鵺と女
酒の都。番御樺。夜が明けた朝にその音は響き渡る。
「か、勘弁してください!対価はこの前お支払いしたのですよ?!」
男は頭を下げるも、頭は足で踏みつぶされて地面にめり込む。
「……良くねぇな、これならテメェを持って行った方が早かったろうに」
「か、勘弁を…!」
男は地面にめり込んだ男の頭を掴んで引きずっていく。
「手荒な真似は得意中の得意だ。俺には優しさなんてもんはねぇのさ」
「っ!…痛い!やめて…!はな…して……!痛い!痛い!」
「うるせぇな。俺はたとえ女でも子供でも容赦しねぇぞ。…対価はあんなもんじゃ足りねー。テメェの手で犯した罪は、あんな対価じゃ消えはしねぇんだ」
男を引きずり、目をつぶる。一瞬で目を開けばそこに広がる景色は赤い月が顔を見せた。
螺)「あれ、新しいお土産でも持ってきたのかい?」
李)「螺、そういうのは良くないよぉ?持ってこられた男に失礼じゃないかぁ」
「…鵺はどこにいるんだ?」
「鵺はねー、あ、帰ってきたみたいだよ」
鵺は男の後ろに背中合わせで立った。
「…俺に何か用か?」
「オメェが言ってた野郎を連れてきたのさ。対価が足りねぇんだろ?大事にしてた女を殺されるっつーのはつれェもんだな。」
「あぁ、辛いものだ。だが、そいつを殺したところで帰ってはこない。…何十人もの女がいても、ひとりひとり違うもんだ。」
「…酒にしねぇのか」
「そんなまずい酒は飲むことはできん。だが」
鵺はひきずって来られた男の両眼をくりぬいた。
李)「ヒュ~」
螺)「爽快でいいね!」
「…俺の愛した一人の女を殺した。お前を殺してもその女は帰ってはこない。だが、お前の幸せを奪うことはいくらでもできる。骨を砕くことも、鼻を潰すことだって、俺には造作もないことだ」
目をくりぬかれた男を現実世界へ戻す。男はその目でもう何かを見ることも、追いかけることも、焼き付けることもできない。
「…あれでいい。あんな奴の酒を飲んだところでおいしくはない。ジータ。つまらない一興ではなかったことは感謝として伝えておこう」
「……感謝はいらねぇ。俺にはそんなもの必要ない」




