獣と国
グリズ)「第1軍前へ!」
ウォナ)「第2軍前へ!」
エルド)「第3軍前へ!」
王国の中では軍事演習の準備の声がする。その中、高い城の中から見下ろす瞳がひとつ。
イルド)「いいなぁ…僕も出たいね」
イルドの後ろからタオルをたたむ音がする。
ドゥバナ)「イルドの軍は負傷を負いましたからね、材料が集まるまではこのままですよ」
イルド)「材料ね……獣になる人間をそう呼ぶのはあまり好きじゃないな」
獣を従えるのは簡単なことじゃない。命を落とす者もいる。全員が全員獣になるわけではないが、貧しい国から連れて来られた者はほとんど人という者を失った。笑える話じゃないね。僕は人をこういう風にするのは違うと思った。だが反対できる勇気も、権力も、僕にはない。
「……町にうろつくのは人じゃなくて獣。この光景……僕はそこまで好きじゃない」
「そうですか。ですが人は弱いのです。だからこそ、獣の力が必要になったのです。」
イルドは振り返り、ドュバナに体を向ける。
「ドゥバナ様はさ、なんでこの国を作ったの?」
「…人のいる、活気のある町。一見暮らしやすく、幸せに見えるでしょう。ですが、どれだけ人が集まろうと、どれだけ強くても外部からの獣には勝てません。ならばいっその事、人を無くし、人よりも力を持つ獣を育てた方が良いと考えたのです」
「それは……僕は良いとは思わないよ」
「人の考えはそれぞれです。あなたがそう思うもまた悪いことではありませんよ」
「…やっぱりあなたはよめませんね、ドュバナ様」




