第1話 吸血鬼お嬢様と許嫁の従者の夜
お久しぶりです、海月くらげです。
今回は主従同棲ものとなっています。吸血鬼は性癖です。とてもいいものです。
10万文字ちょっとで完結予定。ストックもある程度あるので特別な事情がない限りは毎日更新できると思います。
俺――神奈森紅が純白のベッドの上で裸のまま抱き合っているのは、同じく一糸まとわぬ姿を晒している華奢な身体つきの少女……いや、美少女だった。
白雪のように白い肌には一点のくすみもない。
腰のあたりまである長い白銀色の髪は絹糸のように滑らかな感触で、シャンプーのものと思われる甘い香りがほんのりと鼻先を掠める。
目と鼻の先にあるその少女の顔だちはアイドルに勝るとも劣らないほど整っていた。
酷く綺麗な顔に対して感情の機微は薄く、それなりに深い付き合いとなった今でも彼女の思考を読むには至らない。
だが、ほのかに赤みがさした頬を見るに興奮しているのだと一目でわかった。
それは俺も同じ……というか、こんなに可愛い女の子を抱きしめていて、そうならないわけがない。
いくら子どもの頃からの付き合いで、幾度となくこんなことをしてきた相手でも、彼女が可愛いことに変わりはないのだから。
視線を顔から下げれば、穢れを知らない白皙の肌が惜しげもなく晒されていた。
なだらかな細い首も、華奢な身体から浮き出た鎖骨も、小ぶりながらも整った形の胸も、しなやかなくびれのラインも、その下すらも――。
それなのに、彼女の顔には一切の羞恥はなく、至って平然としたままで。
しかし、それらの要素以上に俺が魅力的だと感じるのが――総てを見透かしたように俺を覗き込んでいる、深い緋色の瞳だ。
吸い込まれそうなほどの……魔性とも呼ぶべき魅力が、そこにはある。
「……紅。私、もう我慢できません」
耳元で囁く彼女の声が、理性を溶かすように染みこんでくる。
耳たぶにかかる吐息は暖かく、甘い快楽にぞくりと背筋が震えてしまう。
脳に刷り込まれたかのような反応に内心苦笑して、
「那月の好きにしたらいい。俺はそのためにいるんだ」
「無理やりは好きではありませんから。紅が嫌なら……どうにかして我慢します」
「それが出来たらこんなことになってないだろ。俺のことを気にしてるならいらない心配だ。俺は那月のためにいるんだからな」
こればかりは本心だと那月の目を見て伝えれば、彼女は軽くため息をついて、緩やかな微笑みを浮かべる。
「であれば、わかりました。準備は」
「いつでも」
「――じゃあ、いただきます」
小さく呟いた那月が首元に顔を近づけ――一瞬だけ、鈍い痛みが駆け巡ったかと思えば、それを塗りつぶすような快楽がどこからともなく湧き上がった。
反射的に那月の背中を強く掴んでいた指先から意識して脱力しつつ、肌を合わせる感覚に身を委ねる。
身体の中から大切なものが吸いだされる喪失感と、補って余りある快楽がカクテルのように混ざり合う。
「んっ、ぅ……はぁ……っ……」
水気を帯びた音に合わせて奏でられる那月の艶やかな声。
理性を脅かすそれに、踏みとどまる理由がないと知りながらも、やはり躊躇いを覚えてしまう。
やがて那月は満足したのか、ゆっくりと俺の首から顔を離して向き合い、
「――ごちそうさまでした」
恍惚とした表情で口の周りについた紅いもの……俺の血を舌で舐め取りながら、そう呟くのだ。
この姿は何度も見てきたが、やはり慣れない。
「……俺の血ってそんなに美味しいのか?」
「健康的ですので。あとは……感情的な問題かと」
「なんだそりゃ」
訳の分からない解答にそう返すと「わからなくて構いません」と平気な顔で返ってくる。
ここまでくれば、もう察しが付くだろう。
舞咲那月は人間ではなく、吸血鬼と呼ばれる想像の中にしかいないような存在――その血を引いているのだ。
初めて聞いたときは驚いたけど、今は当たり前の光景として受け入れている。
吸血鬼にとっての吸血は生命維持に必要不可欠。
正確には血液を摂取出来れば問題ないのだが、那月はある事情によって困ったことに俺の血しか受け入れられないのだ。
だから、那月が吸血鬼であるという秘密を守って俺が協力する必要があり――吸血のたびに発情してしまう那月の相手もすることになっている。
那月が首元の傷口を舐めて止血をしたところで、
「……では、続きをしてもいいですか?」
蕩けた瞳と声は、見惚れてしまうほどに可愛くて。
溜まった衝動を吐き出すべく頷いて、俺は那月と身体を重ねた。
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