第24話 土葬屋 6
24話目投稿しました!!
土日に2話は投稿したいと考えています!
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どれくらい経ったのだろうか、ユリィは随分前に魔力がきれて倒れてしまった。
何体くらい倒したのか、倒しても倒しても周囲を取り囲むアラクネイヤの群れは減らない。
今私が立って剣を振れているのは何故か、勇者としての務めを果たすため? それともまた別の理由?
分かるのは、ボロボロにされた状態でいつ倒れてもおかしくない、しかし、心の中にある一本の支柱に寄りかかりながらも立っているという事だ。
握る剣を見ると酷く歯こぼれし、いつ折れるか分からない。まるで今の自分を表しているかのようだ。
「フフッ、ユウシャトイッテモソノテイド、コレハスグホロボセソウネ」
滅ぼす、何を? この世界を? させない、私は頼まれたんだ、神様に、この世界を救えと。
だが、その気持ちとは裏腹に身体は全くその場から動けない、気を抜いてしまえば倒れてしまう、私は剣を地面に突き刺し身体を支える。
「ジャアトドメヨ、サヨウナラ」
周囲に土の塊が大量に形成され、槍の形に変化する。
矛先は私達。
これで、終わり? 何も出来ずに、前世と同じように理不尽に殺される?
私は歯を食いしばり、脚に、力を込める。
槍が私達に飛んできた瞬間、私は残った体力を使い、ユリィを抱えて横に飛ぶ。
槍は回避出来たが状況は変わらない、でも、それでも、
「こっちよ!」
命を繋ぐ事は出来た。
声のする方を見るとそこに怪物はおらず、森の奥には金髪の少女が呼んでいる。
私はユリィを背負い走り出す。
死ねない、死ぬわけにはいかない、走れ、走れ、走るんだ!
「隠れて!!」
私が金髪の少女の目の前に付いたとき、私は彼女に草むらの中に押し倒される。
私達を追いかけていたアラクネイヤの足音が遠ざかっていく。
「よかった、無事なようね」
目の前の少女はほっとした表情を浮かべて、
「私の名前はウァイブリッシュ、ノームリア・ウァイブリッシュよ。近くに私の住む屋敷があって、そこなら見つからないから案内するわ」
「すみません、お言葉に甘えさせてもらいます。私の名前はアセビです、この子はユリィです」
「よろしくね、じゃあついて来て」
彼女を先頭に、ユリィをおんぶしながらついて行く。
彼女は迷うことなくどんどん進んで行き、少しして古びた館が姿を現した。
月明かりに照らされて壁の様子がよくわかる。
壁には蔦や苔等の植物がびっしりと生えており、何年も手入れされていない事が分かる。
そして館の庭には黒い木が何本も生えていた。
これが依頼者が言っていた木なのだろうか?
私がまじまじと木を見つめて立ち止まっていると、
「ちょっと、そんなの見ても意味ないわよ。早く中に入りなさい」
とノームリアさんは言って館の中に入って行く。
「わかりました」
私は返事をするとその木の周辺に生えている黒い草を何本かむしり取り、懐の中に入れた。
館の中は暗く、月明かりが窓から差し込む程度、内装は綺麗に清掃されていたら美しいのだろうと感じるシャンデリアやインテリアが飾られている。
螺旋階段で二階に上がり、部屋へと案内される。
その際、ベランダの椅子に座る男の人の姿が見え、
「パパ、ただいま」
ノームリアさんは語りかけた。
しかし返事は無い。
「月を見るのが好きだから気付いてないみたい。気にしないで」
「この部屋を使ってね」
私達は2階の突き当たりの部屋を貸してもらうこととなった。
「ありがとうございます」
私は感謝を述べてユリィをベッドに寝かせる。
気持ち良さそうに眠っており、見てるだけで眠気が誘われる。
「飲み物はいかがかしら? 何があったのか聞きたいし、どう?」
その言葉に頷き、私は彼女についていく。
一階のロビーに古びたテーブルと椅子が置いてあり、腰掛ける。
「少し待っててね、淹れてくるから」
そう言うと彼女はその場を後にした。
やばい、意識が朦朧としてきた。敵がいないという事に安心してしまったのかどっと疲れが襲ってくる。
少しだけ目を瞑り、考える。
この森、そしてこの館は一体何なのか。
情報がなさ過ぎる。
ノームリア・ウァイブリッシュ、何故彼女はこの森の中で迷うことなくここに辿り着けたのか。
でも、そういう能力があるのかも知れない、何故私は恩人を疑っているのか、不義理な事では無いのか?
「持ってきたわ、さぁ話を聞かせて頂戴?」
目を開くといつの間にか彼女が帰ってきており、目の前にえらくボロボロで欠けているティーカップが置かれ、何かが注がれる。
彼女を疑うなんてとんでもない、嫌な考えはもう辞めよう、私はカップを持ち匂いをかぐ。
紅茶の良い香りとその中に別の匂いが混ざっているのがわかる。
私はカップに口をつけ飲み干したが、味なんて考える暇が無かった。
紅茶とは別の匂い、嗅いだことがある、どこでだ?
ついさっき嗅いだことがある嫌な匂い、思い出せ。
そして、思い出した。思い出してしまった。
私が入る前に採取したあの草の匂いだ。
魔草と呼ばれる草だ。
急に手に力が入らなくなりティーカップを床に落とす。
カチャンッ、とカップの割れる音がする、その音と共に身体全体に力が入らなくなり、テーブルに突っ伏してしまった。
「ノ……ムリ……ア…さん?」
意識が遠退く中、彼女の方に視線を向ける。
「おやすみなさい、勇者アセビ。次目を覚ます時が楽しみね」
悪魔の様に、妖艶に微笑む彼女の姿が見えた。




