事情
ナタネ一行は王国を探して歩いていく。何かが走ってくる音が耳に届いてナタネ一行は足を止めた。一匹の白い獣がこちらに向かってくる。獣は素早く、息切れをしながら走ってきた。白い獣は鋭い金色の目をナタネに向けた。
「お前、どっかで見たなぁ」
「コイツ、王国にいた獣じゃないか…?」
だが以前の獣のように金のブレスレットとタトゥーはなかった。獣は走ってきた道を戻るが、足を止めてナタネたちに振り返る。
「どうやらついてきてほしいようです」
「……嫌な空気じゃ…」
ナタネたちは獣の後を追う。獣の足は素早く、追いつくことが難しい。それは獣が一番よく知っているのか、時々足を止めて、ナタネたちの方を振り返る。
「……おい…なんだよ…あの黒い獣は…」
見えた先にいたのは黒い獣たち。その大きさは変わらないが、数は前よりも格段に増えていた。白い獣は鋭い金色の眼を黒い獣たちに向けるも、足が震えていた。
「…お前…仲間じゃないのか」
「グルゥゥゥグルゥゥ…」
「…だがこの数は…異常じゃ…」
瞬間、白い獣は突発に走り出し、黒い獣の群れへ身を放つ。黒い獣を嚙み砕くも、他の黒い獣に身をかぶせられ、その姿は見えなくなっていく。
ペルロ)「なんて力だ…」
ナタネ)「そんなこと言ってる場合じゃねぇ!!」
ナタネは白い獣の元へ飛び込み、黒い獣を剣でバタバタと倒していく。ルギたちも加勢し、黒い獣をなぎ倒していく。白い獣を見つけた瞬間、目を疑った。そこには肉を抉られた白い獣が横たわっていた。
エルド)「あれれ。逃亡した獣が死んでるなぁ?でも当然だな。反逆はなにがあっても許されないんだから」
その声の主に目もやらず、ペルロは短剣エルドに突き刺す。
「…やっていいことを悪いことの区別もつかねぇのか」
「……お前、あんまり強くないと思ってたから名前知らないんだよなぁ」
「知らなくてもいいさ。…お前に名乗ることなんて一生ねぇ。」
ペルロは刃先をエルドの首へ刺そうとするが、エルドは瞬時に避ける。何度も何度もさそうとしても、ペルロの刃先は当たらない。
「遅いなぁ。まったく。君はどんなお稽古をしてきたのかな?」
「…稽古なんて習ったこともねぇよ」
ペルロの短剣は避けられてばかりで、全く当たる気配はない。
「ナタネ。先に行っててくれないか。ここは俺が相手をする。ここにいる獣どもを作ったやつの顔に泥塗ってこい」
その声は重く、言葉が出なかった。ナタネたちは走って王国へ向かう。
「お前一人?へぇ。俺を相手にするのか?剣先当てることもできねぇのに?」
「剣先なんて、お前の油断をつけばいくらでも当てられる」
「油断?俺が油断なんてするわけないだろう?」
エルドはペルロと同じサイズの短剣を出した。
「俺の短剣とお前の短剣どっちが強いか勝負しようぜ」
「俺はそんなガキみたいな勝負のために短剣握ってるわけじゃねぇよ」




