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第38話 ゴブリン討伐 3

「ねぇ、おっさん本当に大丈夫かしら?」


「急にどうしたんですか?」


 私達は今、村人達を率いてもと来た道を歩いている。周囲の警戒はユリィの風魔法によって行われているらしい。魔法とはとても便利なものだと思う、私も魔法の何か一つでも使えれば役に立てるのだろうか……


 そんな事を考えている中、ふと、ユリィは私に訊ねてきた。


「……別に? ちょっと無理させ過ぎたと思ってね、反省してるのよ」


「ふふっ」


「何笑ってんの!?」


 彼女は頬を赤らめて叫ぶ。


「いえ、いつものユリィなら、フンッ男のクセに情けないわね! って言うと思って」


「……ふん、流石に急に倒れられたら心配ぐらいするわよ」


「まぁ、あのスープにはヒカリキノコが入ってましたし」


「ん? それがどうしたの?」


「苦手なんですよ、出会った頃ヒカリキノコを食べた時に毒だ!!って言って吐き出した事があってですね」


「……ふぅん、そうなんだ」


「どうかしましたか?」


「なんでもないわ、きっと気のせいね」


 ユリィは少し間をあけて返事を返した。


 この反応、何かあるのか? 私がその事について深く聞こうと思ったその時、


「まって! 全員止まって!! 前から何か来るわ!」


 ユリィが叫ぶ。私は鞘から剣を引き抜き目の前から来る何かに備える。少しした後、遠目に馬に乗ってこちらに向かって来るのが見えた。


 冒険者だ、しかし様子がおかしい。


 鎧がボロボロで背中には矢が何本も刺さっており馬も同様に矢が刺さっている。満身創痍の状態でこちらにかけていている、何があったのだろうか。


「今すぐ引き返せ!! ゴブリンの大群が街道に陣取ってやがる!! 俺の仲間も全員やられた!」


 その叫びを聞き周りの村人達に動揺が奔る。


 冒険者が私達の目の前についた瞬間、彼の乗っていた馬が倒れてしまい彼も馬から転げ落ちてしまいそのまま気絶してしまった。


「ユリィ、早く手当をしないと!」


「わかってるわよ!! 早く彼を馬車に乗せて!!」


 倒れた彼を馬車に乗せる。傷が酷い、応急処置は出来たがこのままでは死んでしまう。


「一度村に戻りましょう、彼を手当しないと。それに彼が言っていたようにゴブリンが陣取ってるなら先には進めません」


「そうね、みんなに伝えてきてくれる?」


 私は彼女の言葉に頷き村人達に一度戻るという事を伝える。


 皆は賛成し直ぐ様方向を転換する、しかしそこで私達の目に写った光景は信じられないものだった。


「おい……儂らの村が……燃えている?」


 村から黒い煙が空に立ち上っている。


 何故? どういう事だ? もしやゴブリンが村を襲撃したのか? もしやすれ違ったのか?


 村には村から離れることを拒んだ村人達が何人か残っている。

  

 このままでは…………でも、デルシオンさんが村に居る。何とかしてくれる筈だ。


「アセビ!! 前からゴブリンの大群がこちらに向かって来ているのが分かったわ!! このままじゃ遭遇するわ!!」

 

 ユリィの声が聞こえる。完全に挟まれてしまった、逃げ場が無い。森に逃げ込むか? 駄目だ、それだと視界が悪い中村人達を守る事になる。それは至難の業だ。


 進退窮まってしまったこの状況、脳裏にこの場にいないデルシオンさんの姿が思い浮かぶ。


 デルシオンさんならどうするか…………




「ユリィ、迎え撃ちましょう」


「ホントに言ってるの?」


「背後はデルシオンさんが何とかしてくれる筈です。なら私達は目の前から来るゴブリンから村人に危害が加わらないように食い止めましょう。森に逃げても後がありません、ここで戦うんです」


「……わかったわ、見せてやろうじゃないの! 私達の力を!」


 まずは、全ての馬車で道を阻むように横に並べ、その後ろに村人達を避難させる。


 ユリィには馬車の上から援護して貰う。


 私は馬車の後ろにゴブリンが行かない様に馬車の前で全てのゴブリンを受け持つ。

  

 不思議と剣の柄を握る手は震えていない。


 昔の私なら手の震えが止まらず心臓の鼓動も高く波打っていただろう、しかし今の私は落ち着いている。


 デルシオンさん……必ず皆を救ってみせます。


 勇者の名にかけて。










「……ここは?」


 目を覚ますと宿屋のベッドで横になっていた。


 身体を起こし、辺りを見渡す。机の上に紙が一枚置かれており、手に取る。


 アセビからの伝言だ。どうやらもう出発したらしい。そして、何人か村に残っているらしく俺にその人達の護衛を頼むという内容だった。


 まぁユリィも一緒にいるだろうから心配は無いはずだ。


 ギシ、ギシ、ギシ


 ……足音か? 扉の向こう側の廊下を誰かが歩いている。音からして子供か?


 ギシ、ギシ、ギシ


 足音はどんどんこちらに近付いてきている。


 しかしよく子供を置いていく事を勇者が許したものだ。それほど信頼されているのであれば嬉しいものだ。


 ギシ、ギシ、ギシ


 足音は俺のいる部屋の前で止まった。何か用でもあるのだろうか?


 俺は扉の方へと向かい、取っ手を掴もうとしたその時、




「グギガャゲゴ」



 人間の声では無いナニカの声が扉の向こうから聞こえた。


 扉を蹴飛ばし、そのままの勢いで人間ではないナニカの頭を掴み、壁に叩きつける。


「グゲ!?」


 緑色のゴムの様な肌に醜悪な顔、ゴブリンだ。何故ゴブリンがここに? 頭を掴む手に力を込めてゴブリンの頭を潰す。


 一度部屋に戻り、壁に立て掛けてあった大剣を担ぐ。そして、窓から外の様子を伺う。


「これは……?」


 村のあちこちに火が回っており、村の中心に残ったのであろう村人達がゴブリンに捕まっている。


 ゴブリン達の数が相当多い、一体どこから湧いて出たんだ? 


 窓をあけて飛び降り、降りた先に数体のゴブリンが居たが構わず広場に突っ込む。


 ゴブリン達が俺を止めようと目の前に立ち塞がるが、大剣を我武者羅に振るい道を切り開く。


「大丈夫か!!」


 俺は中央に辿り着き村人達を庇う様に前に立つ。


「あ、あぁ、ぼ、冒険者様……!!」


「安心してくれ、もう大丈夫だ」


 大丈夫だという言葉、安心させる為に咄嗟に言ってしまったが余りにも無責任な言葉だと思う。


 ゴブリン達に囲まれている今の状況、この場にいる村人達全員を救う事が出来るのかと言われれば難しい、だがやるしかない。勇者に託されたんだ、ここで弱気になってどうするんだデルシオン。


 大剣を構えて周囲を見渡す。辺り一面ゴブリンだらけ、そんな状況だが緊張は無い。勇者からの信頼に答える為にも、ここで負ける訳にはいかない。


「……さぁ来い、全員まとめて相手してやるよ」

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