act6 種族差の体感
「おはよう、よく寝れたかい?」
「ああ、おはよう。すまんなベッド占領しちゃって」
「構わないよ、どこでも寝れるからね」
昨日二人と言ったのにベッドが一つしかなかったが、ここではそういうルールらしい。
ナッツが自分は椅子が良いと言った為有難くベッドを使わせてもらった。
質はあんまりよくないから寝心地的には微妙だったが……
「帝都ってところ行くんだっけ?徒歩で半日なら2時間もかからないくらいか」
「随分と早く着くのだな、やはりバイクは素晴らしい」
「そういえば、バイクってあのまま置きっぱなしだっけ?盗まれたりとかしないのか?」
「どうやって盗むんだい?あんな重い物。まず動かそうにも動かし方がわかる奴がいるのかね?
私は初めて見たとき何かわからなかったぞ、ということだな。」
「確かにそう言われるとそうか」
荷物を持って鍵をおっちゃんに返し、外へ出る
ナッツと共にバイクに跨りエンジンをかける。
キュクルルルブウウウン!
「なんだそいつぁ!?」
受付のおっちゃんが音にビビって外に出てきたみたいだ。
「乗り物です、早いですよ」
「魔道具みたいなものか?そんなもの見たことないが…。」
「先を急ぐからこれで失礼するよ店主。」
「おう、気ぃ付けてな。」
二人で走り出す
「すげー魔道具だなぁ金持ちかあの二人。」
おっちゃんが走っていく二人を見て呟く。
◆
走り出して一時間後
(この辺で銃の練習してみていい?)
(そうしようか、誰もいないみたいだし、誰ともすれ違ってもないからね)
バイクを停めスタンドを立てる。
見晴らしが良い草原で、的に出来る物も何も無いのが、少し難点か。
「ナッツさん魔法で何か的になる物とか作れないか?」
「ふむ、これでいいかな?」
ナッツが手を横に振ると1m程の氷の柱が三本一定の間隔を取って並んだ
「マジで便利過ぎじゃないですかね、俺も魔法使いたいですわ」
「昨日も話したが君には魔力が一切無いよ。」
バッサリ切り捨てられるが、気にしててもどうしようもない。使えないなら使えないでこいつを試すだけだ。目標の的から10m程距離を取り、ジャッジを取り出し的に狙いを定めトリガーを引く。
まず試すのはショットシェルだ。45口径はポケットに入れておいた。
ドン! 命中 今撃ったの散弾だしな。そりゃ当たるだろう。
その後5発全部撃ちきり一回確認する。
全発命中だ。海外で一回試しに銃を撃った事があるが、感触が全然違う。
この腕力と言うのか身体というか、反動をあまり感じない。
感触に驚いていたらナッツに言われた。
「君の前の肉体は人族つまりは人間だね。リルドラケンはドラゴンの人化みたいな種族だから身体的向上はかなりの物だと思うよ。五感も人族なぞ比べ物にならないくらい向上してるはずだね。」
「はーなるほどねぇ、人から化け物になったような物か。ある意味考え方によっては何かあっても俺のようなド素人がなんとかできるって事ならいいんじゃないかな。」
「うむ、前向きな考えだ。一先ずはその体を使いこなせるようになると良いと思うよ。」
リロード弾薬だがショットシェルが5発ポケットの中に入っていた。
どれだけ撃てるんだこれ。
「さて、バレットを試してみるか。」
バイクの後ろに積んでたバレットをスタンディングの状態で持ち的に狙いを定めてトリガーを引く。
ダキン! 命中、着弾と同時に氷の的が砕ける。流石は12.7x99mm弾だ。
「な!?」
「え?どうした?」
「壊れないようにと思って魔力を多めに構築してみたのだが、傷くらいは付くだろうと思っていたが、まさか壊れるとは思わなかった。凄まじい破壊力だなそれは。」
「そうっすね鉄くらいは余裕で貫通できる程の威力あるんですよこれ。ナッツさんも試してみます?」
「興味深いな。是非試してみよう」
撃ち方を一通りレクチャーして試してもらう
「よし、撃つぞ!」
意気込みは良いけど立った状態で発砲してしまった。
「あ!伏せないと反動で!」
ダキン!予想通り吹き飛んだ。
「このトリガーを引いたあとの衝撃はすさまじいな、抑えきれる自信がない。」
「腕とか大丈夫すかね…?、普通に肩とか外れるんですけど。」
「ああ、大丈夫だ…。私は魔法で十分だよ。」
ナッツが右肩を回すが変な動きはないし、大丈夫そうだ。
「ちなみにそれはもうひとつあっただろう?二つ持って撃てないだろうか?」
一応一個13キロくらいあるんだけど、出来そうな気がしてきたな。試してみるか。
両手にバレットを構えて撃ってみる。
ダキン!ダキン!
反動を片手で抑えるとかどこのメイドだよこれ。
「出来ますね、もしかしてドラグナーってかなりヤバい種族?」
「私も見たのは初めてだ、もう絶滅したという話しか聞いてないからね。」
「とりあえず、弾の補充とかもあまりわかってないし一回撃ち切ってみます。」
その後全弾撃ち切りマガジンを交換しようと空になったマガジンを捨てると地面に落ちた瞬間に消えた。地球にやさしいな…。
マガジンを確認するがスカートのポケットを確認するが入ってる様子がない。
体を触って探してみたらベルトの間に挟まっていたのに気づいたのは数分後の話。
その後二回撃ち切るとマガジンが出てこなくなった。ジャッジも同様だ。まだ45口径は撃ってないんだけど…。
もしかして一日の制限とかあるのか…?あまりバカスカ撃てないな。
「さて、だいぶ試せただろうし、帝都に向かってみようか。」
「そうすね、元に戻る情報を何か得られるといいんですけど。」
銃器を荷台に積みこんでバイクに跨りその場を後にした。