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鍛冶屋のいない村

——いきなりユウナに手を握られたオレは頭の中の思考回路が停止していた。


頭の中がふわふわとしており、状況がよくわからない。オレはどれだけの間固まっていたのだろうか。

だんだんとユウナさんの声が耳に入ってくる。


「トビさん!トビさん!トービーさん!」


「あ!あ!は、はい!」


オレはユウナさんの呼びかけで我に返る。

おっと、我に返ったはいいがユウナさんの顔が近い!…死んでしまう!


「大丈夫ですか……?」


「ハイ、ダイジョブ、デス」


…いえ、全然大丈夫じゃありません!!

…あなたのせいで心臓バックバクでーす!!


「それよりもすごいですね、こんなにあっという間に直るなんて……」


オレとユウナさんの最高の甘い時間をぶち壊したカイトはあとで埋めよう。


「確かに、あのカイトのボロ装備が新品みたい!」


ユイさんはさらっと酷いことを言っている。

それを聞いたカイトは心にきたのか泣きそうな顔をして肩を落とす。


「あ、そうだ!私の装備も直してもらってもいい?」


ユイさんが思い出したように自分の装備を取ってオレに渡してきた。

オレがカイトの修理を見ていたら自分も直してほしいと思ったのだろう。


「いいですよ……」


「やった!はい、どうぞ!」


ユイさんは見るからにオレより年上に見えるが、装備を直してもらえることがよほど嬉しいのか鼻歌を歌いながら子供のように喜んでいる。


オレはユイさんの装備を受け取り装備の汚れ具合やさび具合、他諸々を見てから修理魔道具で手入れをしていく。


ユイさんの装備の場合はカイトのように穴が空いたり、汚れがめっちゃついたりして装備がかわいそうにことにはなっていない、むしろユイさんに至ってはけっこう大事に使っているというのが目に見えてわかる。


ただやはり長年使い古しているから、多少凹みや錆があるが問題はない。

オレは修理魔道具で凹みを直して錆などはオレ自作の汚れ落としを使ってキレイにする。


この汚れ落としはオレが現代から持ち込んだ知識、よくホームセンターとかで売っている汚れ落としをそのままこっちの異世界風に

アレンジして作り出した物。

なかなかいい具合に汚れが落ちるから商品として出したらかなり売れるかも…。


「はい、できましたよ…」


「うわぁ……………」


その装備を修理し終えて渡すと、ユイさんは

キラキラと目を輝かせてまるで伝説の財宝を見つけたかのような顔をして喜びに満ち溢れていた。


オレはユイさんの表情を見ているうちに何か暖かい気分になった。

オレは達成感に浸っているとふとユイさんが持っていた短刀が目に入る。


『刀』それはオレの故郷、日本で重宝される

貴重な遺産だ。

よく骨董品店では鎧の兜と甲冑とともに置かれているのを見るが、実際に使っているのを見るのは初めてだ。


ユイさんは見るからにくノ一のような格好なのでやはり短刀のほうが使いやすいのか?

オレは短刀を見ながらそんなことを思っているとオレの視線に気付いたのかユイさんは短刀を顔の近くに持ってきて聞いてきた。


「これ、興味あるの?」


「あ、すいません、ちょっと気になって…」


オレはあまりにも見入ってたことを少し悪く感じて恥ずかしく思って笑うとユイさんは嬉しそうに口角を上げて短刀を持って右斜め前に座ってた場所から移動してオレの前に来て

見せてくれた。


「別にいいよ!はい、どうぞ!」


「じゃあ、ちょっとお借りします…」


オレは短刀を受け取ってじっくりと観察し始める。

短刀は刃が短くても重さはある、しかも持ち手がかなりボロく見える。

けっこう使ってるんだな、こんなに使ってたら刃こぼれはしてないのだろうか。オレはそう思って鞘から刃を抜くと、思ったとおりだ。これはそろそろ使ってる最中に折れる可能性はあるな。

そう言えば村にも鍛治場が一応はあるんだよな。

そこでオレはとある提案をユイさんにしてみた。



「ユイさん、刀を新品にしませんか?」


「……へ?」


「確か村に鍛治場があるんですよね?」


「あるけど……、できるの?」


「ええ、できますよ!」


オレがそう言うとユイさん、カイト、ユウナさんは口をあんぐりと開けたまま銅像のように固まっていた。

…あれ、なんだこの反応はどっちだ?


そして三人はしばらく黙っていると思いきや、

馬車が揺れるくらいの大声で驚いた。


「ええええええええ!!!!!」


オレはそれにびっくりして一瞬チビりそうになった。


「本当に!本当にできるの!?」


ユイさんはオレにさらに顔をグッと近づいて聞いてくる。

オレは美人なお姉さんにこんなに顔を近づけられたことがないためめちゃくちゃ焦っていた。


「ええ、できますよ……」


「ほんとに本当!?」


「はい………」


「やったー!!」


ユイさんは相当嬉しいかったのか馬車が動いてる中で手や足をジタバタさせながら喜んでいた。

オレはそれを見ながらホッと安堵のため息をついた。

なんか喜んでいるみたいだし、よかったかな?


それから馬車に乗っていたオレは三日間かけてタキア村に着いた。

途中色々あったが、話すと長くなるので省略する。

合計で約五日だ。長かったぁ……。




——タキア村にて—


オレはタキア村着いてまず驚いたことがある。

それはタキア村がまさに日本の田舎にそっくりだったということだ。


日本にいた頃はそれが普通の風景だから気にしてはいなかったが、異世界に来てから他の村は西洋風の建物がほとんどだったから、

オレにとってはこの村の建物はまさに心の癒やしになった。


「ここがタキア村か……」


「トビ殿は初めてでしたな!ようこそ、タキア村に!」


タイガさんが馬車の荷物を下ろしながら、

オレの言葉とともに歓迎してくれる。


「すごいですね。山に畑にお花畑まであって

やっぱり癒されますね……」


「そうだとも!この村は俺たちにとって大事な宝物だ!」


「そうだ!さっそく鍛治場に案内してもらって構いませんか?」


「ああ、いいぜ!こっちだ!」


オレはタイガさんと村の鍛治場へと向かう。オレは鍛治場に向かう最中ずっと考えていた。

鍛治場は今誰も手入れをしていないから、汚いのだろうな。

もしくは鍛治場が使えないこともあるのか。

様々な憶測を頭の中で巡らせてみる。


「よし、着いたぞ!ここだ!」


タイガさんの言葉でオレは鍛治場の前に来ていた。

建物はやはり古く所々に穴が空いてたり、カビが生えてたりしている。

オレはそれを見て少し気分が落ちた、いやわかってはいたが、いざ見るとかなり酷い!

酷すぎて言葉もでない。

さらに中を開けると、オレは絶句した。

というか、するしかない。これはこれは本当に汚い!

鍛治場に必要な道具はどこにあるのかわからないくらいに置物として利用され、おそらく置いてあるものはゴミに近いものだな。


オレの顔はおそらく色々な感情が混じりだいぶ引きつらせていた。


「これはホントに酷いですね……」


言葉にしていた。ホントに心からの言葉だ。


「ああ……、いや、全く使わないと思ったから

もう置物として使ってんだ……」


「ここの村長は一体どんな奴なのか見てみたいですね……」


オレは皮肉いっぱいにこもった言葉を言っていた。

心なしかタイガさんが顔を引きつらせている。

やばい! 村長への怒りでいっぱいだったが、タイガさんたちからすれば村長はお偉いさんだ。

これは失礼なことをしたな。

オレは心の中でちょっとだけ謝罪した。

すると一人の男の子が大声で呼ぶ声が聞こえてきた。


「父上!父上!戻られたのですか!」


「父上?」


オレが一体誰のことを言ってるのかわからなくて首を傾げるとタイガさんが横でその男の子の名前を呼んでいた。


「よお!ケイタ!元気にしてたか?」


「え!タイガさん、子供いたんだ!?」


「ああ、そうなんだ。こう見えて父親やってんだ……」


オレが驚くとタイガさんは恥ずかしそうにしていた。他の人に父親の姿は見られたくなかったのか。

それにしてもタイガさんの子供かと思うくらいに男の子は少女マンガに出てくる美男主人公そのものの顔立ちをしていた。


「父上!その方は?」


「ああ、村に帰る途中に魔物に襲われてな、その時に助けてくた、トビ殿だ!挨拶するんだ!」


「そうだったのですか!父上を助けていただきありがとうございます!トビ殿!」


「ああ、いえこちらこそ……」


以外としっかりしているな年齢は十歳くらいだろうにこれは父親譲りか。


「村長!お帰りなさい!」


「ああ、ただいま」


すると一人の二十代前半くらいの若い男が声をかけてきた。

オレはそこでとあることは気づいてしまった。

村長と声をかけた男の視線とそれに反応したタイガさん。

ええっと、つまり———


「タイガさん、村長なのですか?」


「ああ、実はそうなんだ…」


タイガさんは気まずそうに頭を掻きながら言う。


オレは心の中でこう叫んだ———


アンタが村長かーーーーーーーーい!!

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