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伊達に伊達にっていうけど結局中身は何もない

一歩その場に足を踏み入れると扉は閉められた。廃れた風景に「面倒ごとか」とナタネが首を掻いた。その時、奥から一人の小僧がナタネとルギの前に跳ね飛ばされてきた。小僧はボロボロになって薄汚い雑巾のようになっていた。

「……あー…こいつは…」

ナタネはその場にしゃがみ、小僧をツンツンした。

「依頼にあった筆跡と同じ小僧ですよ」

「いや、なんでこんなにボロボロなんだ、濡れ雑巾になってんじゃーねーか」

「お前言葉を選らべ。こやつは濡れ雑巾というより絶えたマグロだろ」

「絶えたマグロっていう方がわかんねェよ」

ナタネはその場に立ち上がる。男はナタネたちの前に出ていくと気味悪く笑う。

「ちょっと遊んでいただけなんですよ、コッチもコッチで商売上がったり下がったりなので、あぁ、もう用済みなのでソイツ。うちでは上手く扱えなくて。宿代のためには通貨が必要でしょう?何もできなくて焦りましたよ。薬売ったり、売買ももっとうまくこなしてくれなきゃ困り――」

その時聞こえる肉に食い込むナイフの音。男はその場に倒れこんだ。

「いやぁ他言無用と言っておきながらくちゃくちゃとモノを言うもんではありませんよ?首がふっ飛ぶまでの時間が縮まるだけですから」

「……」

「お、お前…?!仲間じゃないのか?!」

「仲間?他言無用も守れない人は眼中にはおいていません。ちょっと芝居に乗りすぎたのでしょう。あぁ、心臓は一刺しなので。だって私、一応このなりでも――伊達に殺し屋やってないので」

その場に現れたのは赤黒い紙に黒い人を一瞬で殺めるような瞳をした一匹の狼だった。男は持っていたナイフで周りを一気に掃除ころした。

「やれやれ、やはり底辺のような輩には手を貸すものじゃありませんね」

「な、なんだあの目…」

「ナタネ!あいつは相当ヤベェぞ。目なんて合わせるものではない。」

「おやおや心外ですねぇ、目も合わせてくれないなんて。泣いてしまいます」

狼はそういいながらナタネの前に歩いてくる。ナタネは狼の瞳を真っすぐと見つめる。

「おやおや、怖がるどころかなにやら覚悟が決まったような顔ですね、いいですよ。あなたも狼になれる素質があるようだ。ですが、ここにはもう手を出さない方がいいですよ。ここ、なんといっても環境設定悪すぎなので――さっさとその小僧を連れて帰りなさい。こんなとこに長居なんて無用ですよ」

狼は後ろを向いて去っていく。ナタネは倒れこんだ男からナイフを引き抜くとそれを狼の方に向かって軽く投げた。狼の数センチ横を通り過ぎるとき、狼はナイフを人差し指と中指でとらえる。

「おやこれは。また随分と派手なお誘いを受けたものですねぇ」

「ナタネ…お前…」

ナギはナタネが自分の瞳から離れないのがわかった。

「現世じゃァツラわりィやつとツルンでてな、ダーツは得意なんだよ」

「そうですか、ダーツいいですよね、アレ。私も好きなんですよ、まぁこのお誘いは次回に取っておきなさい。あぁ、誘う時名前必要ですよね、狼って覚えておいてください。一度しかお会いできないかもしれない人に本名を名乗るなんてこと、私の掟に歯向かうので」

「……あぁ、そうかよ…だったらその時はたいそううめぇコーチャでも入れてくれよ」

狼は暗闇の中に消えていく。

「……このマグロの治療できるか、おい、――ルギ」

「え、あぁ、わかった」

ルギは杖を振り、魔法を唱える。小僧の体はみるみるうちに擦り傷も掠り傷も治っていく。

「…あぁ、無傷で済んで一安心ってとこか」

ルギの治療も無事に終わり、ナタネは男を担ぎ、ルギと共にその場を後にした。

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