第7話 幼力爆発
「つぎはこれであそぼ!」
「せんせー、ご本よんでー」
「はいはい、ちょっと待ってね」
子供たちに声をかけられ、私は忙しそうに声を返す。
部屋の中は大勢の子供たちの声で溢れかえっており、私はそれらの対応に追われていた。
私の名前はアイコ。
現在は魔王国で保育士のようなものをやっている。
私が今いるこのフロアには世界中から保護された魔力を持った子供たちの中でも特に魔力の強い子供が集められてる。この場所はその力をちゃんと制御できるように城下街に作られた特別育成機関、通称『ネクストチルドレン』である。
私自身は特別強い魔力を持っているわけではないが、以前保育士をしていた経験を買われここの保育士に抜擢された。
「せんせー、らんちゃんがころんだー」
「あらら、擦りむいちゃって。今先生が治しますね」
子供の相手をするのは好きだ。おまけに城内勤務は福利厚生が行き届いてるし給金もいいので、正に天職だ。
私の出来の悪い回復魔法も子供の擦り傷程度ならとても役立つし。
「アンちゃん、つぎはなにするー?」
「じゃあ次はここをおねがい!」
「スイちゃん、じゅんびできたよ!」
「ん、把握した。それじゃ始めよっか」
アンちゃんとスイちゃん。子供ながらにその素質を見込まれ幹部に大抜擢された彼女たちもここに通う生徒の一員だ。本来なら敬語を使わなければいけない立場だが本人たちの希望もあり、私はちゃん付けで呼んでいる。
まだ『ネクストチルドレン』が開かれてから数日しか経っていないが2人はすっかり生徒たちの中心人物だ。
元気いっぱいで人をグイグイ引っ張って行くタイプのアンちゃんはともかく、落ち着いていてあまり話さないタイプのスイちゃんの周りにも人が途切れないのを見ると、子供は無自覚の内に自分より強いものを理解しているように感じる。
もちろんそれだけではなく2人がとてもいい子だというのも子供たちが2人を慕う理由だろう。
「やあやあ双子ちゃんたち、楽しくやってるっすか?」
そんな事を考えているとまぶしい笑顔と鋭い八重歯が魅力的なメイドさんが入ってくる。
彼女も双子と同じ幹部の1人、イブキさんだ。ここにはよくサボってお菓子を食べに来るので私はよくお話をする。
明るくて面白い彼女は子供たちにはもちろん、先生たちにも大人気だ。
「こんにちは、イブキさん。何か御用ですか?」
「ちーっす、アイコっち。今日はちょっと双子ちゃんに用があって来たっすよ」
彼女はそう言うと双子に向かって話しかける。
「いったいこそこそと何をやってるんすか?」
いつもの朗らかな態度からは一変し、真剣な口調の彼女に私は少し身構えてしまう。
「……内緒」
イブキさんの問いにスイちゃんは少しばつが悪そうに答える。
「い、いったい何があったんですか?」
場の空気に耐えられなくなった私は彼女たちの間に割って入る。
「周りをよく見てみるっす。わからないっすか?」
「周り……?」
私はその言葉に従い辺りを見渡す。
しかし周囲には遊んでる生徒とその世話をする同僚、そして子供にねだられ仕事を中断しここに連れてこられた他の部署の職員しかいない。
「特にいる人に不思議なことはない……だけど……」
多い。
生徒と同僚のことではない。それなら数が増減すればすぐに気が付く。
増えているのは他の部署の職員だ。
生徒たちはよく近くで作業をしているメイドさんや使用人などを連れてきているがその数が普段より多い。ゆうにいつもの3倍はいるだろう。
「普段は自分もよくサボってたんで大目に見てたっすが、さすがに10人以上も抜けられると業務に支障がでるっす。いったい何が目的なんすか?」
「ねーねースイ。もう言っちゃえば?」
「まだ。あと少し」
2人が何やら耳打ちをしていると、また1人生徒に手を引かれメイドさんがフロアに入ってきた。
「あ、シズさん。こんにちは」
「こんにちは、アイコさん。この子ったら離してくれなくて」
シズさんはメイドの1人であり、メインの仕事場がこの近くのフロアであることと同郷ということもあり仲良くさせてもらっている。
私に挨拶したあと、上司のイブキさんに気付いたようで頭をぺこぺこさせて謝っている。
「ねー、もういいでしょ?」
「ん。これで全員、始めよっか」
2人はこそこそ話すのをやめるとイブキに近寄ってくる。
「ん?ようやく話す気になったっすか?」
「ん。イブキが来たのはちょうどよかった、手伝ってくれると助かる」
「話が読めないっすね。いったい何をかんがえてるんすか?」
「えへへ、イブキ姉ちゃんもきっと驚くよ!」
イブキさん以外も話が読めていないのだろう、私も含めて周りの人たちが2人の言葉に耳お傾ける。
「えっとねー。今連れてきている人たちはねー、みんな悪い人なんだよー」
「ん、正確には生徒と先生とイブキを除く13名。全員が私たちに対して敵対意識を有している」
「へ?」
張り詰めた空気の部屋には、私のまぬけな声だけが響いたのだった。




