ちいさな魔法
「行かせない…絶対に行かせない!また倒れたらどうするの」
その声に。その心配に。自然と嬉しいとは感じなかった。姉に嬉しいと感じることはあったのだろうか。ローズはシャルの足首をつかんだ。雨の日の記憶が脳裏に焼き付いて離れない。
「僕はね、姉さんにたくさんお世話になったよ、だから、僕なりの恩返ししたら、この手を放してくれる?」
「な、なに言って――」
ゆっくりと姉の頭に手を乗せる。ゆっくり頭を撫でれば、姉は睡魔に落ちてしまった。手はゆっくりと離される。
「……これでおしまいだよ」
「いいのか」
「いいんだ、これで――。僕の小さな魔法だよ。明日の朝までは起きない。死ぬよりも失った方がきっとこの人には合ってる、さぁ運んで。もう屋敷を巻き込んだケンカはおしまいだ」
騎士と役人たちはシャルの声に従うように、ローズを運んでいく。
「君たちに詫びよう。詫びは旅で返したい。お願いできるかな」
ナタネ)「こんだけのコトしたんだ。ふんだくるまでだ」
「強制とは、よくないですよ」
ルギ)「詫びるって言ったのはお前だ」
「確かに言いました。でも強制的に詫びさせるのは少し意味が違ってきますよ」
ペルロ)「いよいよ脅迫罪になったぞ」
ナタネ)「うるせェ!どこのじゃじゃ馬嬢のせいでこうなったと思ってんだ」
「…まぁ、行動は早めに。とは言いますよね」
シャルと一行は満月の下、足を進め始めた。




