act2 森での遭遇
俺が目を覚ましたのは、辺り一面が木と草しかない森だった
「いやいや、落ち着け…、落下して森の中って事があ……え?」
というか誰だ、今俺の思ってる事しゃべってんの。
女性の声だよな…、近くの誰かいるのか?
「おー………ん?すごい近くから聞こえ…」
というかこの声出してるの俺じゃね?
「あーあー」
無駄に綺麗な声だ。
「って俺かよ!この声の元!」
とりあえず体を確認。
髪長い、手細い、胸デカい、大事なとこない
だめだ、おかしくなったかもしれん。
完全にキャパシティオーバーだ。
後ろで音がする。
「さっきから奇怪な行動をしてるが大丈夫か?」
声をかけられた、エルフの女性
腰まで届く綺麗なブロンド、すげーイメージ通りなエルフっぽい服装、残念ながらスカートじゃなくロングパンツだが。冒険者が肩にかけるようなリュック
その場で俺の脳処理が止まりフリーズした。
「本当に大丈夫か?」
エルフの女性が手を振る、固まった人に、おーいってやる動作をやってくれた。
「あ、はい。たぶん大丈夫っす。」
俺はそう返事をする。
これあれか異世界転生ってやつ?でも記憶はあるし転生ってより転移って奴なのか?
俺の趣味は小説とゲーム、バイクにキャンプだ。
会社の休み時間暇つぶしに小説を読んでいた事があるが、それっぽい。
「ならいいが、これは君の持ち物か?見た事がないのだが、触ってもいいだろうか?」
俺のバイクを指で差し、そう聞かれる。
まぁ見せた所で減る物じゃないが、盗まれると困るな。
本当にここが異世界っていうのであれば用心に越したことない。
大体最初はひどい目にあったり特別な能力系や魔法がなければ騙されてというのがオチだ。
とは言え防衛手段はないし、どうしたものか…。
そう考えていると、そのエルフはいきなり俺のバイクを触りだした。
返事すらしてないのに、いきなり俺の相棒に手を出した事が勘に障る
「ああ、すまない。私は盗賊でもないし、単に見た事もないから、興味があっただけだ、盗む気は更々ない。ここが君にとって異世界というのはたぶんそうなのだろう。この様な物を私は見た事がない。
ちなみにその能力とやらはよくわからないが、魔法なら使えるぞ。」
ん?こいつ今俺が考えた事全部言い当てたし、魔法が使えるだって?
いきなりヤバい奴に会ってしまったんじゃないか…?
これで相手が襲い掛かって来たら完全にゲームオーバーな気しかしないぞ…
「言っただろう、盗む気はないと。あと襲い掛かる気も毛頭ない。本当に興味があっただけだよ。
証明はできないが、そうだな魔法を見せれば少しは信じて貰えるかな?もちろん君に被害が無いように、軽い魔法をその木に当ててみせよう。」
と言った後、彼女の手から野球ボール状の水が湧き出て凄い速さで木に命中した。
メキメキメキと音がして木に野球ボールくらいの大きさの穴が空いた。
おおすげぇ…まじで魔法だ…、詠唱とかいらないのか、俺も使ってみたい。
というかエルフとかって確か森とかで暮らしてるんだよな。そんな環境破壊的な事をしていいのか…?
「君から魔力が一切感じられないから、恐らくその様子だと魔法は使えないかもしれないね。
それと私は追放されたエルフだ。珍しい種族の君を観察…もとい、放って置けないと言ってもいいかな。もう少し別の見せ方でもよかったかもしれないがね。」
と笑ってくる。珍しい種族ってなんだ?。多分声のアレからして女になってしまったみたいだが
一体どんな種族なんだよ・・・?
「すんません、俺の種族ってなんですか?」
「ああ、リルドラケンという種族だね、ただ私も本物を見たことがないので断言はできないが、そうだ、君の腕から肘辺りを触ってみるといい、鱗があるだろう?あと耳が角になってるはずだが。」
「まじで角も鱗もある、人間どころかこれじゃモンスターじゃないか。」
信用していいのか悪いのかわからないが、どのみちこの後どうすればいいのか検討もつかない。
ここは頭を下げて助けてください!お願いします!と頼めばいいのか
隙をついて逃げ出せばいいのか、どうすればいいんだ………
だが情報は欲しいし、一応誠意?を見せてくれたのでお願いするしかないな。というか、魔法センスないのかよ…
とりあえず思考を読むのはやめて欲しいが。
「私の名前はリゼルト・エスナッツだ。思考を読み取るのはすまなかった。癖なようなモノでね、これのせいで追い出されたというのに。ハハハ」
なんか軽いというか、まぁいいや
俺の名前は渡鳥水輝なのだがここは異世界だし別の名前を考え━
「ふむ、ワタドリミズキって名なのだね。私の事はリゼルと呼んでくれ。こちらこそよろしく頼むよ。」
と手を差し出してくる。
くっそ!また思考を読まれた!この人に隠し事が出来ないな…。
名前そのまま言われるのもアレだしミズキって呼んでくれりゃいいか。
というか何か少しムカつくし呼び方をリゼルじゃなくてナッツって呼んでやる…。
どうせ豆しか食べないんだろう、エルフは草食って聞いたしな。
「ミズキでいいのだね、ちなみに私は豆が嫌いだ。その呼び方で呼ぶのなら嫌味を少し兼ねてて面白い。
それと残念ながら草食ではないぞ、村は掟があるせいで豆や木の実等を食すが、私は基本なんでも食べるよ。」
「ああ、了解よろしく頼むよ、ナッツさん。」
思考を読まれて若干引きつった顔をしながら、そう返しリゼルの手を握る。
つか今何時だよ、俺がここに落ちる前は昼の12時頃だったんだが。
そういえば、携帯はどこいったんだ、腹も減ったし、そう思うと腹が鳴る。
「お腹が空いたかい?干し肉が少しあるから分けてあげよう。大丈夫毒なんて入ってないさ
疑うのであれば、私が試食しよう。あと君の下敷きになってる黒くて四角い物はなんだい?」
「俺の携帯があああああああああぁぁぁ!!!!」
携帯は俺の下敷きになって動かなくなっていた…。画面にヒビが入り電源ボタンを押しても動かない。
はぁ…、一か月前に買い替えたばかりなのにな。
リゼルから干し肉を受け取り食べる。結構旨いビーフジャーキーみたいな感じする。
というかこれだけじゃ足りないな…。携帯も壊れたしやけ食いも兼ねて何か作るか。
「貰ってばかりじゃ悪いんで、俺も飯作ります。パスタって知ってます?」
「パスタか有難い、頂こう」
「パスタあんのかよ、まぁいいや。少しお待ちを。」
そう返事を返し、センターバッグからクッカーセットを取り出す。
あ、水ってさっきの魔法の水とか飲めるんかな。
俺の隣をナッツさんが笑顔で手から水をちょろちょろと出して飲んでいる。
ああ、飲めるんだな。すげー便利、動くウォーターサーバーみてーだな
クッカーの鍋に水を入れて貰いシングルバーナーにOD缶を取り付け湯を沸かす。
「これは火が出る魔道具みたいな物かな?でも少し変なにおいがするな」
「これバーナーっつって下の丸い器から燃料くみ上げて火を出してる感じです」
塩を一つまみ入れオリーヴオイルを垂らす沸騰したところにパスタを入れる。
こうすることでパスタが絡みにくくなる…らしい。湯で時間はアルデンテで食べたいから大体6分ってとこか
しばし待つ
ゆで上がったらフライパンにオリーヴオイルを垂らしパスタを入れインスタントのミートソースを入れてよく絡める、出来上がったら皿に盛り完成。
「はい、どうぞ。熱いので気を付けて食べてください。これフォークです」
フォークを渡す、一本しかないので俺は箸で食べるが
「ありがとう、頂くよ」
うむ、普通に旨いな。味覚は変わってないみたいだ。
「ほう、これは美味しいな、トマトと肉の相性がこんな素晴らしい物だったとは…。香辛料もいい具合で効いている」
美味しいなこれはいいな、美味しいと言いつつガツガツ食べてるナッツ。
本当はミートも自作した方が俺好みになるが生憎材料もないので仕方がない。
食べてると違和感が出てきた、いつもの量を食べようと大盛にしたのだがあんまり食が進まない。
もしかしてこの体の胃袋があんまり大きくないのか…。
これから量を変えないと食料の無駄にしかならないしこの先帰れる保証も無く二泊する分の食材しか積み込んでないからあまり余裕がない。
満腹感からか皿に箸を置く。
「おや、もう食べないのか?私が残りを頂いてもいいかな?ああ、私は同性愛者ではない、もう少し食べたいだけなので安心して欲しい。」
正直もう腹に入らないし、口付けうんぬん気にはしてないので余るくらいなら食べて貰おう。
渡そうと思った瞬間に皿をナッツが取りガツガツと食べる。
なんか子供みたいだなって思うと、自然と笑みが出る。
「うむ、少しは落ち着いたか?。色々考えこんでいたようだからまずは一息ついてくれ。」