弟と薬
「よ、ロース」
窓を見れば鉄格子越しに見える生意気な面をしたナタネだった。
ナタネの体制は今にも崩れそうな壁から出た僅かな石に足をかけていた。
「おい、杖貸せ」
「なんじゃどうするんじゃ」
「どうするも何もとりあえずコッチに投げろ。…貸さねぇならこっからテメェの頭の上にダイブする」
「おら」
ルギは杖をナタネに投げると、ナタネは杖を鉄格子の隙間に通した。先端がうまく引っ掛かり、思いっきりの力で自分の方へ引く。
ナタネ)「オラァァァァァ!!」
ルギ)「テメェ何しとんじゃああああ!!!」
杖は見事に鉄格子を引っ張り、冷たい風がより一層ローズの頬と髪を撫でた。
「おいテメェ!人の杖に何しとんじゃ!」
「ここ若干傷入ったね」
ペルロが指さすのは先端よりも少し下の部分。鉄格子と擦れあってできた跡が残っていた。
「いいだろ、杖なんてそこら辺に落ちてるモンで足りるだろうが」
「それで足りるならわざわざ杖なんて持たんわ」
「大体杖なんてこだわってもしょうがねェだろ」
「いや、杖持った人で覚えてくれるかもしれんじゃろ」
「お前それ自分で言ってて悲しくならないの」
「…あ、ちょっとそこ避けていただいても?」
「「「え」」」
3人の目に映る、長い靴の裏。壁は見事に崩れ去り、3人は対面する。
「私、脚力持っていたの忘れてたわ」
「人間のひらめきを見事につぶしに来たな豚野郎」
「ロースじゃなくてローズだってば!!」
騎士A)「なんだ?!」
騎士B)「こっちからだ!」
ナタネ)「…おい、自慢脚力で弟のとこまで飛ばせ」
「…え」
「できんだろ、お前なら。だからその脚力、ちょっとだけ俺たちに貸してくれ」
ローズはナタネとルギとペルロを蹴り上げる。
ナタネ)「外壁からお邪魔しまーす」
脆そうな窓を蹴れば、ガラスは床に散らばる。その部屋にいたのは。
ナタネ)「届けに参りましたよ、弟さん」
「…え?」
その時、ドア越しから何かが来る気配を感じる。その足音は、扉越しでもわかるそのニオイは。顔も見たことがなかったあの人だった。
「あらら、困っちゃった。お薬届ける場所、伝え間違えたみたい」




