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黒い悪魔に

軍人1)「第3部隊が不明な4名によって壊滅的にやられています!」

その報告はグリズ、ウォナ。二人の耳に入っていた。

グリズ)「エルドは何をしている」

軍人1)「…高みの見物だといい」

「眺めているというわけか」

「変わらないねー、昔から」

「第1軍を入れよ」

「あれ、出しちゃうの?」

「第3軍よりもこっちの方が戦いがいがあるだろ」

グリズは戦闘の聞こえる下を覗き見る。

「あの4人。切りがいがありそうだ」


ペルロ)「ここには…もう…いなさそうだな」

シャル)「行きましょう。」

シャルが飛び込む瞬間見えた赤く血塗られた牙。

ルギ)「待てシャル!」

シャルはルギたちの元に戻り、牙の主を見つめる。

ナタネ)「あれは……なんだ…」

黒く異彩を放つそれはどこか知っているような感覚だった。

「……この前はお世話になったね。…あれ、喋る黒い悪魔は始めてかな?」

「黒い…悪魔…」

人型の黒い悪魔に4人は戦闘態勢に姿勢を整える。

「そんな顔しないでよ、とってもとっても心外だ。」


「第1軍がやられました!」

グリズ)「なんだと!」

ウォナ)「っ?!」

「それも…黒い悪魔にです!」


黒い悪魔)「僕は今日君たちを救いに来たんだよ。…その顔、どんな風の吹き回しって顔してるね。まぁ驚くのも無理はないよね。君たちが来たところでこの王国は滅ぶことがわかっていたんだよ。ある一人の少女の予言でね。……もうこの先に獣はいない。ある一人の男が言ったのさ。この王国にはもう戦い価値も、守る価値もないと」

ナタネ)「…そうかよ、だがすまねェな。俺たちには会わなきゃいけねェ人がいるんだよ。金髪のぼっちゃんにな」

「あ、その人知ってる。ダールちゃんのことでしょ?あの子も可哀想だよね。こんな王国の奴に生かされちゃうなんて。獣になって何もかも忘れた方があの子にとっては安泰だったろうに。…ここに来た時と顔つきは変わらないよ。爺さんの話をよくしてたね。盗み聞きだったけど、まぁよく思ってくれる町長さんだったって」

ペルロ)「…その町長さんとやらに頼まれたんだよ。連れ戻して顔見せろってな」

「あ、そうなの?それは俺の受けた指示には入ってないや。自分たちでやってよ。俺はあの男の指示にしか動かない。獣だけは潰したんだから感謝してよね。じゃ。」

黒い悪魔その場から姿を消した。城の中に入れば、黒い悪魔が殺したと思われる獣の残骸が転がっていた。

「……おいおい、この数、全部やったっていうのか?これが本当の悪魔ってやつか」

ルギ)「ナタネ、感心してる場合じゃないかもな。」

上を見上げれば一人の人間がこちらを見ていた。

イルド)「おや、これはこれは。また珍しいものを見たね。…おっと、挨拶がまだだった。僕はこの王国の王女、イルド。」

ペルロ)「王女?どうみても男だろ」

「まぁ王女ということにしておいてほしいな。女として育てられてきた以上、そういう風にしか名乗ることはできないのさ」

「これは新しい性癖が生まれそうですね」

ペルロ)「え、そういう感じだったの君」

「さっきは良いものを見せてもらった。あの戦いっぷり。予言に合った通り、僕たちを殺せそうな勢いだったね。いやぁ誉だね。」

イルドは拍手をしながら階段を下りてくる。

「でも、戦いはお預けみたいだ。次は別の王国で会おう。あぁそうだ。君の言っていたダールは町長に別れの挨拶をしてきたみたいだよ。これが報酬。」

イルドは報酬をナタネたちに投げつける。

「……ふざけんなよ。受け取れるわけねェだろ。俺たちはまだ約束を果たしてねぇぞ。俺たちが連れ戻して、顔見せんだ。どんな面で会ったが知らねぇが、それはそれは苦しいもんだったロウよ」

「そっか貰えないんだ。なら」

イルドは燭台を投げつけて報酬燃やす。

「これで良いよね。だって、いらないんでしょ?それ」

ルギ)「……ツクヅクあきれた奴じゃな。やはり人の心もないか。」

ルギはイルドに向けて杖を振るうも、イルドの人差し指が杖に触れた途端杖は止まる。

「言ったはずだよ。次はまた別の王国で会おうと。その時戦おうよ。じゃ、待ってるから。あ、ココ滅ぶから。そろそろ出た方がいいよ」

イルドが姿を消した途端、床にひびが入り、揺れが大きくなっていく。

ナタネたちは王国から抜け出した。獣は滅び、王国は崩れた。

ヴァフの人々に王国のことを伝えれば、泣く者、恨む者は増えた。この結末に喜んだ者など一人もいなかった。町長もナタネたちに「すまなかった」と。ただそれだけを言って、空虚な空を見上げていた。

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