第16話 蜘蛛
16話目投稿しました!!
もうちょっとテンポ速くしたほうがいいのでしょうか?
流石に遅すぎるかも……
17話目は月曜日投稿します!
「少し話を聞きたいんだがいいか?」
「へ? なんだあんたら?」
私達はその後、店を出た彼に話しかけた。
彼は片目を包帯で巻いており、怪我をしているようだった。
「なるほどな、あんたらも冒険者なのか。悪いことは言わない、あそこには近付かねぇほうがいい」
「何があったんだ? ランク4の冒険者も行っていたのだろう?」
「……あそこは地獄だ。ランクなんて関係ない、どんなに強い奴でも死んじまう……俺はあの人たちのおかげでここに居る。こんな俺を逃してくれたから……」
「地獄? お前、店で蜘蛛と言っていたな? アラクネイヤの事ではないのか?」
「……あれはそんな生易しいものじゃねぇよ、あれは人という種族が逆らうことが出来ないナニカだ」
目の前の男は震えながら語る。尋常ではない震え、それほどまで恐れるナニカがいるというのか、その迷いの森には。
「詳しく聞かせてくれないか? どんな生物なのか」
「あぁ……それはなまず──」
説明しようとした、その時、
「あ、ぁあ? そうかぁ、あのときかぁ? くそぉ、せっかくにげれたのにぃ、あいつらをぎせいにしていきのこったとおもったのにぃ!!」
彼は包帯で隠された左目を押さえながら意味不明なことを言い始める。
「せつめいするよりちょくせつみせたほうがはやいなぁ、みてくれぇ、これがやつらのしょうたいだ」
包帯を解いていく。
異様だった。
解いたそこには眼球があるはずの場所には何もなく、その中、そして周りにびっしりと真っ白な蜘蛛が蠢いている。
「これだ、これだよ! これがじごくのしょうたいだ!! アハッ、アハハハハ!!!」
男は狂ったように笑った後、操り人形の糸が切れたように、そのまま後ろに倒れてしまった。
そしてその目から数え切れない程の蜘蛛が這い出てて、確実に私達に向かって来ている
「ッ……!? さがれ勇者!!」
デルシオンさんは私を強い力で後ろへと押す。その瞬間、彼の腕に物凄いスピードでその蜘蛛達が飛びついた。
「くそがぁ!!」
懐から短剣を取り出し、自らの腕を切り落とす。
「逃げるぞ!!」
彼は短剣を投げ捨て、私の腕を掴むと人通りの少ない裏路地に逃げていく。
「とにかく一般人の居ないところまで逃げるんだ!! あれがもし接触によって繁殖するなら街中大混乱だ!!」
黙って彼に腕を引かれる事しかなかった。
今の一瞬で状況を判断して、触れてしまった腕を切り落とし、人の居ない所へ逃げる。
経験だろうか、あの一瞬でそこまで考えて動く、私には出来無い。
振り返るとあの蜘蛛たちは私達を追いかけている。
捕まれば彼のようになってしまうのだろうか。
「デルシオンさん! 止血は!?」
「大丈夫だ! すぐ治るから! 気にせず逃げることだけ考えろ!!」
裏路地に入り、入り組んだ道を進んでいく。
そして、
「クソ! 行き止まりか!?」
私達の生を阻むかの様に家の壁がそびえ立っていた。
「まだ治んないのか!? 早くしろ!!」
彼は腕を押さえながら叫ぶ。
着々と私達の元へと近付いてくる、私は剣を引き抜き彼の前に立つ。
「おい!? なにしてんだ!! 早くよじ登れ!!」
「それでは貴方は!? ここで死ぬって言うんですか!?」
「俺の心配はいい!! 早く行け!!」
「嫌です!! 私は勇者として貴方を見捨てることは出来ません!」
「馬鹿野郎!! 勇者勇者って勇者の務めがそんなに大切か!?」
「……」
その質問に答える事は出来なかった。
私は勇者の務めを果たすという神様の、
『頼み』
を遂行しなければならない。
もし、彼が推理した通りの性質を持っているのであれば私は、私達は間違いなく死ぬだろう。
それでも、引くわけにはいかない。
勇者なら、物語や神話、歴史に出てくるような英雄達はここで自分一人で逃げるという事は絶対にしない筈だ。
蜘蛛達が私に飛びかかろうとした、その時、蜘蛛達はどこからともなく発生した炎により焼かれ、炭となって地面に落ちた。
「ハァ、勘弁して欲しいんだけど。ここ、師匠の家の近くだから騒ぎを起こして欲しくないの」
向かい側の通路から誰かがこちらに近付いてくる。
汚れたローブに身を包み、頭には大きなとんがりボウシを被った女の子が手から炎を起こしながら私達に言う、
「あんたらも勇者勇者って、なに? 流行ってんの? おっさんも変にカッコつけてキモいんですけど」
残った蜘蛛が彼女に向かっていく、しかし、
手の炎が蜘蛛達を包み込み、先程同様炭にする。
「ちょっとあんたら、冒険者でしょ? 少し話しない? 助けてあげたでしょ」
彼女は不機嫌そうな顔でこちらを見てそう言った。