水と魚
娯楽の町、夜の町。大きな屋敷で一人の男が、縁側に座って夜桜を楽しんでいた。中華風和装を着た男は糸目で空を見る。その時、もう一人の男が夜桜を楽しむ男に近づく。夜桜を楽しんでいた男は酒を片手に口を開く。
「――おや、これはこれは。スーダルガニアに行ってたと僕は聞いていたんだけどね」
男の後ろにいたのは「狼」の姿だった。
「――ゴルダーはいつになったら協力者を見つけるつもりなのォ?それともやっぱり僕と協力者になる?」
スーダルガニアに行っていたゴルダーは縁側に座っていた男に至近距離で背中にナイフを突き当てた。
「なぁに?僕、まだまだ遊び足りてないよ?」
そういって男は糸目で左手に酒を持ちふらふらと揺らす。その時、突き当てていたナイフは一瞬のうちに砕け落ちた。
「?!」
「突き当てるなんて心外だなぁ、僕と君は仲間でしょ?」
ゴルダーは目線を男から離さない。
「なんだぁいその目……あんまりカリカリしないでよォ」
男は立ち上がり池の水に落ちた桜を掬いあげる。
「僕はねぇ、知ってるんだよ、君が僕のこと嫌いなコト、でも、どんなに頑張ってもね、僕を殺すなんて無理だよ。だって僕、自他ともに認める――酒豪だからね」
男は池の水にその場にあった木の実を投げ入れる。木の実をヒクヒクと嗅いだ魚はパクっと飲み込むと同時に息絶え、浮き上がってくる。
「…あーあ、またやっちゃったァ。怒られちゃうかなァ?それとも……螺が新しい魚買ってくれるのかなァ?…あぁそれと、付き合いは長いんだから名前ぐらい呼んでよォ?僕名前呼ばれないと泣いちゃうなァ」
「……酒豪って名前ですか?」
「その名前もいいよねェ?でも僕の名前は、酒豪なんて名前じゃないよ?チャンと呼んでよ、李様って?」
「…死んでも呼びませんよ」
李は楽しそうにその場を後にした。ゴルダーはその場に座り、月を眺めた。




