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累が淵  作者: 市姫
累が淵
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1/1

~杉~

「村外れの家に近づいてはいけないよ。恐ろしい形相をした鬼に食べられてしまうよ。」



下総国、羽生田村でのこと。


 町から幾分も離れたこの村では、少数の農民達が田畑を耕しながら暮らしていた。


「うーん、無いなぁ、山菜…。」

あたいの名前は「お杉」。十四歳。村から少し離れた山中をさ迷っている最中だ。

わらびやあけびが採れるはずなのに、この辺りの山菜は採り尽くしてしまったのか一向に見つからない。何刻探し回ったか…、額は汗が滲み足は泥で汚れている。

「やだっ…此処、どこだろう?」

気がつくと普段入らない場所まで立ち入っていた。足元の草は伸び放題、木々は日の光を通さず薄暗い。

「もしや此処、与右衛門達が言ってた鬼が出るってとこ!?うっ…くわばらくわばら…。」

村の少年達から聞いたことがある。

ー山の奥に立ち入ってはいけない。おぞましい形相の鬼に、食い殺されてしまう。

と。

「やだやだ、戻らねえと!…あれ?村はどっちだっけ…?」

あたいは慌てて駆け出す、が何処を見渡しても視界に入るのは生い茂った木々ばかり。自らの勘だけを頼りにがむしゃらに走り回った。

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