黄金の英雄
——アルト村に魔物襲来——
突如、アルト村に現れたジャイアントイノシシ。
ジャイアントイノシシは本能のままに突進してくる。
女騎士は死を覚悟したときだった。
ゴォォォォォォと、耳元に入ってくる音に不信に感じて目を開けるとそこには、
黄金の鎧を身にまとった者が目の前でジャイアントイノシシを押さえていた。
「………黄金の鎧?」
女騎士の目にはそれはこの世界ではあり得ない光景だったのだ。
…ふぅ、なんとか間に合ったなぁ。
…よし、それじゃ村から引き離すか…。
オレはジャイアントイノシシをそのまま炎の火力を使い、押し出そうとする。
ジャイアントイノシシも負けずに押し返してくる。
オレも負けじと押し返す。
しばらくオレとジャイアントイノシシの踏ん張り合いが続いたが、オレが押し勝った。
ジャイアントイノシシはそのまま吹っ飛んで行った。
オレはすぐにジャイアントイノシシを追いかける。
「…なんだったのだ、今のは?」
「団長!大丈夫ですか!」
騎士たちが心配して戻ってくる。
女騎士は呆然としている。あの黄金の鎧を着た者は何者なのか。
オレは広い荒野にジャイアントイノシシを追いかけてきた。
ジャイアントイノシシは立ち上がって頭をブルブルと振ったあとオレを睨みつける。
…おう、大分お怒りのようだな。
「敵のレベルを測定!」
オレの画面にジャイアントイノシシのステータスが表示される。
…おっ、レベルが30もあるのか。…攻撃力も
二千を軽く超えてんな…、だがこっちにはハルさんからもらった魔力があるから問題ない!
オレは火力を上げてジャイアントイノシシに突撃する、ジャイアントイノシシも同時にオレにアタックしてくる。
お互いに同時にぶつかると、衝撃波が一気に広がり、荒野の地面に亀裂が入る。
…さすがはジャイアントイノシシかなりの攻撃力を持ってるな…。
攻撃力は効いているようだが、致命には至ってない、魔力量は40000、…か。
これではいつ尽きるかわからないな……。
…打撃では勝てるかわからない、ならば…。
オレは手を前に突き出して手の平から炎の弾を発射する。それと同時に腕のアーマーから
銃弾を発射、その二つが組み合わさりジャイアントイノシシの体に命中。
ジャイアントイノシシは吠えながら倒れる。
…やはりいくらジャイアントでも銃弾には敵わないか!
オレは胸にある魔石を使い、手の平から炎の弾を連続で発射する。
魔法で言うところのファイヤーボールというのだろう。
ジャイアントイノシシはかなりのダメージを負い続ける。HPもかなり減ってきている。
…魔力量がもう38000か、かなり消費した、…飛行でだいぶ使ったからな…。
オレが分析していると、ジャイアントイノシシが起き上がってくる。
ジャイアントイノシシは意識が朦朧としながらもオレを睨みつけてくる。
…闘争本能のままに、…か。…子供の頃のオレみたいだな…。
いつからだっけなぁ、闘争本能なんて捨てたのは……。
いつからだっけなぁ、戦わずに逃げるようになったのは……。
いつからだっけぇ、自分に自信を無くしたのは……。
子供の頃に抱いた夢など、とうに捨てた。
いつもそうだ、オレが恋していた女の子はオレに目もくれない。
いつもそうだ、可愛い女の子はみんなイケメンがさらっていく。
優しくしたところでそれは何も印象に残らない。
よく好きなタイプはなんですかという質問で優しい性格の人が好きですというアイドルの答えを見てオレは鼻で笑う。そんな奴は山ほどいるが、その中でもかっこいい人がだろうがと思うのだ。
オレには可愛い幼馴染なんていない、可愛い妹なんていない、美人な姉なんていない、オレのことが好きな後輩女子なんていない、同級生に優しい女の子なんていない。
オレを気にかけてくれる女などいない。
学生時代も会社員の時も女性に縁なんてない、漫画みたいな展開などどこにもない。
常に中間で平凡で普通な人生を歩んできたオレが思うことはただ一つ。
オレは拳を強く握りしめる。
「テメェらイケメンや美人はオレら、モブがいるから輝けるんだぞ!!」
最大な皮肉な言葉を言い放って、オレは魔力を最大限に使い、火炎増強する。
炎でアーマー全体を覆い、ジャイアントイノシシに接近する。
ジャイアントイノシシも猛スピードで突進してくる。
オレとジャイアントイノシシはお互いスピードを緩めない。
段々と距離が近づいてくる。
オレは決死の覚悟を決め、前だけを向く。
「ウォォォォォォォオオオ!!!!!!」
雄叫びを上げながら突進する。
その瞬間スローモーションになる。
お互いの距離ほんの数十センチ、オレとジャイアントイノシシが衝突する。
そして一気に膨大な衝撃波と爆発音がする、オレはジャイアントイノシシの頭を貫通して地面へと転がっていく。
ジャイアントイノシシはそのまま動かなくなり、倒れる。
……勝ったぁ、勝ったんだ、オレは……。
オレは安堵のため息と共に座り込む。
…HPも残り少ないな、魔力も残り100か、まあよくやった…。
オレは力尽きてそのまま静かに目を閉じた。
しばらく寝てただろうか、誰かが何か叫んでる。
「…………起きて!ねぇ……」
ん…?…なんだ、一体……?
「起きてってば、ねぇ……」
…誰かが耳元で叫んでる、誰だ?
「………トビさん!……起きて!」
…ああ、オレの、名前を呼んでる……。
なんで………?
オレはゆっくりと目を開けると、誰かがオレを覗きこんでる。
……視界がぼやけて何も見えない。
ぼやけてるが形はわかる、……女性だ。
…オレのことを心配してくれる女がいるんだなぁ……、珍しいな……。
「起きて!!」
とその叫び声とともに思いっきりビンタされた。
「いってぇぇぇぇ!!!!!」
オレはその痛さに飛びおきた。トビだから
……ごめん、寒かった?
「……誰だよ?」
ぼやけた視界がだんだんはっきりとしてくる。
そこにいたのは、男の娘のハルさんだった。
ハルさんは綺麗な瞳からポロポロと涙を流している。
「ハルさん、どうして?」
「……心配、したんだよ」
泣きながらハルさんはそう答える。
「……はぁ」
オレは未だ混乱していた。
いや、心配してくれるのはありがたいがなんでここにいるのか聞きたいんだど……。
そう思ってるとその後ろに女神が立っていた。その顔はなぜかドヤ顔になっていた。
…なるほど、こいつが連れてきたのか、余計なことを……。
「ハルさん、オレは大丈夫ですよ。心配しなくてもいいですよ」
「…う、うぐっ、ほ、ほんとに?」
「……はい」
ハルさんは涙を拭きながら聞いてくる。
オレはしっかりと頷く。
「……よかったぁ、またいなくなるのかと、思ったから……」
「……どういう意味ですか?」
オレはなんのことかさっぱりわからなかった。
「……だってぇ、トビさん、ボクの装備、直したあと、いなく、なったじゃないですかぁ……、ものすごく、辛かった、から」
ハルさんは少し落ち着いたもののまだ涙は流れる。それでもオレに必死で伝える姿を見てオレは驚くしかなかった。
「……そうなん、ですか」
そこまで思ってくれてたのかとオレは心から感謝した。
ハルさんみたいな美少女のような男の娘がオレのことを心配してくれる、それだけで胸が熱くなった。
…可愛いすぎる、でも男なんだよなぁ。
オレはなんとも複雑な気持ちになった。
「まあ、とりあえず一旦帰りましょうよ、ハルさん!」
オレがそう言うとハルさんは涙を拭いてニッコリと笑顔で頷いてくれた。
「あ、でも魔力がないんだ……」
「ああ、それは大丈夫だよ」
女神が心配するなという顔で言う。
「は?……なんで?」
オレが聞くとハルさんが立ち上がる。
「ボクがもう補充したから!」
「あ、そうなんだぁ、じゃ、いっか」
そうしてオレはハルさんと女神を抱きかかえて家へと戻った。
だがオレは知らなかった、まさか自分がこの世界で黄金の英雄と讃えられることを……。




