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第19話 土葬屋 1

19話目投稿しました!!


 20話目は明日に投稿すると思います!!


 面白かった、続きがみたい!! と思ってくれる方は是非ブックマークお願いします!!

 私の名前はユリィ・ペールシック。

 元々貴族の生まれで、何不自由の無い生活を送っていた。


 幼い頃から第4元素魔法を使う事ができ、両親や親戚からは神童と呼ばれ、持て囃されていた。


 私は両親が褒めてくれるのがとても嬉しかった。


 もっと褒めて欲しい、もっと認めて欲しい、あの時の私は、いや、正確には今もだが、自己顕示欲におぼれていた。


 そんな中、私には一つの能力があることを自覚した。


 “その日の気分によって魔法の威力、操作性が変化する能力“


 弱気のときは威力が全然上がらず、機嫌が悪いときは操作する事が全く出来ない。


 反対に機嫌の良いときは細かな操作もでき、強気のときは威力が通常時より何倍ものの威力になる。


 幼い時の私は全く持ってそんな能力を気にする事は無かった。


 ただ褒めて欲しかっただけで魔法の練習を重ねた。


 しかし、ある時から魔法を使える事が、上手くなる事が当たり前だと思われてしまうようになった。


 それもそうだろう。メキメキと上手くなって行くのをみて両親はそれをいちいち褒める事が無くなったのだ。

 

 ペールシック家の子供だから、貴族の子供だから。


 そこから私は魔法を練習する意義を見いだせなくなってしまった。


 親に魔法学院に入学させて貰ったはいいが、褒められる事の無くなった私は真面目に授業を受けず、勉強する事もせずにただただどうしたらまた褒められるかと言う事を考える日々を過ごしていた。


 しかしそんな生活を続けていると性格も陰鬱になってしまい、クラスの生徒から嫌がらせを受けるようになっていた。


 そして私の能力のおかげでどんどん魔力の威力、操作性は落ち、その結果、同期の生徒には魔法の腕で負け始め、学力も落ちていき、最終的に落第してしまった。


 親からはこれまで聞いたことのないような罵倒を受け、喋りかけられる事が殆どなくなってしまった。


 私は、どうしたらいいかわからなくなってしまった。


 私の唯一の生き甲斐であった、褒められる事が二度と叶わなくなってしまった今、どうすればいいのか。


 考えていた所にふとあるチラシを目にした。


 それはギルドからの冒険者募集のチラシ。


 最高ランク5になれば国家の最終兵器とも呼ばれ、名誉ある称号を手に出来る。


 あの時の私はこれしか無いと思った。


 両親だけじゃない、親戚や知人、知らない人からも凄いと、褒めてくれ、認めてくれるものは。


 私は荷物をまとめて家から出ていった。


 冒険者ギルドでギルド登録を行い首都であるギルドガンドから一番離れた都市、イーストで冒険者活動を始め、最初は薬草採取や手頃な魔物討伐を行って日々生きる為の金を稼いでいた。


 足りなくなれば家から持ってきた高価なアクセサリーなどを売って生活費の足しにした。思い出の品だったが関係ない。


 そして2ヶ月後ランク2に昇格する事ができ、ギルドからも認められるようになった。


 流石にそこからはソロは厳しいと判断してパーティーメンバーを探していたところ、あるパーティーに声をかけられた。


 それはランク2の中堅パーティー、魔法使いが必要だがランク2の魔法使いがイーストにはいない為困っていたらしい。


 私は喜んで彼らの仲間になり、直ぐに活躍出来た。


 彼らは私の事を褒めてくれて認めてくれた。


 とても嬉しかった。その嬉しさが溢れ出んばかりに私の魔法の強さは向上していき、これなら直ぐにランク3になれるとパーティーメンバーも喜んでくれた。


 結構な月日が経った後、ある一人の青年がパーティーに加わる。


 それはアルギネス、元々同じクラスだった奴だ。嫌がらせの主犯格、私の最も苦手な人間だった。


 私はパーティーメンバーに魔法学院に入学して退学したと言う事を黙っていた為、彼がパーティーに加わる事を嫌と言えなかった。


 そして、彼は見えないところで私に嫌がらせをするようになった。理由は私の事が嫌いだからだろう。


 パーティーメンバーに相談しようと思ったりもしたが、もし私が弱いということを知られてしまえば抜けさせられるかも知れないと思い、ずっと耐えていた。


 が、そんな日々が続くと私の能力により魔法の調子が悪くなっていき、酷いときには使うことすら出来なくなってしまった。


 そして彼はパーティーメンバーに私の過去を言いふらし、そのまま追放されてしまった。


 金や装備品も全て没収され残ったものは何も無かった。


 残ったのは学院時代使っていたボロボロの杖だけ。


 そんな中、裏路地で途方に暮れていたとき、師匠に出会ったのだ。


 師匠の名前は知らない、だけども師匠は私に衣食住を与えてくれて私の魔法を褒めてくれた。


 師匠は私の知る限りでは普通の薬師だ。


 身体が弱く病気がちな師匠の代わりに薬の材料を採取する日々、私の望んだ生活ではなかったがそれでも、必要とされているという実感が沸き嬉しかった。

 

 その日から私は“アタシ“に変わった。


 性格をトゲトゲしたものに変えて少しでも魔法の調子をあげようと試みたり、様々な努力をした。


 最初の方は良かったが、次第に使える魔法がどんどん少なくなっていき、今では炎属性と風属性の2種類しか使えなくなってしまった。


 

 今回も……あの子にバレてしまった、また追い出されてしまう。


 嫌だ、もうアタシを、私を拒絶するのはやめて……


 気付けば暗い森の中、一人でうずくまっていた。


 いつの間にこんな所に……


 辺りを見渡して見てもキャンプ地の光は見える事はなく、木々が生い茂っているだけだった。


「灯り火」


 私は掌に炎を起こし光源にする。


 不味い事になった。

 

 ガサガサッ


 何か、大きなモノが動く音が聞こえた。


 そちらに炎を向けてみる。


「アラ? ウフフッ、ドウモ」


 真っ白で巨大な蜘蛛が、目の前に姿を現した。


「ヒッ……」


 声を手で抑える。


 何なのだこいつは? 


 やばい、どう見ても勝てない。これが事件の真相?


「ソンナニオビエナイデ? ナカヨクシマショウヨ?」


 ドスン、ドスンと大きな足音を響かせながら、こちらに近付いてくる。


 そして蜘蛛の身体の上に美しい人間の女性の上半身がくっついているのが見える。


「……アラクネイヤ? うそ、大き過ぎる……」


「アハッ、アラクネイヤ、ソウヨ、デモチョットチガウカシラ。ワタシハマオウグンシテンノウノヒトリヨ」


 魔王軍ですって? 何でこんなところに!!

 

 16年前に撤退したんじゃ……


「ネェ、アナタニモワタシノコドモヲウンデホシイノ? オネガイ?」


 蜘蛛の身体の口から細い管がこちらに伸びてくる。


「嫌……いや!」


 私は尻もちを付きながら距離を取ろうと試みるが上手く下がれない。


 管は私のお腹まで来ると針を出す。


 そして私のお腹に──


 刺さることは無く地面に落ちた。




「ユリィさん!!」


 私の目の前には剣を振り抜いたへっぽこ勇者、アセビがいた。



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