003 フレンド登録
夢の中だとすぐに分かった。
いつだってそうだ。夢の中だとすぐに気づく時、いつもそこには女神がいる。
月と太陽は雲の下。僕は雲の上。
僕の前。長方形の窓がある。
窓の向こうからはこちらを除く大きな瞳。
時折聞こえる言葉の意味は分からないが、女神の言葉は耳に気持ちいい。
「私は初期設定終わってるよ、すみれ何て名前にするの?」
「私はねー、んー、考え中。ミカは?」
「ミカエル。」
「ミカエルそのまんまワロス」
「えー、でも大天使の名前だよ。いいじゃん。」
「んじゃあたしも女神にしよ、フレンド登録送るわ。 ちょっとまってねー」
「きた! え、何? ナスビー、だれ?」
「ビーナス……ユーザー名取られてたからさ」
「女神様から野菜へ堕ちてる!」
「てかミカエル男キャラにしたんだ?なんで?」
「β版の時は女性キャラがねー、アマゾネスみたいな見た目しかなかったから。 それに限定スキン引き継げるから男でもいいかなって」
「限定スキンって何だっけ?」
「ふさふさの……もみあげ。」
「いる!?」
「んーーまぁゲームだしね!」
「答えになってないかと。」
「てか今日は初期設定でやめとく? もう夕方だし。 チュートリアルは明日にしようか時間使いそうだし。 それか泊まる?」
「今日はうちのマザーがステーキを買ってくる言うてるし帰るわ。 明日またミカん家来ていい?」
「いいよー、見送るわ。 ステーキいいなぁ。 うぁ見て、空めっちゃ赤いよ!」
窓の外からの声はそこで途絶えた。
会話の内容は分からないが、どうやら天界の女神には友人がいるらしい。
起きたら周りのテントを調べてみよう、そこで情報を整理して。可能なら私も誰かと仲良くなれればいいな。
そんなことを考えながら雲の下の下の下。
色とりどりのテント中。
彩り豊かなランプの間。
布団の中に意識を降ろした。