未来が見えるっていうのはいい気はしない
「グーリズ!」
「なんだ」
廊下でグリズを呼んだのはエルドだった。
「この王国の中で一番強いのはグリズの軍だったよな?」
「そうだが」
「ならその中で一人貸してくれよ」
「自分の軍から借りればいいだろ」
「そう思ったんだがよ、そうもいかないんだ」
「なんでだ」
「――また逃げ出したんだ、あの蠟燭が」
「またか」
「あぁ、俺の軍隊は手荒だから嫌われてるだろ?しかもアイツなら随分懐いてるだろ。だから貸してほしくてな」
「軍隊なんて優しいものじゃないだろ…アイツも、優しい男じゃない」
王国から抜け出したその蝋燭は小さな森で鳥たちとリスたちとで遊んでいた。
「未来が見えるだけで一目置かれる私の身は焦げそうだよ~」
草むらにばたっと倒れる。
「なにより軍司よりも頭がいいのが嫌だ。未来なんて見ていいもんじゃないよ。今を後悔することだってあるよ、でもこの能力、自分の未来は見えない。悲しいものだね、ほら」
蝋燭の後ろには一人の背の高い男。
「ミョム様、帰りますよ」
ミョムは静かに立ち上がると男を見て悲しい目を向ける。
「王国のお飾りなんてごめんだ」
男はミョムの前に跪く。
「ですが、あなたがいないと、未来はありません」
「その口説き文句、全然雰囲気ないよ」
ミョムは男の手を握って歩いていく。悲しい世界にまた戻る道を歩いていく。
悲しくても、悔しくても、その笑った顔を。その張り付いた笑顔を。
解くものなど、解けるものなど、今はまだどこにもいない。




