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4話『十人の戦士達』


咆哮が大地を轟かせる。


体にも心にも掛かる重圧に耐え兼ねる。


此処を、世界を、戻そう。


────戻さなければ。




落ち着け、落ち着け、落ち着け落ち着いた。

あくまでここはゲーム。いつぞやのログアウトできないゲームみたいになるわけでもない。此処の死が現実の死に繋がるように成った訳でもない。

危険になる前に逃げれば俺の勝ち。大丈夫。


能力(スキル)解放。」


どう近づくか。俺の能力は接近して最大威力(クリティカル)になってこその攻撃。つまり反撃・防御されては意味を為さないのだ。


能力(スキル)解放。【爆速(ブースト)】!!!!!」


「!?」


緋奈稀の隣を先の爆風にも負けぬ風が通り抜ける。

卓海。

そうだ、忘れていた。卓海は、俺が守ってやるような()()()()()()()()()()()()


「なぁあにしてんのヒナキちゅわん、俺が先に採っちゃうよ?」


「……負けない」


燃える。燃えた。そう、緋奈稀がゲームで対抗心を燃やさない筈がないのだ。


「あーあー、突っ走っちゃって、………………アイツらに続かねェのォ?」


長身の男が周りにわざとらしく呼びかけると、周りははっとしたのかそれぞれに能力を解放した。


続く猛攻撃。衝撃波、蹴り、魔術、竜、銃撃。ほぼハイレベルプレイヤーで構成される技の数々。



相手のHPは減って削られて擦られて……………そうやって────。


()()()()()()()



これだけの猛攻撃を受けて尚、化け物は生きていた。その強靭な防御と強大な体力。おまけと言わんばかりに瀕死状態になると全回復を果たす。

対して此方は迫りくる無数の手の攻撃をかいくぐっての攻撃だ。しかも手に当たると一回の攻撃量が凄いし持続ダメージまで負っていく。回復ポーションは限られてるし、そも強い回復師(ヒーラー)が中々居ないことも事実だ。





そうやって、丸五日が経った。之は世界的なニュースに成ったことは事は言わずもがな、本部も手を打つと言っているが一向にその姿勢が見れない。相当てこずっているのか。否、てこずってると言えば此方の方が大変だ。

ゲーム内では対抗軍が作られ、沢山のプレイヤーが部を取り仕切っている。主力部隊である緋奈稀はログアウトする暇すら与えられず何日も寝ていない。



しかし、其のお陰か、戦況は此方の有利へと大きく傾いていた。

撃って撃たれて撃って撃って撃って撃って撃たれて撃って撃って撃って撃って撃って撃って撃って撃って撃っ────────。

夥しい弾丸の雨。相手のHPは底をつきかけて居た。


「隊長!魔力砲の充填が完了したとの連絡が入りましたっ!!」


「ん、分かった…後の指揮は副隊長に任せるから、僕は最後の叩き込みに主力班の所へ向かうと伝えて」


「はい!」


伝達係にそれだけ伝えると足に魔力を溜めて戦場を掛けた。化け物を倒すために。


『合流できそうですか?緋奈稀』


『うん、そっちはまだ耐えれそう?』


『戯け、我らを馬鹿にするのも大概にするがよい』


『………』


『ってことで準備万端でーす………!』


『さっきからサ、うだぐだ五月蠅いよ。そんな事よりそろそろだと思うんだけどそんなことにも気づかないのかな?頭に脳みそ詰まってる?あ、ごめんごめん、詰まってない人にしゃべりかけても無駄だよね、失敬失敬』


『何言ってンのかイミフでわけわかめわにわにパニックなんですけどぉ~』


『………はぁ…』


主力班はこんなに強いのに何故訳の分からないことばかり言ってる奴らしかいない。【念話(テレパシー)】を無駄に使っている気がしてならない。緋奈稀は相手のHPが僅かになるところを見ながら移動する。相手は残りHPがギリギリになると攻撃を緩め回復に向かう。

────────今。


『主力班含め全軍に通達。怪物に最大攻撃をぶち込め』


それぞれの返事が聞こえた、自分も残りわずかで攻撃範囲内に相手が来る。

来い来い来い来い来い来い来い来い来い来。


ぶわり。


「────────。」


足が、止まる。動かない。主力班が何か言ってる。聞こえない。何かはわからない。けど、間違いなく、嫌な予感。

あの青年が取り込まれて()()()()()()()()()。その時みたいな………。

刹那。目の前で戦っていた戦士達、十人から腕が生えた。

その様子に、主力班のメンバーたちはぎょっとしたり平静を保ったり気づかなかったり攻撃を続けたり気絶したり見つめたり消そうとしたりつついたり舐めようとしたり仲よくしたり、十色の反応を見せていた。


『────────ろ!』


にげろ、その言葉すらまともに紡ぐことができず、何より彼らの耳に届くことなく、彼らは。


その腕に()()()()()()()()いった。


ぐしゃり、と体がひしゃげる。腕に飲み込まれて。その腕が、まるで体をむさぼっているように。血がぶちまけられる。汚い。こうもあっけなくやられてしまうのか。

腕が。帰っていく。主人のもとへ。


ただ。それを呆然と見ていた、ひとりの少年は。其れに立ち向かうこともできず。



其れを見詰めるばかりなのだ。




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