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魔女伝  作者: 倉トリック
墓標の剣編
91/136

圧倒的強者

 高笑いするランスロットに、二人の魔女が奇襲をかける。

 エルヴィラが闇で視界を塞ぎ、ゲルダがそこへ氷柱を飛ばす。


 油断している相手の背後を取って、更には視覚を奪った状態で乱れ撃ち。


 ジャンヌに当たらないよう細心の注意は払ったが、それでも、これらの攻撃が全て無駄うちになる要素は限りなくゼロに近かったはずだ。


 それでも、ランスロットは目が見えない状態で、全ての攻撃を躱す事に成功した。


「小賢しいな、目が見えん」


 纏わりつく闇を鬱陶しそうに手で払いながら、ランスロットはしっかりと二人の方を見ていた。


「なんで外れたんだ…おいゲルダ! テメェちゃんと狙ったんだろうな」


「ここで私に当たるのは絶対おかしいでしょ、そっちこそ、相手にはこっちが見えてるみたいだけど? あの闇透けてるんじゃないの? サングラスか何か?」


 一瞬睨み合うが、すぐに視線をランスロットに戻し、作戦を立て直す。


 もっとも、立て直すような効果のある作戦が立てられればの話だが。


「はっきり言って勝ち目ゼロ、あれは私が氷漬けにして粉々にしたって蘇るよ、魔女以上の不死性なんか私達にどうしろと?」


「ゼロってわけでもないだろ、あの能力は魔具ありきの能力だろ? だったらあの半裸野郎から、あの気持ち悪りぃお人形さんを引っ剥がしちまえばいい話じゃねぇか」


「理屈はそうだろうけどね、私達だけでそれ出来ると思う?」


 ウル、ジャンヌ、共に戦闘不能。残った戦力はエルヴィラとゲルダ…そして。


「お前は…何もしないな、ゼノヴィア」


 闇の効力が切れ、目が見えるようになったランスロットは、彼女の方を睨みつけながらそう言った。


 ゼノヴィアはビクリと身体を震わせて、その視線から目をそらす。


「何もしなければ殺されない、とか、自分は女だから許してもらえるかも、とか、そういう期待は今目の前で壊したと思ったが?」


 相手がなんであろうと、ランスロットは容赦無く殺せる。相手が自分より年下の女性であろうと、平気で殴り倒す事ぐらいする。


 だからと言って、勝てるわけが無い。たった一瞬で、騎士団の精鋭達がやられたのだ。


「…つまらん奴だな、そこで黙って見てろ、お望み通り殺しはしないさ…殺す価値も無い」


 そして、再びランスロットは魔女二人の魔法と剣をぶつけ合う。


 そんな様子を、ゼノヴィアは震えながら見ているしか無かった。


(いや、いやいやいや、仕方ないやろこんなんっ!)


 向かって行ったって殺されるのは目に見えている、魔具も魔法効果を付与した鎧もつけていない自分など瞬殺されるだろう。


 歯向かう事自体、全くと言っていいほど意味の無い行為だ。


 確かに剣の腕に自信はある。ずっと訓練してきたのだ、騎士として、守る為に戦う術をずっと身につけてきた。


 しかし、それらはあくまでも対人戦を基本としたものであり、怪物を相手に想定した事など一度だって無い。


 ましてや、ただでさえ強かったランスロットが更に力を持った状態になっているのだから、勝ちの可能性なんて皆無だろう。


(う、ウチが弱いわけやないやろ…誰も勝てへんやろ…ウチだって最初は加勢に入ろうとしたし、何もしてへんわけやない…こんなん、仕方ない事やんか…)


 ランスロットが剣を振り、再び炎が魔女二人を襲う。


 互いの防御魔法で辛うじて防いだが、即座に襲いかかる斬撃に、ゲルダの両腕が落とされてしまった。


 瞬時に再生したが、もしアレが自分だったら、どう足掻いたって死んでいただろう。


 ランスロットも十分化け物だが、そんな彼の攻撃を受けてもそう簡単には死なない彼女達もまた、化け物だ。


(化け物同士の戦いに、割って入る事なんてでけへんよ)


 だって、自分は人間なんだから。


 不可能を可能に出来る魔女とは違う、不可能な事は不可能なまま、ただの非力な人間だ。


(今やったら…逃げれるんやろか…)


 自分の卑怯さに絶望した、自分の発想を恥じた、自分の弱さに、乾いた笑いしか出なかった。


 そんな弱さに、甘える自分。


 弱いんだから、逃げるべきだと、足手まといになる前に、この場から離れるべきだと、甘い誘惑が思考を支配していく。


 今逃げれば、死なずに済む。


(な、なんとかなるよ…多分、あの魔女二人だって十分強いんやから…い、今のうちに)


 一歩、後ずさる。今自分は、正しい判断をしているんだと、必死に言い聞かせながら、もう一歩、後ずさる。


 その時、視界の端で、何かが動いた。


 視線を向けると、なんとボロボロのジャンヌが、剣を握り、再び立ち上がろうとしていた。


「ジャ…ジャンヌ? アンタ何やってんの⁉︎」


 あまりに信じられない光景に、思わず声を荒げ、慌てて彼女の元へ駆け寄る。


「…ゼノ…ヴィアさん…無事…ですか…良かった」


 腫れ上がった目で、チラリとこっちを見て、息を荒げ、辛そうにしながらジャンヌは言う。


「ウ、ウチは大丈夫よ、なんもしてへんから…なんもされてへん…それよりも、ジャンヌ、アンタもしかして…まだ戦う気かいな」


 言われて、ジャンヌはへにゃりと笑いながら頷いた。


「エルヴィラと…ゲルダが戦ってくれてる…私も、行かないと…仲間を守るのが…私の仕事ですしね…それ以外に、選択肢はありませんよ」


「あ、あるよ!」


 倒れそうになるジャンヌの肩を慌てて抱いて、ゼノヴィアは言う。


「あるよ、選択肢なんか、いくらでもあるよ…もう戦わんでええよ、ジャンヌ…一緒に逃げよ? どんなに頑張ったって、あんなん勝てるわけが無いよ…もう、やめようよ」


 もう、やめて欲しかった。もう、やめたかった。


 こんな時、素直に逃げられないのは、命の危険から、逃げると言う当たり前の行動を取れないのは、自分達に課せられた、騎士という役割のせい。


 敵に背中を見せてはいけない。そんな事は分かっている。


 でも、騎士だって一人の人間なんだ、怖い時は、死にたく無い時は、逃げたくなる。


 そんな当たり前の事も出来ないまま、自分達は多分、死ぬまで戦わなくてはならない。


 そうなると、ロクな死に方はしない。


 自分がそうなりたく無いのは勿論だが、それ以上に、自分より年下のジャンヌが、その身にはあまりに重すぎるものを背負わされている彼女が、そんな目にあうのを見たくなかった。


(いや、嘘や…ほんまは)


 この子が戦うと、自分が逃げ辛くなるからだ。


 団長を守る為に戦線離脱という手段ならば、大義名分の元、この場から離れられる。


 なんとも情けなく、騎士にあるまじき発想だ。


「ゼノ…ヴィアさん?」


「ジャンヌだって、ほんまは嫌やろ? 誰も好んで殺されたい奴なんておらんて…ましてやあんな化け物に…これを機に、もう騎士なんてやめようよ、ジャンヌ」


「ゼノヴィアさん…」


「まだウチら、若い女の子やで? いっぱいしたい事あるやん、美味しいもん食べて、オシャレして、恋人見つけて、結婚して、子供作って…お、おかしいやんか、そんな事も出来へんで、こんな傷だらになって、血塗れになって…こんな事、ほんまにウチらがやらなあかん事なんか、どうしてもウチらや無いとダメなんか?」


「ゼノヴィアさん」


 また、失望されただろうか。戦いもせず、一人だけ無傷のくせに、言いたいことばっかり言って、ジャンヌは怒っているだろうか。


 それでもいい、もうなんでもいい、死ぬぐらいなら、殺されるぐらいなら。


 突き放されると、覚悟した。


 しかし、返ってきたのは返事でも無く、自分を突き放す手でも無く、優しい抱擁だった。


「ゼノヴィアさん、大丈夫ですよ…貴女の気持ちは、痛いほど分かります…だって、私だって、そう思う時はあるから」


 硬い鎧を着て、武装して、街を歩いている時、ふと見かける、自分と同じ年頃の女性達。


 綺麗な服に身を包み、女性として、美しくなる事を全力で楽しんでいる彼女達を見て、羨ましく思った事は数え切れないぐらいある。


 子供達の手には血豆は一つもない。打撲や切り傷も身体中にあるわけじゃない。幼少期の自分に当たり前にあったものが、街の子供達には一つも無い。


 無いのが、当たり前だったのだ。


「逃げたくなった事も…やめたくなった事も、沢山あります…ここ数ヶ月なんか、それの連続でした…どうして私達がこんな事をしなければならないのか…それは、ただの偶然でしか無いと思います…」


 たまたま、この境遇に生まれてしまった、ただの偶然。


 戦うという運命に縛られた、悲しい偶然。


「怖かったですよね…辛かったですよね…苦しかったですよね…身も心も、痛みましたよね…きっと私達がやっている事なんて、本当は誰でも出来るのに、生まれた時から決められてて…大変でしたよね」


 それでも気丈に振舞わなければならなかった、何故なら、それも、騎士としての役目だから。


 辛そうな顔なんて、一瞬たりとも人前では出来ない。


「ゼノヴィアさん」


 ジャンヌは出来る限り血を拭って、ゼノヴィアから手を離し、笑顔を見せながら言う。


「逃げてください」


「…ジャ、ジャンヌ?」


「貴女の勝てる相手じゃない、ほぼ確実に、殺されます…私は、貴女に、死んで欲しくない」


 そのままジャンヌは、再び戦場へと戻ろうとする。


 その背中に、感情的にゼノヴィアは叫んだ。


「ジャンヌは…ジャンヌはどうするんよ…アンタが死んだらどうすんの! 死んで欲しくないんはウチかって一緒や! 戦ってばっかり、守ってばっかり! アンタの事は誰が守ってくれるんよ!」


 騎士は守る為に存在する、でもそれは、誰かを守る為だけで、自分の為には行動しない。


「ちょっとは自分を守ろうとしいや!」


 ジャンヌは振り向いて、


「ありがとうございます」


 と言った。


 それだけで、彼女を止める事は出来ないと、ゼノヴィアは察した。


「ごめんなさい、ゼノヴィアさん…私は、逃げる事は出来ない、戦います…それに、確かに苦しくて辛い時もあるけど、私は、自分を不幸だと思った事は一度もありませんよ」


「な…なんで、そこまで」


「私を守ってくれる人は、沢山いるからです…騎士団のみんなに、エルヴィラに、ドールちゃんに、今はゲルダもいるし…勿論、ゼノヴィアさんも、私はみんなに救われてるんですよ?」


 みんながいるから、立ち上がれる。


「私を支えてくれるみんなを守る為なら、私は何度だって立ち上がって剣を握ります、それが私の役目だから」


 それに、とジャンヌは続ける。


「そうじゃなくても、この戦いからは逃げられません、こればっかりは、私がやらないと、ダメなんです」


「な、なんでよ…」


「ゼノヴィアさん、貴女は化け物だと言いましたけど、私には、やっぱりランスロットさんにしか見えないんですよね、私達の仲間だった、家族も同然だった、無口で、無感情で、強くて、頼もしい人だった、ランスロットさん」


 懐かしむように言ってから、ジャンヌは視線をランスロットに向ける。


「あの人は、私達にとって特別な人です、そんな家族同然の人が間違っているなら、正してあげるのは、やっぱり私達しかいないと思うんです、一番近くであの人を見てた…私達しか」


 その本当の気持ちまでは、残念ながら伝わらなかったけど、だったら一方的にでも、自分達の気持ちは伝えるべきだ。


 団長としても、ジャンヌとしても、彼を止めるのは、自分の役目だ。


「だから、いってきます」


 そして、再び、今度は駆け足で、ジャンヌはランスロットに向かっていく。


「か、敵わへんわ…」


 それでも動き出せない自分とは、確実に違う。


 あの頃の泣き虫で弱かった少女の面影など、もうどこにもない。


 彼女こそ、強者だ。


 覚悟を持って命すら投げ出せる、圧倒的な強者。


 ゼノヴィアは、その背中を、黙って見ていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ぎゃっ!」


「ぐぅっ!」


 ランスロットにねじ伏せられ、魔女二人は短い悲鳴をあげる。


 当の本人であるランスロットは、酷く不愉快そうだった。


「チッ、しぶとい」


 地面にめり込むほど、顔面を掴んで叩きつけたはずだが、悲鳴の後にはすぐに攻撃が飛んできた。


 蛇のようにうねる氷が首をかする。それを避けた直後、エルヴィラの爪が鋭く伸びて、眼球を潰しにかかってくる。


 跳び退いて、剣を一振りし、魔女達に追撃する。


 炎が舞うが、どうにも決定的なダメージには届かない。


「魔女が二人…なるほどな、魔法と魔法の組み合わせはやはり手強いな」


 と、賞賛するような言葉を発してみたものの、圧倒的に有利なのはランスロットの方であった。


 未だ無傷、息の一つも荒げていない彼に対して、魔女二人は既に疲労困憊、満身創痍に近い状態だった。


「クッソが…純粋に力負けしてるじゃねぇか…」


「そこは仕方ないでしょお…か弱い少女二人よ? ちょっとは紳士らしく手加減しようとか思わないのかあのオッサン」


 か弱い少女という表現に、思う事が無いでも無かったが、今はそれどころじゃ無い。


「おいゲルダ、お前もう一つ魔法無かったっけ?」


「…? ああ、『撃ちっぱなし(エンドレスリピート)』の事? あるけど、意味無いよ、アレはカイが使ってたような、銃とかの、飛び道具限定の能力だし、私達どっちも銃なんか使えないでしょ、そもそもここに無いし」


「銃ぐらいなら、転移魔法で持ってこれる…ちょっと試してみないか」


「意味あるかなぁ」


「ここまで散々ボコられたんだし、使える手はもう使い切るしかねぇだろ」


 エルヴィラは、手元に二つの銃を出現させる。


 それは、カイの使っていたマスケット銃のようなものではなく、もっと小型の、ゲルダが見たことの無い、拳銃というものだった。


「なにこれちっさ、威力あるの? コレ」


「見た目よりかなり重いんだからさっさと受け取れや、んで、魔法かけて、お前が撃て」


「私が銃とか使えると思う?」


 というやり取りを、最後までさせてくれるわけもなく、ゲルダが拒否するよりも先に、ランスロットの剣先が二人に襲いかかっていた。


「っ! ゲルダ!」


「使えないってば!」


 その言葉通り、構えた二丁拳銃が、発砲される事は無かった。


 引き金を引くより先に、ゲルダの両腕がまたしても斬り飛ばされた。


「何回無くなるの私のおてて!」


「お前、さっきから何かと厄介だな、先に片付けてやる」


 そう言って、ランスロットは剣を乱舞させる。


 一瞬にしてズタズタにされたゲルダは、力なくその場に倒れてしまった。


 ただ、幸か不幸か、やはり死には至らない。


「不死ばっかりだなここ!」


 ゲルダに集中していたランスロットに、エルヴィラが爪を伸ばす、そこへ、再生したゲルダも氷の剣を突き出した。


「チッ」


 流石に避けきれず、ランスロットは二つの攻撃を頭部に受ける。


 爪が喉を貫き、氷の剣は眉間を貫いて脳を破壊した。


 しかし、それでも。


「あと四十七回」


 ランスロットは絶命せず、そのまま剣を振って二人を斬り裂いた。


「俺はまだまだ死ねるぞ…お前らとは違う、真の不死はこの俺だ、つまり、俺が一番強い」


「あと、四十六回ですよ」


 その声と共に、ランスロットの心臓を剣が貫いた。


「まだ戦う気か、雑魚のくせになぁ、ジャンヌ?」


 倒れない、そのままランスロットはジャンヌの首を狙って剣を振る。


 しかし、エルヴィラの突進でジャンヌは押し倒され、剣は虚しく宙を斬る。


「バカかお前! 無茶すんな!」


「ありがとうエルヴィラ、いや、ごめんね、ちょっと焦った」


 ランスロットの追撃を免れる為、ゲルダは巨大な氷壁を作る。


「とりあえず今のうちに怪我は全部治してあげる、でも魔法効果はちょっと分からない、エルヴィラの効果を消したくは無いし」


 ゲルダがジャンヌに触れると、一瞬にして傷が治った。


「ありがとう、もう大丈夫…さて、どうしよ」


「作戦無しかよ」


 エルヴィラが、呆れたようにため息混じりに言う。


「とにかくあの人形を取り上げればいいんだ、アレに集中しよう?」


「ダメだよゲルダ、先にやるべきは、ランスロットさんから剣を取り上げる事だ」


「剣…か、攻撃手段を奪うのね、なるほど、普通に考えたらそれ基本だよね、私達頭悪いからなぁ」


「達ってなんだ達って、頭悪い枠に私を入れんな」


「喧嘩しない!」


 エルヴィラとゲルダを一喝して制してから、ジャンヌはとにかく陣形を考える。


「ゲルダの氷は防御壁としてすごく優秀だし…ゲルダは後方で支援してくれる? 氷はどの範囲までなら自由に操れるのかな?」


「この程度の広さなら、端っこにいたって操れるよ、でも、治癒は直接触らないと無理だよ?」


 そうだった、それも考慮せねば。


 いや、考慮させてくれる時間は、どうやら与えてくれそうに無かった。


 氷壁が破壊され、凄まじい剣撃が三人を襲う。


「雑魚がどんな作戦立てても無駄だ、俺には勝てん」


「作戦完成してませんけどね…各自臨機応変にね、ああ、こういう指示一番出したく無かった」


 再び剣と剣がぶつかる。


 しかし、今回は防戦一方、というわけでは無かった。


 ランスロット剣が振り下ろすと、氷が現れてジャンヌをガードするのだ。


「これでいいのかな、後方支援」


「ありがとうゲルダ!」


 更に、エルヴィラがランスロットの視界を闇で塞ぐ。これで多少は戦いやすくなる、後はジャンヌの攻撃が届けばいいのだが。


 そうは問屋が卸さない、ジャンヌの剣は、ランスロットの剣に防がれる。


 向こうは支援無しだというのに、三人がかりで攻撃を防ぐのがやっとなのだ。


「でも、戦えないわけじゃない」


「勝てるわけでも無いだろうが」


 ランスロットが一層強く剣を振り上げて、力を込めて振り下ろした。


 再び氷が現れるが、しかし、あろう事か、ランスロットの剣はそのまま氷を砕いて突破して来た。


 よく見ると剣が炎を纏っている。


「そんな事も出来るのかよ!」


 防御壁を失い、ガラ空きになったジャンヌに、ランスロットの剣が襲いかかる。


「っ!」


 しかし、その攻撃は再び防がれた。


 パンッ! パンパンパンッ!


 そんな乾いた音が鳴り、直後ランスロットが大きく仰け反った。


「何…誰がやったの」


「あと四十五回やな…」


 ジャンヌの背後から、そんな声が聞こえた。


「ゼノヴィアさん…⁉︎」


「団長である前に、アンタはウチらの可愛い後輩やからなぁ…そんな子に、負担ばっかりかけてられへんって」


 両手に拳銃を握ったゼノヴィアが、苦笑いを浮かべながら言う。


「氷の魔女さん、これ借りるで」


「『凍結の魔女』ね、どうぞ、使えるなら使って」


 ニヤリと笑って、ゼノヴィアはジャンヌと並ぶ。


「弱いとこ見せたな、でももう大丈夫や、吹っ切れた、いうたら感じ悪いけど、とりあえず、戦う気にはなれたわ」


「ゼノヴィアさん…ありがとうございますっ!」


「ゼノヴィアァ…テメェ…折角見逃してやったってのに…」


 額から小さな煙を上げながら、ランスロットはゼノヴィアを睨みつける。


 そしてそのまま、剣を振ろうとしたが、再び乾いた音が鳴り、その剣は大きく弾かれた。


「もう逃げへんよ、ウチだって家族みたいなもんや、身内で起きた問題は身内で解決するんが筋やからな」


「ゼノヴィアさん…射撃得意なんですね」


 驚くジャンヌに、得意げな笑みを見せながら、ゼノヴィアは言う。


「そうそう、ロット…アンタにも、つーか、誰にもいうてへん事なんやけどな」


 ゼノヴィアは二丁拳銃を構えながら言う。


「ウチ騎士やけど、なんでか知らんけど、剣より銃の方が得意やねん」


 直後、まるで豪雨の様な激しい銃撃が、ランスロットに襲いかかった。


 邪悪な不死性を持つ彼の蘇生回数が、大幅に減った。


「残り二十五回ぐらい、ちゃうの?」


 無限射撃の使い手が、再び現れた。

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