クリーニングは中身に気をつけようね
「うむよく寝―」
右頬に蹴られる痛みを感じるまで、そこまで時間はかからなかったという。
「テメェ……俺がどんだけ寒い思いしたと思ってんだ。異世界の主人公がこんな醜態でイイと思ってんのか」
ルギは右頬をすりすりとこすりながらゆっくりと立ち上がる。
「主人公、主人公って、お前まだ何もしてないだろ」
「これからなんだよ、冒険は!かっこよくいたいんだヨ!頼むから床ではもう寝ねぇぞ」
「後半が本音か」
ルギは「よっこらせ」っと腰をたたき、杖を振るう。
「あ…なんだっけ」
「そこまで思わせぶりな態度しといて魔法忘れてんのかロリコン」
「だからロリコンじゃないわ!…いや、服の設定してなかったと思ってな」
「なんだ今更。文章しかねぇのに服なんていらねぇだろ」
「いや着てないとまずいだろ」
ルギは杖で肩たたきをしていると目をかっぴらかせた。
「あ、これだ」
「あ?なにが――」
「ビルカズ」
一言唱えれば、寝間着から服が変わっていた。
ナタネは白いパーカーに青いローブ。下は少し濃い灰色のズボンに膝下までのブーツ。
ルギは茶色の鎧に手袋。赤いマント。
「なんで俺だけ格好が現代なんだ。……ズリィぞテメェ!!」
ナタネはルギの肩をつかみ前後に揺らす。
「な、なんだ揺らすな!目が回るわ!」
「これしかなかったのか?!なんでオメェだけそんな異世界っぽいんだよ…オメェのほうが主人公感出しちゃってどうすんだよ…」
「なにを言ってるのか知らんが、それただのパーカーではないぞ?」
「え?」
「ほらこうすれば…」
ルギはパーカーの右ひもを引っ張った。
「下から若年層もののエロ本」
「うわぁ~便利…じゃねェんだよ」
喚くナタネに「落ち着け」とルギが言うと今度は左のひもをひぱった。
「こっちはティッシュだ」
「妙に危ないギリギリを攻めてくんじゃねーよじじい!」
ナタネはルギの胸ぐらをつかんだ。
「なんだコレ、全然役に立たないモンばっかじゃねーか!性にしか勝てねェぞ!」
「仕方ないだろ、クリーニングに出してたんだ。中身が変わってても仕方あるまい」
「クリーニングに出してたのコレ?!中身変わってんのどう見てもクリーニング屋の主人の趣味じゃねーか!」
「まぁ労わってくれたと思えば安いものじゃろ」
「どこ労わってんだァ!」




