第6話 身を隠す者達
城外で戦闘が繰り広げられている中、城内に忍び込む事に成功した一団がいた。
白装束に身を包み、銀の十字架を首にぶら下げたその服装はおよそ潜入作業には向かないように思えるが、その服装こそが彼らがここまで発見されずに潜入できた大きな要因である。
「魔力感知センサーに監視カメラ、見事な防衛システムだ。しかし我々の積み上げた技術はそれを上回ったようだな」
「ええ。だからこそ我々が有利なうちに決着をつけなければいけませんね」
彼らはとある魔術結社の一員であり、外の連中と同じく組織の命により魔王国に潜入、魔王の殺害、または拿捕を命じられている。
「~~~♪」
彼らが角を曲がると鼻歌交じりに掃除している一人のメイドと出くわしてしまう。
しかし、彼女が彼らに気づくことはない。
「やはり凄いな。この装束は」
「当然だ、この魔道具を看破できるものなどおらんよ」
魔道具『認識外の存在』
彼らが身に着けている装束はそう呼ばれており、その効果は自らの存在を他者に認識させず、霧散させることができる。
その効果は視覚、聴覚だけに飽き足らず魔力感知や赤外線探知なども欺いてしまう徹底ぶりだ。
(まあそれでも強い魔力を持つ者の目の前に出れば流石に気づかれるのだがな……)
ゆえに彼らは遠回りをしながら階上を目指す。
幸い感じられる強い魔力は城外にその多くが感じられるので、そこまで遠回りをしないで済むがそれでも敵の懐に長居するのは精神を削られるものだ。
潜入工作のスペシャリストの彼らが違和感に気づくのが遅れたのはそのせいでもあるだろう。
「何かがおかしい、この通路前にも通らなかったか?」
「考えすぎじゃないですか?元々この城の通路は同じ見た目が多いですからね」
「それはそうなのだが……あまりにも人が少なすぎる」
最後にメイドとすれちがってから10分弱、彼らは誰とも遭遇していなかった。
「まさか、気づかれたのか?」
「し、しかしこの装束は我々の存在が看破された時、それを知らせる機能があります。例え我々が迷宮のようなものに迷い込んでいたとしても気づかれてはいないはずです!」
彼の言う通り、まだ彼らの侵入はバレていないはずだ。
しかし、長年の感が警報を鳴らしている。
「各自最大限の注意をもって後退だ!最後にメイドとすれちがったところまで戻る!」
彼らの中で最もベテランの者が指示をだし全員がそれに従う。
「こんなところにいつまでもいられん。早急にカタをつけ帰還するぞ!」
全員が「応!」と返事をするが、それが叶うことはなかった。
◇
「大したものね」
無数の機械や魔道具が並べられた部屋に声が響く。
「いえいえジーク様の作られた物が素晴らしいだけですよ」
マーレの問いに謙遜しながらも得意げな顔をしているのは幹部の1人、シェン=レンだ。
彼は現在魔王国の防衛機構『追跡者』にアクセスし、城内に侵入した者たちを1人で相手にしている。
「しかし、認識阻害を使う者をよくみつけられるわね?」
マーレと違い彼は膨大な魔力を有してるわけではなく、かといって特別凄い能力を有しているわけでもない。
それなのに的確に侵入者を探知し、確実に捕獲部屋に追い込む彼が不思議だったのだ。
「私は何も認識阻害を破っているわけではありませんよ」
そう前置くと彼は得意げに語りだす。
「異常があるところが見つからないなら異常が無いところを探せばいいんですよ」
「まさか……」
マーレはその言葉で彼が何をしていたかを理解した。
「そう,発想の逆転です。城内を順に探すのではなく、城全体に意識を広げれば他と比べ異常が少なすぎる場所が出てきます」
簡単に言っているがとても常人には出来ない事だ。城内の視覚情報だけでなく音、におい、魔力濃度などの全ての情報を一気に取り込めば、それだけで脳が焼き切れてしまうだろう。
「位置が割れれば後は簡単。相手が通るであろうルートを割り出し、私の符術によって強い魔力を感じさせ進路を誘導。罠を張った部屋に入れてしまえばゲームエンドです」
楽しそうに語る彼の姿はまるで新しいテレビゲームを楽しむ少年の様だ。
「皆さんの様なわかりやすい強さが無いものでしてね。いいところを見せようと張り切ってしまいました。我が主は喜んでくれますかね?」
「ええもちろん。より一層の活躍を期待してますよ?」
その言葉に彼は悪魔の様な笑顔で返した。




