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第9話 償いとは

「所でデルシオンさん、何で私が勇者だって知ってるんですか? 誰にも言っていないんですが」


「あっ……」


 やらかした。








 誰かに揺さぶられる感覚と共に意識が戻ってくる。



「……んぁ? なんだ?」



 俺はあれから────そうだ、強くなる為に修行していたんだった。


 その途中で、神からの伝言で勇者がこの地にて冒険を始めるとの事だった。


 冒険の手助けをする為にここまで来たはいいが、そっから寝てたのか?

 

 大きな欠伸をして目を擦る。

 

 目の前には黒髪を二つくくりにし、肩にかけた女の子が居た。

 

 顔が近い、


「って!? えぇ!?」


 可愛い。

 女っ気の無い人生を前世から引き継いでいる俺には刺激が強過ぎた。



「あの、貴方は盗賊の一味ですか?」



 彼女は俺を疑いの目で見ながら訊ねてくる。



「……えっ? は? なんのことだ?」



 盗賊? どういう事だ?



「本当に違うんですか?」


「あ、あぁ俺はここが空き家だと思ってお邪魔してそのまま寝ちまったタダの旅人だ」



 嘘はついていない。


 彼女の格好、盗賊と訊ねてきた事、多分だがギルド冒険者なのだろう。


 

「つか、アンタは? 冒険者か? 依頼でも受けたって所か?」


「はい、先日から冒険者? になりました。私の名前はアセビって言います」


「アセビ……そうかアンタが……」 



 アセビ、神から聞いた勇者の名前だ。



「?」


「いや、何でもない。俺の名前はデルシオンだ。よろしくな」



 彼女は勇者とは名乗っていないようだ。

 これでは手助けに関しての話ができないぞ?

 

 俺は誤魔化す様に彼女に向けて手を出す。

 彼女はそれに応じて握手を交わす。


 俺の手と比べるととても貧弱な手だ。


 腰に下げた剣を見る、剣を振るった事はほとんど無いのだろう。


 まめや傷のない華奢な手だった。





 

 

 





 不味い、何と言い訳すればいい?


 何か、何か良い言い訳はないか?


 そうだ! 



「……神様から神託があってな、ここに勇者が産まれ落ちるというお告げを聞いてここまで来たってわけだ。神様が言うには勇者の力になれってな」



 苦しい言い訳だ。 


 しかし嘘はついていない。


 危惧するべき点は、神とは彼女も転生前に話しているだろうから、そこから俺も前世の記憶があるのがバレるかもしれない。 



「あぁ、そういうことですか」  



 俺は胸に手を当て、跪く。


 勢いで押し切る!



「神からの命に従い、我デルシオン、勇者アセビの為、あらゆる悪鬼、害意を打ち払う剣とならん! どうか俺をアンタの仲間にしてほしい!」


 

 真剣な顔で彼女を見つめる。 

    

 正直な話、死ぬ程恥ずかしい。


 何いい歳してこんな恥ずかしいセリフを言っているのだろうか。



「わかりました、よろしくお願いしますね、デルシオンさん」



 彼女は俺に笑顔を向けて了承する。


 疑いもしない純粋な笑みだった。


 俺は……こんな笑顔を奪ってしまったのか。


 胸が締め付けられる感覚と、轢いてしまったあの瞬間、彼女に近寄り必死に声をかけ、蘇生しようと試みた光景が蘇る。


 今度はそんな事はしないしさせない。彼女にむかう害は俺が全て打ち払う、絶対に護り抜く。


 これが正しい罪の償い方なのかは分からない。 


 しかし、俺にできるのはそれだけだ。 



「よろしく頼むぜ、勇者」


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