孔庵とルギとシャル リークとナタネとペルロ
「なんと非才!本気が出せぬのは残念です」
「本気出して国滅んだらまたやり直しだからねぇ」
ペルロ)「え、国滅ぶ?え?そんな強いの?」
孔庵)「では、始め!」
シャルとルギ。ナタネとペルロで勝負が始まった。
孔庵が地面を踏んで走ってくる。その瞬発力は目に見えない。一気にシャルに詰め寄る。
「さっきとはだいぶ違いますぞ!お気を付けを!」
孔庵はシャルを蹴り、木にぶつけた。
「う…っ!」
その蹴りは重く、足が動かなかった。木から枝が落ちてくる。落ちてきた枝を持ってシャルは守りの形をとった。
「その枝一本でどうするのです」
「こうするのです!ルギさん!」
ルギは杖を振るう。枝は大きくなり、枝先は雷を纏った。
「おやおや。雷ですか。随分物騒な物を使うようですね」
「えぇ。僕には、武器なんてものはありませんから」
「では非才は自慢の武器を使いましょう」
孔庵は大太刀を出して、一気に振るう。その風はとても強く、肌が痛くなった。
「どうしたのです。まさかこの風ごときで、降参なんて言いませんよね?」
「……いいませんとも!」
その時、ルギが大太刀の動きを杖で止める。だが止めた衝撃で杖にひびが入る。
「そうですか。そうですか。シャル様は一時休戦という体制をとられたのですね。ではルギ様、私と存分に遊んでください」
孔庵は再び大太刀を回そうとするも、魔力の込められた杖を押し切ることができない。
「おいどうした…。こんなんだと押し切られるぞ」
「その心配は無用ですな。こちらも一応加護を使うことにしましょう」
その時、黒い靄が浮き出る。靄は瞬く間にルギの体を包囲した。
「っう…く、苦しい…」
「どうです?!非才の加護!失楽園の瞳は!非才の加護は特別に攻撃と観察力を兼ね備えたものですぞ」
「あぁぁぁ…苦しい……やめろ…見るな…わたしを…」
包囲の中に広がる無数の瞳がルギを見る。その目からの情報は、すべて孔庵の頭の中へ伝達される。
「なるほど!そうですか!あなたの魔術はまだ完成とは言えないのですね!すべて未完成のまま使っているんですね!非才!意表を突かれましたぞ!」
その時、シャルが黒い靄に雷を浴びせる。黒い靄は一気に無くなり、ルギは一気に杖を押し切る。
「おお!強い!なんと非才!押し切られるのでありましょうか?」
「余裕ぶっこいてんじゃねぇぇぇ!」
ルギが杖を押すも、あっと一歩のところで抑えられてしまう。その時、シャルが回復し、一気にルギの杖を左足で押した。孔庵は押されるも、一気に大太刀で跳ね返した。
「非才!わざと負けるというのは己の交わした約束に反します故。ここからは一線超えて戦わせていただきます」
「あっちはあっちで盛り上がってるみたいだねェ~」
「おいおい、さっさと始めちまおうぜ。」
ナタネは剣を握って挑発する。
「おや?結構やる気だねぇ~。それなら最初から必殺技で行っちゃう?」
「そうだなぁ。そうしてくれよ」
リークは短剣を手に走ってくるが、瞬く間に短剣は手元はなく、槍を持っていた。
ナタネ)「アイツ短剣をどこに…?!」
ペルロ)「っぐぁ…」
短剣はペルロの右足を貫いていた。ペルロはその場から動くことができない。
「お友達に構ってる暇はないよぉ?」
ナタネの前に槍をもったリークが仕掛けてくる。ナタネは剣で応戦するが、圧倒的な力によってナタネは吹き飛ばされる。ナタネは地面に転がるも、その場でジャンプしてリークの槍に飛びついていく。勢いは相当なもので、リークはよろけるも、なんとか剣を抑え込む。
「これでは埒が明かないねぇ」
そういうと、ペルロの足に刺した短剣を遠隔魔法で抜いた。全身に一気に痛みが走り、声をあげるも痛みは増していく。短剣はナタネの右肩を刺した。ナタネは痛みで剣を落としてしまう。
「これはもらったかな?」
ナタネは地面に尻もちをついて、ナタネの喉にはリークの槍の刃先が付きつけられる。
「これは…もっと楽しませて欲しかったなぁ。君の本気はこんなもんなのかい?」
その時、横からペルロの短剣が炎を纏って、リークの脚のギリギリを通るも、短剣はその場に落ち、炎は消えてしまった。リークがペルロの方を見れば、貫かれた足は地面に弱々しくついている。
「その足で立ったのかい?小生は今、人間の限界でも見てるのかな?」
「……どこ見てやがる。」
ナタネがリークの持つ槍を左手で自分の方へ引くと、リークの顔が近づいた途端、右手で剣を握り、眼球のギリギリで止まる。
「…これで形勢逆転だな」
左手はリークの腕を離さない。
「…君、忘れてるなぁ。小生の…遠隔魔法を」
その時、ペルロの短剣がナタネの頬をすり抜けると同時に、ナタネはリークの腕を離してしまった。リークは遠く距離を置く。
「…小生はそう簡単には倒されないさ。それよりも…君は自分の心配をした方がいいかもしれないねぇ?」
ナタネの肩に刺さっていた短剣を抜き、それは今度、剣を握る右手に刺さる。だがナタネは剣を離さなかった。痛みに耐えながらも、剣を小指で支える。
「…おや、それで小生に勝つのかい?それなら小生少しは期待しようかな」
「……その顔できんのは今のうちだよ」
「シャルさん!なんという脚力!非才その魅力に飲まれてしまいそうです!」
「剣を壊してしまえば終わりかと思いましたが、僕の脚力でも壊せないんですね。一体何でできてるんです?その剣は」
「そうですねぇ。私の抱えるすべてが入っています。すべての悲しみと憎悪が、この剣を生み出したのです」
「…なるほど、その昔ばなし後で聞かせてください。」
「非才の話を好む者は、変わり者しかいませんよ」
「僕は筋金入りの変わり者なので、沢山聞きたいところです」
「…そう言ってくれるとは…非才、感激の嵐ですぞ!」
シャルはずっと大太刀に攻撃し、なんとか隙ができないかと模索する。ルギは体を固めたりするも効かなかった。その時、孔庵が大太刀を振り、シャルは高く上へ飛んだ。ルギは距離を置く。
「…非才の奥義で、勝たせていただきます。」
大太刀を振ったときに黒い膜があらわれ、一気に空間を真っ黒に染め上げる。そこは別世界で、先ほどの景色はない。周りすべてが真っ暗に包まれた空間でただ一つ、大太刀の風が髪を梳くった。瞬き一つ。大太刀の風が強くなり、体中に擦り傷ができてしまった。
「この空間…どこに行っても風が来るぞ!」
「ルギさん!僕の考えがあります!ですがこれはルギさんの協力も必要です!」
「なんだって力になるぞ!」
「…ルギさんは、護衛魔法を使ってください!」
「…護衛魔法は体力消耗が激しい…。一度しか…5秒しか使えないぞ」
「一度でいいのです!」
「わかった!」
シャルはルギを抱える。ルギは少し赤面するも、シャルは真っすぐに驚異のスピードで走り出した。大太刀を振るい、風を放つ孔庵の元に一気に着く。
「今です!」
ルギは護衛魔法をし、シャルと自らの体を風から守る。
「はぁぁ!!」
シャルが高く飛び、大太刀を孔庵が振るうも、護衛魔法で攻撃は届かず、シャルは孔庵の振るう大太刀の上に乗った。見事な蹴りを笑っている孔庵の頬へ決め込んだ。真っ暗な空間は消え、そこには頬を蹴られ、跡が残った孔庵と、孔庵の大太刀に、ルギを抱っこするシャルが立っていた。
「いやはやこれは!刺激が気持ちよかった!久々にしびれましたぞ!なんという協力策!良い!良い!実に良い!何と素晴らしい戦闘姿!非才に一発入れたということはもう上出来ですぞ!」
「……こんだけ戦ったのに…なんツー余裕じゃ…」
「余裕…うーん余裕…そうですねぇ。まだまだ序の口を攻略したにすぎませんよ!非才はまだまだ未熟者の故。ですが少し一線を越えて黒い空間を使ってしまいました。少し無分別でしたかね?」
「…いいえ。強い者と戦って損はありません。ありがとうございます。」
「……寛容な男じゃ…」
「いやはや誉の言葉!非才嬉しいですぞ!」
「剣を握るので精一杯だろう?」
「精一杯?まさか…この程度、痛くもねぇよ……」
ナタネはペルロの方に目を合わせた。
「ペルロ。俺はあいつを引き付ける。その間にお前の短剣を取れ。…その足でまだ…走れるか?」
「……走るよ。どんなことがあっても…俺はアンタの背中について行くだけだ」
「…いい返事だ」
ナタネはリークの元へ走ると、リークは槍を地面に刺し、槍の上に座った。
「小生は恥ずかしく負けるのが嫌だからね。小生の大好きな技を使ってあげよう」
ペルロはふらふらになりながらも剣にたどり着く。剣を持つと、ナタネの方に顔を向けた。リークの手をたたいた音が響く。すると、リークの周りには無数の槍があらわれた。無数の槍はリークの手の合図と共に放たれる。ナタネの目に映った景色は無数の槍が降ってくる光景。ナタネは剣を握り、刺さった短剣も抜いて、槍を弾き返すも、無数に槍が降ってくる。一気に降ってきた3本の槍に目をつむる。痛みはない。
「何目つぶってんだ!早く応戦しろ!」
そこには血を流しながらも戦うペルロの姿だった。ペルロの短剣が炎を纏い、弾き返していく。
ペルロ)「どうやらこの槍、この炎に溶けるみたいだ」
そこにはところどころドロドロになった液体状の槍が転がっている。
「…今もしかしたらチャンスなんじゃね?」
ナタネは剣を一振りして、つららを出し、一斉攻撃を始めた。氷は槍を次々と落とす。その光景に交じり、ナタネはリークに一気に距離を詰めた。短剣をリークの首へ。自身の剣をリークの目へ。槍の一斉攻撃は止まった。
「…はっはっは。見事だ。ナタネ君。剣を降ろしたまえ」
ナタネは剣と短剣を落とした。ペルロは足を抱えている。リークはペルロに近づき、治療魔法を施した。瞬く間に貫かれた脚は元に戻っている。
「…小生、少し遊びすぎたね。でも本気で食いにかかってくるのは、いい心がけだったよ」
「…リークさん、俺治療してくれないの?」
「治療する必要あるのかな?ナタネ君結構大丈夫そうじゃない」
「いや手と肩やられてるんですけど」
「小生、手と肩は専門外だなぁ」
「専門とかねぇだろ!」
「いやはや。皆お見事でしたぞ!」
「これは小生もびっくりだったよ」
「めちゃくちゃ痛ぇ…」
「小生、ちゃんと治したよ~?」
「それでも痛ぇ!」
ナタネは顔を変えてリークに顔を向ける。
「なぁ。なんであの時の槍。溶けるもんにしたんだ?」
「…ナタネ君は気づいていたんだねぇ」
「気づくも何も…」
「あれはね、きっとああしないと勝てないって思ったんだよ。一歩引いたような体制で戦っていたんだ。きっとこうしないと、今の君たちは小生に勝てないという確信があったから」
ペルロ)「……悔しい。悔しい!」
「もっと強くなればいい。それだけの話さ。」
「しんみりのところ悪いのですが、非才、シャル様にお渡ししたいものがあります故」
「…僕ですか?」
「えぇ。これを」
シャルの前に現れたのは一本の大太刀。
「こちらをシャル様に。私の加護が付いた大太刀でございます。非才の加護を使うならばシャル様が適任かと思いまして」
「ありがたく頂戴します。」
「…みなさんボロボロなのですから、今日はこの宮殿にお泊りください。」
ナタネ一行は孔庵の言葉に甘え、宮殿で休息をとることにした。




