act11 戦技と魔法の違い
三人で宿屋に着くと、そこには三十人以上の女性が並んでいた。
一応無料だからそこを嗅ぎ付けて来たのかなと思ったら、袋に何か詰めてそのまま帰ってる。
でも確かあの宿部屋が2部屋くらいしかなかった気がするが…。
「今回の売り上げはかなり良さそうだなー、流石俺?じゃないな…ミズキちゃんだな!」
アルガが俺の手を取って話す。日本だとこれだけでセクハラになるぞ?
手を振り払ってナッツに聞いてみる。
(何これナッツさん。)
(ミズキ君は宣伝をやらされたみたいだな。)
(ん?どういうことだ?)
(朝宿屋を出るときに着せられた服があるだろう?)
(ああ、このエロ服っしょ?)
(それを着せて街を歩かせる事で宣伝をしてたみたいだよ。私は知っていたけどね。)
あのエロ親父これが目的かよ!つか知ってたなら知ってたで言えよ!って言わないだろうな…
そういえばここ出る時に宣伝云々言ってたのこれか!?
ナッツは俺をいじるのが面白くて仕方ないみたいだし…。とりあえず早く中に入りたいんだけど…。
「ねぇ?あの人じゃない?」
「あ!あの人よ!凄い似合ってるわよね!」
並んでた女性がこっちを見てヒソヒソと話している。
中身男の俺には耐えれない状況だ。
「麗しいお嬢さん達すまないが、道を開けてくれないかな?中に入りたいからね。」
アルガが恒例のイケメンスマイルをかまして言う。
キャーキャーと声が響く中宿屋に戻れたが、中も女性で埋め尽くされていた。メイドさんが駆けつけてくれてどうにか部屋に戻れた。店主は笑顔で走り回っていたな…。
ようやく部屋についてベッドに腰かける。ナッツはまた椅子に座っているが。
この部屋ベッドが二つあり、絨毯がひいてあり、椅子と丸テーブルのセット、ドレッサーやクローゼットまである。窓に至ってはステンドグラスっぽい感じである。部屋も綺麗でオシャンティーを感じさせる。
俺達の荷物はメイドさんが部屋に運んでくれていた。
「はぁ~、ナッツさん知ってなら教えてくれよな…。」
「すまない、ププッ…、面白そうだったからね。」
こいつ全然謝る気ないどころか本音言ってるだろ。
「こうなったら知ってる事教えて貰うからな。」
「ああ、そうだね。まず断られてると言う話を先程の服屋で聞いたと思うが、それは違うみたいだよ。」
「え?あのエロ親父が断る訳なくね?」
「なんでも店主が気に入った人でしかこの宿に宿泊をさせないと言う事みたいだよ。おまけに旅人しか宿泊を許可しないらしい。ただその代わりに、サービスは帝都の中で一番上じゃないかと言う事だ。」
「そしてエロ親父に服を着させられるってことね…。」
「ミズキ君の認識としてはそうなるだろうね。私は非常に楽しませて貰ったから満足だよ。」
ナッツが満面の笑みでこっちも見てくるのが腹立たしい。
「次からはちゃんと教えてくれよな…。」
少しため息をしながら言うとナッツは笑いながら
「気が向いたら伝えるよ。」
こういう奴だったわ。
「まぁいいや、さっきの話で気になった事もう少し詳しく聞きたいから教えてくれ。」
「私が大規模戦術魔術を撃てるんじゃないかという事かな?」
「なんでわかったんだよ…、まぁそれも聞きたいけどさ。」
「結論を言うと撃てなくはないよ。撃ったら魔力が尽きるどころか、そのまま生命力まで尽きて死ぬと思うがね。」
「それでも一人で撃てるとか完全に化け物じゃないか。それで魔法は二人に一人は撃てるとか言ってたけど、それってその辺に魔法使える人がいるってこと?」
「エルフは全員魔法が使えるが、人によってそれぞれ違うのだよ。私みたいに魔法型もいれば魔力を闘気に変える方法もあるね。人によって個性が出るから、全員が全員魔法を撃てるわけではないみたいだよ。むしろ魔法型のが少ないとまであるね。」
「闘気ってのはどんな感じなん?」
「闘気は武器に気を込めて放つ魔法と言った方がいいかな、戦技と言われてる方が主流だね。有名なのだとスラッシュというのがあるよ。この氷を持ってくれ。見せてあげよう。」
ナッツに氷のボールを持たされる。ナッツが軽く手を振ると手に持ってた氷に亀裂が入った。見えない刃が飛んできて焦る。
「私は使えないから今のはスラッシュと言うより風の刃を飛ばしただけだが、大体こんな感じだね。」
ナッツが開いた手をにぎり込むと氷が消える
「こっわ!焦ったわ!あとさ、身体能力の向上とかってあるの?」
「自身の魔力を構築して身体能力向上の魔法を付与する事はできるよ。ただ相手から魔法を付与されると魔力の逆流が起きて死ぬらしいね。人の魔力に干渉するからかけた本人も死ぬというある意味面白い魔術だ。教会の癒しの魔法があるのだがそれに関しては、逆流が起きずに治癒が可能という話だ。その為なのか結構信仰心は厚いみたいだね。」
「死ぬのかよ!怖いな!まぁ魔法があるからあまり武器とかが発展してないのか。なるほどねぇ。」
「君の武器は実に興味深い。魔力がなくてもその威力とは恐れ入るよ。」
「使いたいならまた貸すよ。んで、魔道具って具体的にはどんなのがあんの?」
「いや、結構だ。モンスターからとれる結晶を使って動かす道具の事だよ。私のいた里では無かったが、水を沸かせるコップや火をつける魔道具等が上げられるね。そこにライトがあるだろう?それも魔道具だよ。」
「へぇーあれが魔道具なのか。てっきり普通のランタンだと思ってたわ。」
「結晶の魔素が無くなると使えなくなるから、その場合は結晶を取り換えて再度使用できるね。」
「電池みてーなもんか。その結晶って高いのか?」
「電池とはどういう物がわからないが、結晶は大きさによって値段が違うね。ゴブリンやコボルト等の小さいモンスターからは小さい結晶しかとれないよ。」
「大きい奴とかっているのか?例えばドラゴンとか。」
「ドラゴンは600年程昔に居たと言われているが、今は存在してないと言われてるよ。現存するので脅威と言われてるのはワイバーンや、魔獣くらいじゃないかな?」
「ワイバーンはわかるけど、魔獣ってモンスターじゃないの?」
「魔獣はモンスターが変異をした姿の事だね。放置したり冒険者を食らうと突然変異で姿が変わるらしい。詳しい事はわかってないみたいだが。」
と話しをしてるとノック音がした。
「お茶をお持ちました。入ってもよろしいでしょうか?」
「ああ、お願いするよ。」
「失礼します。」
メイドさんが慣れた手付きで紅茶を入れてくれた。紅茶のいい香りがする。
「夕食になったらまたお呼び致します。何か御用がありましたらこのベルでお呼びください。それでは失礼します。」
「ありがとう。」
俺がそう言うとメイドさんが出て行った。
「とりあえず金がないのは問題だと思うんだよね。なんとか資金を得ないと。」
「そうだね、少々人の物価を甘く見ていたよ。恐ろしいくらい高い。」
ナッツと資金の相談をしていたら、いつの間にか外が薄暗くなってきた。