act12 食事情は良い!
結局お金は大事なんですよね。
ノック音がする。
「失礼します。お食事の用意が整いました。」
「今行きますね。」
二人で部屋から出るとメイドさんに食堂へ案内された。
「よくぞいらっしゃいました!昼間は申し訳ございません!」
店主が入口で待ってくれてたようだ。
「いや構わないよ、盛況だったようだし私も楽しませてもらったからね。」
ナッツは楽しめたみたいだが、俺は全然楽しくなかったわ。
「さぁさぁ、こちらへどうぞ。今日のメニューはなんだったかな?」
店主が席へ座るように俺とナッツを促す。
俺とナッツが隣、店主とアルガが向かいの席に座った。
「本日のメニューは焼きたてパンとハッシュドスープ、トマトと水野菜のチーズソース和え、メインにレッドパーチのアクアパッツァとなっております。食後に果物をお持ちします。お好みでワインを各種用意しました。」
めちゃくちゃ旨そうなんだけど…、帝都で一番ってのも嘘じゃなさそうだ。
「凄い美味しそうです!今日一番うれしいかも!」
「俺が奢った時よりも良い笑顔してるな…」
アルガがボソっと言ってるが旨そうだから仕方ない。
ナッツも待ちきれなさそうに料理を見てる。
「ははは!それはよかった!どうぞ召し上がってください!」
「では、いただきます!」
手を合わせて合唱する。
「ん?神への祈りじゃないのか?俺と親父は無宗教だけど礼はマナーとしてしてるんだけど。」
アルガと店主のおっさんがぽかーんとしてる。
「これ私の国での祈りです。食材に携わってくれた人や作ってくれた人、食材への感謝を込めてるんですよ。」
「いただきます」
ナッツもう食べ始めていた。こいつ食事に関しては欲深いと言うか、はよ食わせろ!ってのが前に出てるよな…。
「いただきます!」
俺も食べ始めるとアルガと店主もマネをして食べ始めた。
ハッシュドスープってじゃがいものスープだな。溶けるまで煮込んであるのだがサラっとしていて旨い。
野菜に関しても鮮度がよくシャキシャキと良い食感だ。チーズソースもしつこくなく良いアクセントになっている。
アクアパッツァに関しては文句なしの旨さ。魚は見た目と味的に鯛だなこれ。
昼間のカフェでこの世界の食べ物はあまり美味しくないのかと不安だったが、そうでもないようだ。
横を見るとナッツが人目もはばからず、食べている。
旨いのはわかるけど、意地汚い感じしかしねーよ。
余韻に浸ってるとワインを進められた。禁酒してるし、酒を飲みたいと思わないから断る。
アルガや店主は飲んでるみたいだが、ナッツはというと…。
「すまない、おかわりを頂けるか?」
こいつ前世に飯を奪われて死んだのか?一人でガツガツ食ってるんだけど。
鯛のアクアパッツァはないようだが、パンとスープとサラダを食いまくってる。
「すげー食べっぷりだな。昼間のカフェじゃ普通に食べてたのに。」
「私も料理を作った事あるんですけど、美味しい物には目がないみたいで。」
「生憎レッドパーチはご用意できないが、他なら沢山用意してある!ドンドン食べてくれたまえ!」
店主が笑いながら言っているが、もはや飯と皿とおかわり持ってくるメイドさんしか瞳に写ってないだろう。
俺が一通り食べ終わると、メイドさんが皿を下げてくれた。向かいの二人も大体食べ終わったようだ。
隣にいる奴はまだ食べてるが。
ふと気になったので少し聞いてみよう。
「あの、店主さん。砂糖ってありますか?」
「勿論ありますとも。食後に甘い物でも?一応果物が用意してあるはずなのですがね。」
「いえ、少し厨房をお借りしてもいいですか?」
「よくわかりませんが、問題ないですよ。案内をしてあげなさい。」
店主が言うとメイドさんに厨房へ案内された。
綺麗な厨房だ、
「申し訳ございません、何か不備がございましたでしょうか…?」
案内してくれたメイドさんが少し震え声で聞いてくる。もしかしてこれお仕置きとかあるのか?給料減らされる問題?
金策になるかもと思っての行動なのだが、こんな旨い飯作ってくれるメイドさんに何かあったらナッツに殺されそうだし、あとで店主に一言言っておくか。
「私の思いつきなので大丈夫ですよ。料理とっても美味しかったです。」
「そうですか…。それなら良いのですが…。」
不安そうな顔してるけど、俺から説明おけば大丈夫だろう。
「果物って何があるんですか?」
「本日ご用意させて頂いたのがレッドベリーとパインになりますが。」
見せてもらうとイチゴとパイナップルだった。これなら余裕で作れるな。
調理器具を見ると鉄のボウルがあったのでメイドさんにお願いする。
「面倒だと思うけど、ナッツさんにこれに氷入れてもらって風の魔法で粉々になるくらいまで砕いてきてもらっていいかな?」
「は、はい?かしこまりました。」
メイドさんがボウルを持ってパタパタと厨房から出て行くのを見て準備に取り掛かる。
鍋にイチゴをすりつぶして入れて砂糖と水を入れて煮詰める。
アクを取りつつ、煮詰めて水に味が染みてきたらザルにあけて冷水で冷やす。
これでお手軽イチゴシロップの完成だ。
冷やしているとメイドさんが戻ってきたので器に盛りつけてイチゴシロップのかき氷完成だ。
メイドさん達の分も作ったので一緒に食べようと言ったが主人の前ではと言われたので、ひとまず持っていく事にした。
「おまたせしました、どうぞ食べてみてください!」
店主とアルガの前にかき氷を置いた。
「ほう?これはなんという食べ物かね?」
「なんだこれ見たことないな。」
店主とアルガは興味津々だ。
「ミズキ君美味しいなこれ。」
ナッツの分もあるのにお盆から勝手に取ってすでに食べ始めている。
「かき氷って言うんですけど、どうですか?」
「甘い…なのにさっぱりとしていて氷のふわふわとした食感がとても楽しめますなぁ!」
「驚いた、あまり時間かかってないのに、こんな旨い物ができるのか!?」
アルガと店主が喜んでいるのでこの世界でも十分に通用しそうだな。
「メイドさん達の分も作ってみたのですけど、早く食べないと溶けてしまいます。」
「おお、そうであったか。二人共食べて良いぞ。」
二人のメイドさんが笑顔で食べ始めていた。
「それで、ですね。このかき氷販売してお金を稼ごうかなーって思ってるんですけども。」
「ミズキ君、意外と商売魂があるんだな…」
ナッツ…あんたって奴は…。
「ほう?実に面白い案ですな。この上にかかっている赤いシロップのレシピと売り上げの1割を貰えるのであれば、このマルボが食材を格安で提供しますよ。勿論お二人がこの帝都にいる限りで構いません。場所と店も確保しましょうとも!ただ、お二人が帝都から旅立たれた場合私に店を引き継ぐというのが条件ですが。」
店主の名前すげー今更感がするな。だが食材提供と場所、店も確保してくれるのは有難い。
どのみち、この世界を見て回るつもりだったからある程度の資金を稼げればそれでいいしな。
「このかき氷ってのは売れると思うぞ、今から夏の暑さが増してくるから、一個1000コルでも売れそうだな。」
「そうですな、1000コルでまったく問題ないでしょう。」
かき氷が1000円とかやべーな、前ファミレスいったときに食べたかき氷で700円くらいだったのに。
練乳もアイスクリームも乗ってないかき氷に1000円は俺出したくないわ。
「よし、やろうミズキ君。稼がなければ旅が出来ない。」
「魔力って一日どのくらい持つの…?この作戦ほとんどナッツさん次第なんだけど。」
「あのくらいの魔力なら半日以上は持つはずだよ。私の魔力切れでその日は終わりにすればいいだろう?」
確かにその通りだな。
「では明日から準備に取り掛かりましょう!」
「「「おー!」」」
ここで呼び鈴が鳴った。
「アルガ様、バトロ様がいらっしゃってますが。」
「あーそういえば今後の打ち合わせか、悪い親父ちょっと行ってくるわ。」
「わかった、しっかりと計画してくるのだよ。」




