第17話 天才
17話投稿しました!!
18話は明日か明後日に投稿します!
「アンタたち、アタシとパーティーを組みなさい」
「えっと、その」
「なに? 文句あるわけ? 助けられた分際で」
「いや、そうじゃないんですけど、急だなと」
「はぁ……まぁこの話は後でいいわ。まずそこのおっさんの手当が先ね、ついて来なさい」
彼女はそう言った後、進んでいくので、私はデルシオンさんに肩を貸しながらあとに続く。
「……俺には手当は必要ないぞ?」
彼はそうは言っているものの顔をしかめながら腕を押さえている。
今もなおを血を流している光景は、とてもじゃないが必要ないとは思えない。
「強がりはいいんですよ、早く止血しましょう」
「いや、だから……まぁいいか」
彼は何かを諦めたかのように肩を落とし、その後は黙って彼女のあとに続いた。
少しするとボロボロの一軒の小屋を見つける。
「ここよ、さぁ入って」
彼女は扉をあけて中に入っていく。
「ん? ここは?」
「デルシオンさん? どうかしましたか?」
「依頼者の家だ」
そんな偶然もあるのかと思いながら私達も中へと入る。
入った瞬間、様々な薬品の匂いと、薬草の匂いが混ざり合って鼻をつく。
中は床に色々なものが散乱しており、足の踏み場が無く、奥にはテーブルと大きな釜が置いてあり、一人の腰の曲がった老婆がテーブルに置かれた何かの材料を入れてかき混ぜている。
「イッヒッヒ、ユリィ、帰ったのかい? 例のアレは採取出来ただろうね?」
「無理よ無理、その草って迷いの森にあるんでしょう? 嫌よ、いくら天才魔法使いのアタシでも一人だと帰れなくなるわ」
「そうかい、それは残念だねぇ。ところで後ろの二人組は? やっとパーティーを 組めたのかい?」
「そんなところよ、家の近くでキモい蜘蛛に襲われてたから助けてあげたわけ」
彼女は帽子を外して放り投げる。
その帽子は地面には落ちず、ふわふわと浮いて扉近くの帽子掛けに自ら掛かる。
栗色のボブショートの髪を揺らしながら、彼女は手をさっと振る。
すると床に散乱していた本や薬品が先程同様浮き、自ら元あった場所へと向かう。
「またこんなに散らかして、師匠、整理整頓って出来ないの? はぁ…………。あ、忘れてたわ、腕を見せなさい」
デルシオンさんは腕を見せる。
「は? キモ、生えてきてるんですけど、何か使ってんの?」
彼女の言葉を聞き、私も彼の腕を見る。
血は止まっており腕の肉がグニュグニュと動き何かが少しずつ生えてきている。
「デルシオンさん、これは?」
「あぁ、これは俺の能力だ」
「常時発動する再生魔法ね、しかもちょー強力な。初めから言いなさいよ」
「まぁ強力な代わりに光魔法とポーションの回復は出来ないからな。そうだ婆さん、あんたギルドに依頼をしていただろう? それを受ける為に詳細を聞きに行くところだったんだ」
「イッヒッヒ、受けてくれるのかい? ありがたいねぇそれは。じゃあまず、採取してきて欲しい薬草の名はハッセイ草、で生えてる場所は──」
「この依頼、無かったことにさせて頂きます」
「デルシオンさん?」
彼は最後まで話を聞かずに断った。
「ハッセイ草、それは薬草なんかじゃねぇよ。魔草だよ魔草」
「魔草?」
「あっ、えぇーと、そうだな、摂取したら凄く気持ちよくなれる草だ。まぁ国でも禁止されているものだな」
日本で言う麻薬だろうか? そんな危ない物の採取を?
「まぁ最後まで話を聞いておくれ、これも運命の導きというもの。わたしは未来を朧げながらだが見る事が出来る、そこで、わたしが作る薬は今後の冒険で必ず必要となるのじゃ」
「…………なるほどな、わかったよ婆さん。場所を教えてくれ」
デルシオンさんは受けるようだ。さっきまでは駄目だと言っていたのにこの手の返しようはなんなのだろう。
「場所は迷いの森の奥深く、真っ黒な木の近くに生えている筈じゃ」
「うーん、今はランク3以上の冒険者同伴じゃないと立ち入り禁止だぞ?」
「大丈夫じゃ、ウチのユリィはランク3、連れて行くがよい」
「ちょっ! 勝手に決めんな師匠!!」
「そうか、よろしくなユリィ。俺はデルシオン」
彼は名乗る、私もあとに続く。
「私はアセビといいます。よろしくお願いしますね」
「クッ、勝手に決めやがって……まぁいいわ! アタシの名前はユリィ! 天才魔法使いよ! 天才であるアタシがついていく事、泣いて感謝なさい!」