馬と人が仲良くなるには時間必要なのは確か。
商人かつ運び屋であるペルロの乗り物の荷台に乗って、すっかり日が昇って、攻撃的な太陽を目の前にナタネとルギは身を隠す。
「なんでこんなに熱い、なんでこんなに日が出てやがる」
「夏じゃカラな。しかも今は8月。猛暑中の猛暑じゃ」
「水あったろ水!どこにやった」
ナタネはペットボトルを探すも見当たらない。
「どォすんだよ、水ねェぞ…ルギ、どこに置きやがった」
「わしに言っても無駄じゃ。持ってはおらぬ」
「持ってはおらぬってどういうことじゃ」
「腹立たしいからそのマネをやめろ」
ペルロ)「あ、水なら、馬にあげちゃいました」
一瞬にして凍る空気。それは昨晩のこと。
「あれ、お腹すいちゃってるのかな」
中々、馬は走り出さず、見れば少しぐったりしてるように見えた。
ナタネ)「ぐったりしちゃってんじゃん、ここまで追いやるなんて、ひどいもんだなぁ」
ルギ)「新手のいじめじゃない?よくないわよコレ。愛護団体と運営元に怒られちゃうわ」
ペルロ)「愛護団体は大体わかるけど運営元ってナニ」
すると馬はナタネのポケットを嗅ぐ。
「ナニナニナニ、人のポッケなんて嗅ぐもんじゃありません、下着泥棒かテメェは」
ペルロ)「いや、下着関係ないだろ、泥棒でいいだろ」
馬は何かを見つけたのか、ポケットに鼻を突っ込んだ。
「あぁぁぁぁ!!くすぐった…ま、まて!そこは、そこは、痛い!痛い痛い痛い!!」
グリグリとポケット越しに頭をわき腹にあてられる始末。ナタネはあまりの痛みにその場で泡を吹いて白目状態になった。
「……まさか水の匂いか?」
ルギはナタネの袋からペットボトルの水を持つ。同時に馬の視線は水に集まる。
「…すまぬがコレはやれぬな。わしらの重要な食料元じゃ」
ペルロ)「…一本くらいはいいでしょ」
「ダメだダメだダメだ!!この猛暑の中水2本しか買えなかったんじゃ。この水はこれからの冒険には必要なんだ」
「どんだけ水に必死なんだよ。その水だけで話進まねぇよ」
その時、水を大事に抱えるルギを察したのか、馬は一瞬にしてルギを蹴り倒す。
「がはっ…!!」
ルギは衝撃によってペットボトルを手放した。ペットボトルは宙に舞う。少しだけ緩んでいた蓋はアッサリと開き、水はキレイに透明な空を描く。2匹の馬は舌を出し、余すことなく水を飲みこんだ。あたりを見れば殺人現場状態。
「水だけで死人出ちゃったよォ?!どうすんの、主人公終わっちゃったよ!物語おわちゃったよォ!!」
馬は2人を蹴り上げて荷台に乗せるとペルロも優しく蹴り飛ばして乗馬させる。
「いや、蹴り飛ばしたけど主人だからね?一応君らの主人だからね?」
「まぁ、馬が勝手に飲んだっていうのが正しいのかもしれません」
「お、おい、じゃあナニか?テメェとこの馬に気絶させられて、水飲まれて、水なしで次の町までカラッカラのまま飢えて、冒険が終わるのか?」
「そうなったらわしが次の主人公でよい」
「ふざけんな!誰がオメェみたいなじじいっ娘推すんだ!」
「チンピラみたいなお前よりマシじゃ!」
ペルロ)「あぁもうケンカしないでください!――魔法ちょっと使ったので町なんて目と鼻の先ですよ」
「「え」」
「ほら」
ペルロが指をさす方向にはあちこちから煙が炊き上がる町。ヘルガーが姿を現していた。




