、何か?」


「あ、いえ、別にその、…あ、そういえばトビさん、昨夜はオーガの退治、ありがとうございました!」


「ああ、どうも……」


ユウナさんは少し取り乱したけど、昨夜の一件のことを感謝してきた。オレは改めてお礼を言われ少し照れ臭くなる。


「すごいですね、トビさんって! 憧れます」


「そうですか……?」


オレは美人に褒められて心がウキウキになり少しテンションが高くなる。


「すごいですよ! 私たちを助けてくれたし、カイトやユイの装備も直せるし、鉱石の取り方もご存知なんですね!」


「そうですか、普通だと思ってましたけど……」


「それを普通だと思えるのはすごいことですよ! ……やろうと思ってもできないことって結構ありますから、すごく苦しいんですよ…」


そう言ってユウナさんは悲しみの目をして俯いた。


「そうなんですか?」


オレはどこかそんな目をしたユウナさんを見て、出会った当時のハルさんを思い浮かべた。


「私って、魔物や魔獣に襲われやすいですよね。だからよく色んな人たちが守ってくれて

兄上やカイトも……、特にカイトは幼馴染ってだけでいつも私のそばにいてくれて、とても心強いんですよ」


幼馴染、その言葉にオレは少し嫌悪感を抱く。

おっと、昔の悪いくせが出てしまった。


「カイトさんはとても勇敢な方ですね……」


「そうなんです! とてもカッコよくて真面目で優しくて誰に対しても親切で自慢の幼馴染です!」


オレは一体何を聞かされているのだろう。

そりゃ、カイトはイケメンで優しくてカッコイイ幼馴染がいたら恋するのも無理ないか。

オレには到底縁のない言葉だな。


「だから私を守るためにいつも剣の腕を磨いて、頑張って、危険なことも顧ずに戦ってくれるんです……」


なんだ、単なる惚気話か。

そういうのはオレに言われてもなんのお答えもできませんよ!


「でも、それが辛いんです……」


唐突に声が震え出してオレは作業の手を止めてユウナさんのほうに振り向くと——


ユウナさんの目から涙が溢れ、ポロポロと泣いていた。

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