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鉱石が報酬

——オレはこの村に来て驚かされてばかりだ。

まずは鍛治場の異常なまでの汚さ、次にタイガさんに子供がいたが、似ても似つかないくらいの美男子、さらにこのタキア村の村長がまさかのタイガさんという真実。


オレは村長のタイガさんの目の前で愚痴をこぼしたということか…。

それは顔も引き攣るし、気まずくなるわ…。




—タイガ村長の家にて—


オレはとりあえずタイガさんの家に泊めてもらうことにした。

タイガさんの家はやはり村長だからか他の村の家より大きく見えた。


「ここが俺の家だ!ゆっくりしていってくれ!」


「では、お邪魔します!」


家の中に入るとまさに日本の昔の家によく出てくる構造と一緒だ。

中に入ると土間があり、台所で割烹着を着た美人な女性、おそらくタイガさんの奥さんが料理していた。


「帰ったぞ!ユキ!」


「お帰りなさい、あなた!」


ユキさんは料理をしている手を止めてこちらを見てふわりと安心したような笑顔をする。


ユキさんの容姿を見て確信した、なるほど美形に生まれてくる子はやはり美人な女性が絶対にいる。


「大丈夫でしたか? お怪我は?」


「心配ない、少し危なかったがこちらにいるトビ殿に救ってもらった!」


「まあ、それはなんとお礼を申し上げたらよいか…!」


「いえ、当たり前のことをしただけです…」


当たり前、オレは自分でそう言っておきながら何か引っかかるものがあった。

それでもユキさんは手で口をおさえて感激の目をしていた。

まあ、よしとしよう。

すると居間の奥の部屋から誰かが出てくる。

それは白い着物を着た女の子がゆらゆらと歩きながら出てくる。


「ふぁ〜ぁ、パパ…? …帰ってたの?」


「おお、サユリ……、って、おまえ!?

なんて格好してんだ!?」


「ふぇ?」


「早く部屋へ戻りなさい!」


タイガさんが動揺しているのはなぜかそれはサユリと呼ばれる女の子、歳はオレよりも下ということはわかる。

しかし初対面でオレは彼女の格好に目が釘付けになっていた。

白い着物を着ているがその下はおそらく何もつけていない様子、はっきり言うと着物の下は裸ということだ。肌の白く艶のある肌が露わになっている。

なんたるお約束な展開、サユリはまだ寝ぼけていて状況がわからなかったがタイガさん、ユキさんが自分を見て慌てているのを不思議に思い、自分の体を目を向けると途端に顔が一気に真っ赤かになると———


「いやぁぁぁぁ!!!」


なんとも可愛らしい叫び声を出して体を隠しながら部屋へ急いで戻って行く。 


「はぁ、全くあいつは……。すいませんな、

トビ殿…」


「いえ、誰にでもありますから!」


そんなことはないよ、こっちはいいもん見れたからラッキー!


と、内心思っていても顔や口に出さないのが、オレの紳士的な一面なのだ。


まさかのラブコメでよくあるあの展開を見れるとは思わなかった。


——オレは居間にタイガさん、ケイタ、サユリさんの三人で笑いながら話していた。


「先程は恥ずかしいところをお見せしてすいませんでした……」


サユリさんは先程の格好から一変、しっかりとした着物でオレの前にいる。髪もロングヘアをサイドテールに結んでおり年相応の女の子になっていた。


「いえ、以後気をつけてください」


「はい……」


サユリさんはよほど恥ずかしかったのだろう。オレとは全く目を合わさずに下を俯いてモジモジしている。


「本当だぞ! 俺たちがいたからいいものの

他の人がいたらどうする気だったんだ?」


「うぅ…。ごめんなさい…」


タイガさんにちょっと怒られてシュンとするサユリさんは年下のせいか少し可愛いと思った。


「そう言えばトビ殿、依頼の報酬の話をしなければなりませんな!」


「あ、そうだ! 忘れるとこだった!」


オレはこの村に来た理由を自分の記憶からすっぽりと抜け落ちていた。

危ねぇ……。


「報酬?」


それを聞いたケイタやサユリが首を傾げる。


「ああ、村の襲撃の依頼を受けてくれたんだ!」


「本当に!?」


タイガさんがそう言うとケイタはオレのほうを期待の眼差しで見てくる。


「ああ、まあ、そうだな」


「やったー!!」


オレが依頼を引き受けたと知ったケイタは飛び跳ねながら大喜びしていた。

そんなに嬉しいものなのか…?


「本当に引き受けてくれるのですか!?」


サユリさんも驚いて腰を浮かしてオレの隣りに来てグッと顔を近づけて聞いてくる。


「はい、本当ですよ…」


そう言うとサユリさんはいきなりオレの手を強く握りしめ、腕を上下に強く振ってくる。


「ありがとうございます! やっと、やっと…」


ふとサユリさんの顔を見ると目に涙を浮かべて喜んでいる。

冒険者というものは依頼を受けてなんぼの職業だ。だからこんなに喜ばれることは初めてだった。


「やっと、村に平和が訪れるかも!」


「そうだね! これでのどかに暮らせるかも!」


ケイタやサユリさんは抱き合うように喜び、

明るい笑顔で笑っていた。


オレはそれを見て不意に気になってきた。

こんだけ喜ぶってことは今までは地獄のような生活だったのか。

そもそもなぜこの村だけが襲われたのか。

確かに山ばかりに囲まれてる村だからどこかの魔物がいつのまにか住みついてる可能性はある。

それと気になるユウナさんだけが魔物に襲われやすい体質、その正体を探るには色々必要だな。


「ちなみに報酬のことですが、この近くに鉱石の山があると聞いたのですが、どこら辺にありますか?」


オレが聞くとタイガさんはなぜか急に顔が曇り出した。

さっきまで喜んでたサユリさんやケイタも同じ表情をしている。

オレはその顔にただならぬ嫌な予感がした。

なんかこの後に出てくる言葉は実は最近取れないとか言うんじゃないだろうか。

オレはその予感が的中しないことを願う。


「実は……、取れないんだ」


ほら来たー!

やっぱこういう展開があるのか、嫌な予感が的中するフラグを立てるのはやめてほしい。


「まさか、取れない理由って………」


「すまない! トビ殿、仕方ないんだ!」


タイガさんはいきなりオレに土下座をしてきたのだ。

それも立派な綺麗な土下座を……。


「仕方ないんだ! 俺たちは取り方を知らないんだ!」


「ああ!やっぱり、取り方を———」


そこでオレは思考停止をした、今タイガさんはなんと言ったんだ。

取り方を知らない? 鉱石の? なんで?


「今なんと?」


「すまない! 鉱石の取り方を知らないんだ!」


タイガさんは大きな声でハッキリと取り方を知らないと言った。


「取り方を知らない…?」


「はい……」


「本当に?」


「はい………」


どういう反応をすればいいのだろうか。

村長でありながらなぜ鉱石の取り方を知らないのか、鼻で笑ってしまうところをとりあえず抑えて聞いてみることにした。


「なぜ、知らないのですか?」


「なんと申し上げればよいか……」


タイガさんはなんとも言いにくそうな感じだった。これは聞かないほうがよかったか。

オレは自分の選択に少し申し訳なく思った。


「アイツのせいよ!」


「アイツ……?」


突然、何かに触発されたように立ち上がり怒り混じりの声で言ったサユリさんにオレは少したじろいだ。


「おい! サユリ! やめろ!」


「アイツのせいで……」


「ああ、やっぱり訳は聞かな———」


「アイツが自分より優秀な奴が出こられたら鬱陶しいって私たちに教えなかったせいよ!」


「……………は?」


おっと、またもや思考停止に陥ってしまいました。

今なんと言いましたか、サユリさん!


「あの、陰気な鍛治屋のジジイめ! 自分が少しいい刀造れるからって調子に乗りやがって、死んだときは清々したよ!」


「やめろ! サユリ! 確かにパパも思ってたが口には出さずに心の中で罵倒したさ!

そして死んだときは気分が晴れたが、この事態に陥るとは想定外だった!」


おっと、これは聞いてもよかったものか?

普通は死んだらみんな悲しむのに死んで喜ばれる人は相当生きてるときに横暴で怠慢で自己主張が激しかったのだな。

これから自分が死んだときにみんなが泣いて悔やまれるような人生を送ろうと心に決めたのだ。



「鉱石、自分で取ってきます……」




——タキア村、鍛治屋にて—


オレは夜、一人で鍛治場にいた。

別にタイガさんの家が居心地悪いとかではない。

ここにはとある目的でいるのだ。

それは例の依頼の件のためと夜はどうしても起きてしまう自分の生活習慣のせいでもある。


オークから取り出した魔石を使ってどういう武器にしようか考えていた。

しかしどうも作業が進まないというか、やる気がないというか、……なんだろう?


「なんでお前がここにいるのか聞いてもいいか?」


「なんでって、心配して来たんだよ? 感謝したよねー」


そう、この女神こそ作業の集中を掻き乱す元凶だ。


ああ、なんだろう? すごく嫌な予感…。

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