春、入学
これは、恋と呼べるのでしょうか。
中学生になったばかりの少女 姫莉と同い年の少年 大輝は、お互いを気になりつつも変化の無い関係でいました。
中学3年間の間で今までとは少し変わった環境にもまれるうちに、だんだんと変化していく心情や身体を描きます。
大人と子供の狭間で揺れる、幼いようで大人びた物語。
はじめまして香恋です
小説を書くのはほぼ初めてですが頑張ります。
皆1度は感じた事のある青春のようでまだ幼い、甘酸っぱい感覚を思い出して頂けたらと思います。
温い。
新しい制服に身を包んだ生徒たちの間を、桜の花びらを巻き込んで春の生暖かい風が通り抜けていく。
まるで、力を抜け、とでも言われている気分だ。
中学校に上がったと言えど、地元の公立校なのだから小学校の頃とさほど友達に変化はない。
長身でショートカットの 凛、長い髪を一つにまとめたちょっと背の低い 咲良という仲良しの2人と話をしながら、これから張り出されるクラス発表を見るため校門付近で待機していた。
ふと、後ろから視線を感じる。
ポニーテールを揺らしながら振り返ると、少し離れたところから大輝がこちらを見ていた。思わず目が合ったため、サッと目線を外す。特に用事もないのに見つめられては嫌だろう。
大輝とは小学校から同じで、その整った顔に今まで何人の女子が射止められたのかもはや分からない。
私自身も好意を抱いていた時期があったが、叶わぬ恋をしていても楽しくないので諦めた。
そんなふうにして暇を潰していると、初めて見る先生たちが丸めた大きい紙を持ってこちらに向かってきた。そろそろ発表のようだ。
張り出された紙を見ながら、私たちはそれぞれの教室へと入っていった。
…後ろから2番目。
毎度の如く五十音順にはうんざりしている。最初の席順だけでなく、スポーツテストや健康診断までこの順番なのだから困ってしまう。
毎年、次のクラスの先頭とまとめられるか最後に余り1人で走るかのどちらかなのだ。
そして仲の良い友達が3人以上同じクラスだった事も無い。例のごとく今年も友達とは離れてしまったようだ。
後ろの席は出席番号が最後でお馴染みの 栞莉だった。偏りを避けるため成績の良い私と栞莉が同じクラスになる事はほとんどないのだが、今年は例外だったようだ。文武両道で有名な彼女だが、唯一出席番号だけは絶対に1番になれない。
今年は同じクラスだね、と特に面白味もない会話をする。
どうやら仲の良い優介も大輝も同じクラスのようだが、特に話すこともないので声をかけなかった。
まだ入学式を終えたばかりの新入生。
あんなに複雑に絡み合うことになろうとは、知る由もなかった。