相手の言葉を使うこと以外で彼女は返答できない
言葉を制限されてしまった。
制限された理由は聞かないでくれ。
相手が喋った言葉を持ち駒として、その持ち駒以上の言葉は使えなくなった。
同じ言葉は二度は使えず、持ち駒のなかでやりくりして、相手の質問に答えなくてはならない。
しかも違和感なく。
難しいと思うが、やるしかない。
「すきなものなにかある?」
『モナカ乗る穴にキス』
「よく分からないけど、好きなんだね」
耐えた。
「きらいなものはなに?」
『刃物、黄ニラ、七位』
「私も刃物は嫌い」
上出来。
「ほかにきらいなものは?」
『ほのかに貰い泣き』
「そうなんだね」
微妙。
「イチオシのえいがある?」
『血潮の家-ガイア-』
「じゃあ今度、見てみるよ」
そんな映画はない。
「すきなタレントいる?」
『タイルストン玲奈』
「ハーフモデルだね」
これは確かにいそう。
「これからなにする?」
『何かこすられる』
「何それ?面白そうなんだけど」
何とか会話にはなってる。
でも、先が思いやられる。