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魔女伝  作者: 倉トリック
墓標の剣編
89/136

プロフェッショナル

 エルヴィラの言う通り、勝負は互角に見えた。いやむしろ、ジャンヌの方が少し押しているようにさえ見えた。


 決定的な一撃こそ加えられていないものの、ジャンヌの素早い斬撃は常にランスロットを捉え、彼に反撃の隙を与えず、ランスロットが防戦一方という状況に追い込まれているように見えた。


 先程から、見えた、と曖昧で不確かな表現をするのは、エルヴィラ達が見ている戦闘風景と、実際に行われている戦闘の内容に、若干の誤差があるからだ。


「手ェ抜かれてんのか」


「余裕なんやな…ロットの奴」


 額に汗を浮かべ、息を切らせ、歯を食いしばっているのは、ジャンヌの方だった。一方で、攻撃を受けているはずのランスロットは、汗ひとつかいていない。

 退屈そうに攻撃を避けて、防御するだけの作業と化している。


「いや、あの様子から察するに、そもそも忘れ形見が攻撃出来ているのだって、あの男がわざとそうさせている感じか…」


 わざわざ隙を見せ、ジャンヌに攻撃のチャンスを与えている。しかし、別にカウンターを狙っているわけでもなさそうで、剣を弾く以外は何か仕掛けようとはしていない。


 戦っている、ようには見えるが、当の本人達にしてみれば、こんなもの、戦いでもなんでもない。


 子供のチャンバラごっこ、もしくは、子犬と戯れて木の枝を振り回しているだけ、そんな感覚であった。


「やる気は…」


 そんな状況に耐えかねたのか、ジャンヌが言う。


「やる気は…無いんですか…ランスロットさん」


 ランスロットは、こちらを睨みつけるジャンヌを呆れたように見ながら、ため息混じりに答えた。


「やる気自体はある…いや、正確には、あった、だな…今は、馬鹿馬鹿しくてやる気が削がれたって感じだ」


「それは…どういう」


「弱すぎるぞ、お前」


 そう言って、初めてランスロットが動いた。そして、その動きが止まる頃には、ジャンヌは押し倒され、その喉に剣を突き立てられていた。


 まさに一瞬、瞬きをして、再び目を開ける時には、すでに状況が変わっていたのだ。


「これでよく堂々と騎士団の団長を名乗れるものだな、心底呆れたぞ、この剣で殺すのも躊躇うほどだ、お前なんかいつでも殺せる、あれだけ大口を叩いておいてこのザマとは…がっかりだぞ」


「ぐっ…」


 力の差がありすぎる。これで恐らく、魔具の力など使っていないのだろう。いや、多少は身体能力の強化などを施しているかもしれないが、それはジャンヌとて同じ事。


 圧倒的に、絶対的に、彼は強かった。


「じゃあな」


 そのまま剣を突き刺されそうになったが、咄嗟に腕を振って剣を弾き、急いで体勢を立て直す。


「がっかり…ですか…それはお互い様ですね…私だって、貴方には心底がっかりしています」


「雑魚がほざくな、何様だ」


「騎士団の団長ですよ、立場だけなら、貴方より上です、そして、団長として、貴方は間違っていると言わざる得ないです」


「…何をほざくのかと思えば、俺が正義の味方か何かだと勘違いしてたのか?」


「そんな事、思ってませんよ…確かに私達騎士団は、平和を守る為に戦います、それを正義だという人もいるかもしれませんが…実際にはもっと汚い事だってやっています、とても堂々と正義の味方は名乗れません、貴方も、私も」


「だったら、お前は俺を、俺達を、なんだと思ってたんだ」


「ずっと、私達の味方だと思ってました」


 困った時は助け合える、仲間だと、思っていた。


「それすらも勘違いだったのが、たまらなく悲しいです。貴方は間違ってる、そんなにも強いのに、すごく間違っている」


 ジャンヌは剣を握る力を強め、鋭くランスロットを睨みつける。


「私達騎士の剣は、誰かを、何かを守る為の剣です…なのに、貴方は、ありもしない被害妄想に取り憑かれ、逆恨みで、私達の仲間を傷付け、その命を奪った…貴方はもう騎士でも何でもない、ただの殺人鬼です」


「綺麗事を並べれば、その殺人鬼が改心してくれるとでも思ったか? 全く響かないな、お前の言葉は、偽善的で独善的、どれをとっても薄っぺらだ」


 ランスロットの剣の赤みが増していく。赤く禍々しい剣は、心臓のように脈打っている、ランスロットの感情に反応するかのように、その鼓動は大きく、速くなっていく。


「結局お前だって、自分の考えが一番正しいと思ってるんだろう? そうやって聞こえのいい言葉を他人に押し付けて、その心を支配してきたんだろう? お前はそれが正しいと言うのか? 俺に言わせれば、そんなものは洗脳と何ら変わらんがな」


「少なくとも、自分の都合で人の命を奪うよりか、よっぽど綺麗だと思いますが」


「いいや、変わらんよ、そいつが生きる時間を、お前の為に使わせて、その中で死んでいったのだとしたら、お前も俺も何も変わらん、違うのは、力があるかどうかだ」


 ランスロットが動く、ジャンヌの首を斬り落とそうと剣を振る。


 その動きも速いどころの話ではなく、一筋の線に見えるほどだったのだが、それでも、ジャンヌは辛うじて見切る。


 咄嗟に防御して、切り裂かれるのだけは避けた。しかし、その衝撃は凄まじく、防御をした、たったそれだけで、ジャンヌは大きく仰け反った。


 そんな隙を見逃すはずもなく、ランスロットは素早く次の攻撃を繰り出す。急所こそ狙えないが、鎧を着ているとはいえ、勢いがあればダメージは多少通る。


 腕を、胴を、足を、次々と斬りつけていく、剣がしなってるように見えるほど、その攻撃は素早く、ジャンヌは一歩も身動きが取れずにいた。


 今度こそ、本物の防戦一方状態。


「情けないな、本当に情けない、自分の理想は立派に掲げるくせに、それを実行に移すだけの実力を持っていない、守る為の剣? 笑わせるな、守るだけならどこか安全な場所に閉じ込めておけばいい、剣はな、斬る為の武器だ、戦う為の道具だ、俺達はそういう存在なんだよ」


 よろめくジャンヌを蹴り飛ばし、倒れた彼女の髪を掴んで無理やり起こす。


「騎士ごっこがしたいなら一人でやれ、お前に団長は向いていない、防衛組織をまとめるなら、まず力が必要不可欠なんだよ、絶対的な力による支配こそ、平和への近道だし、統制された世界になる」


 物理的にも、精神的にも傷付けられながら、しかし、それでも、ジャンヌは自分を掴み上げる手を掴み、ランスロットの顔を睨む。


「…貴方は…間違ってます…それじゃ…魔女狩りと…同じです…その思想に…不満を持った人が…現れて…再び…戦争が起こる…力の恐怖で…支配する方法は、悲劇を生む…」


「そうだな、力があれば、その争いすら止められるがな、今のお前はどうだ、俺一人にすら勝てない弱者のくせに、身の程を弁えろ。お前は、ご立派な理想を掲げられるようなステージにすら立っていないんだ」


「なら…何としてでも…私は、貴方に勝ちます…何をしてもね」


 直後、ランスロットの腕に、剣が突き刺さった。それは、どこからともなく飛んできたように見えた。


「助太刀か…?」


 しかし、ジャンヌの後方にいる仲間に、何の動きもない。透明な魔女の気配も無い、この状況でこんな事が出来るのは、誰だ。


「少し卑怯な手を使わせてもらいましたっ!」


 唖然とするランスロットの隙をついて、突き刺さった剣の柄を握り、ジャンヌは大きく振り上げる。

 スプリンクラーのように吐き出す鮮血と共に、ランスロットの右手が宙を舞った。


 ジャンヌも拘束から解放され、一時的にランスロットから距離を取る。


「な、何したんや⁉︎」


 一部始終を見ていたはずのゼノヴィアが、驚きの声を上げる。見てはいたが、何が起こったのか全く理解できていないようだった。


「う、ウチには、剣が勝手に飛んできたように見えたんやけど⁉︎」


「おう、見たまんまだよ、剣が飛んできたんだ、まぁ正確には、忘れ形見が引き寄せたんだけどな」


 驚くゼノヴィアの顔を見て、得意そうにエルヴィラは言う。


「アイツの鎧には私が魔法効果を付与してるんだよ、その内の一つ、引き寄せを使ったんだろ、対象が重かったり大き過ぎると逆に自分が磁石みたいに引っ張られちまうが、剣ぐらいなら、自分の手元に引き寄せられる、それを利用して、死角から奴の手を貫いたのさ」


「え、つ、つまりアレか…魔法を使ったんか、あの子」


「そういう事だな、相手も魔具持ってんだし、おあいこだろ、さて、どうするのかな?」


 ボトリと落ちた右手を見ながら、ランスロットは表情を曇らせる。痛みもあるだろうが、それ以上に、腹立たしいのだろう。


「小賢しい真似をしやがって…」


「弱者は弱者なりに…知恵を絞るんですよ…でも確かに…貴方の言う事にも一理ある、力は、やっぱり必要ですよね、貴方と対等に渡り合うには、私には足りないものが多過ぎる…」


 私一人じゃ、ですけど、と言って、ジャンヌは苦笑いを浮かべながらエルヴィラ達を見る。


「ごめん! 助けて!」


「プライドとかねぇのかお前!」


 大見得切った張本人が、ものの数分で助けを求めてきた。そのあまりの情けない姿に、思わずエルヴィラは声を荒げる。


「お前、あんだけ偉そうに、勝てますよ、とか、ほざいてた癖に! 私もそれに便乗して、アイツなら勝てるさ、的な事を西支部にドヤりながら言っちまったんだぞ! 滅茶苦茶恥ずかしいじゃねぇか!」


「だから私だって恥を忍んでお願いしてるの! やっぱり私一人じゃ無理だったの! ホントごめん! エルヴィラ! 助けて!」


「チッ、仕方ねぇなっ!」


 エルヴィラは、ナイフの束をランスロットに投げ付けながら、ジャンヌの元へ駆け寄る。


「この借りはデケェぞ、ほんと…つか、言っとくけどなぁ、私が加わったところで気休めにもならねぇと思うぞ」


「そんな事ないよ、エルヴィラが側にいてくれるだけでかなり心強い」


「…なりふり構わなくなったな…所詮一人では何も出来ない小娘か…」


 エルヴィラの攻撃を当然の如く避けたランスロットが、不愉快そうに言う。


「頼れる仲間がいるって事です、それも強さの一つだと思いますよ」


「良い言葉だがな、忘れ形見、残念ながら今の状況じゃ苦しい言い訳にしか聞こえない」


「茶化さないでぇ?」


 イマイチ緊張に欠ける。だが、そんな事は御構い無しに、エルヴィラはランスロットに向かってニヤリと笑う。


「さて、どういう仕組みでお前が生きてたのかは知らないが、また会ったな、こんな再会の仕方じゃなけりゃ、一緒に飯ぐらい食ってやっても良かったのに」


「ほざくな、魔女が、俺はお前達魔女が、昔から気に食わないんだ、異端狩りのような下衆どもに賛同するつもりは無いが、お前達が邪魔だとは思ってる」


「ほう、それはどうしてだ?」


「お前らが下手に力を与えるから、雑魚が思い上がるだろ」


「お前だって魔具持ってんじゃん、それは正真正銘、魔女の力だぜ」


「俺の力は違う、俺の手にこの剣があるのはな、必然だ、力ある者に更なる力が加わるのは、自然な事なんだよ」


 あるべくしてあるものだ、そう言って、ランスロットは、突然、自分の失った右手部分に、剣を突き刺し始めた。


 その瞬間、剣から細い大量の触手が現れ、傷口に入り込み、あっという間に右手と一体化してしまった。


「右手が無ければ実力が落ちると思ったか? 命を落とさない限り、俺はお前らより強いままだ」


 散れ、そう言って、右手の剣を一閃させる。


 今度は、普通の剣撃では無かった。魔力を伴った攻撃。鋭い衝撃波が、地面を抉りながら二人に襲いかかる。


「前回似たような動き見たぞ!」


 避けられないと判断したエルヴィラは、急いで地面を蹴り、防御魔法で土を固めた防御壁を作る。


「まぁ、意味があるとは思えねぇけどな!」


 その言葉通り、衝撃波がぶつかった瞬間、防御壁は粉々に砕かれてしまった。


 しかし、ジャンヌにもエルヴィラにも、ダメージは無い。


「意味無くないじゃない、立派に守ってくれたよ」


「一撃しか耐えられない盾持ってても意味ねぇだろ、しかも多分アイツ、まだ威力上げてくるぞ」


「その通りだな」


 再度、力を溜めたランスロットが、剣を一閃させる。


 更に大きく、強力な斬撃が向かってくる。空気の歪みがはっきり見えるほど、抉られた土が更に粉々になって消えるほど、威力がさっきより増していた。


「防ぎきれるかコレ!」


 こちらも同じく、防御壁を作る、さっきより魔力を込めたが、気休め程度にしかならないだろう。


「馬鹿が、攻撃そのものを変えている、同じ手を何度も使うのは愚策だと、素人でもわかるだろ」


 向かってくる直線の衝撃波が、その形を変え、円形に回転し始める、それはまるで竜巻のように見えた。


 いや、正確には、竜巻とは違う、例えるなら、ドリルのように回転する風の塊。


 物質ではないにも関わらず、防御壁にぶつかった途端、とんでもない重量を感じた。


「コレはマズイ!」


 岸壁に打ち付けられた波のように、衝撃波なら散らせたが、今は完全に魔力によって操られ凶器と化した鋭い竜巻、ドリルのように回転するそれは、いとも簡単に防御壁を削り、支えていたエルヴィラの肩をも貫いた。


 風に血が巻き込まれ、竜巻が赤く染まる。


「〜〜〜ってぇなぁ! 腕取れるかと思ったろうが!」


「腕どころか、粉々にしてやるつもりだったんだがな」


 予想以上にやるものだな、と、ランスロットは感心したような素振りを見せるが、その顔は心底馬鹿にしたようにほくそ笑んでいた。


「大丈夫⁉︎ エルヴィラ!」


「大丈夫なわけねぇだろ…近付くことすら出来ねぇぞ…」


「あ、アレが魔具の力…? 風を自在に操るのかな…」


 吸血鬼化したクロヴィスと似たような能力だろうか、それなら二手に分かれれば対処はできるはずだ。


「いや、なんかおかしいぞ、あれだけ大層な魔具、七つの魔法を取り込んだ魔具が、そんなチャチな能力なわけねぇ」


「さっきから良い勘をしているな、エリー、いや、エルヴィラか、名前は覚えてやる、そうだ、俺の剣は、それだけじゃない」


 魔女殺しにも対応している、と言って、ランスロットは剣を地面に当て、勢いよく擦り付けた。


 その瞬間、眩い光と共に火花が散り、そして、波のような火炎が二人に襲いかかった。


「マジか」


「っ!」


 咄嗟にエルヴィラを抱え、ジャンヌは転がるように回避する。熱風が肌を焼き、火炎が走った後の地面は黒焦げになっていた。


「なるほどな! 分かった分かった! 属性魔法か! お前の剣の能力は、属性魔法を自在に操る魔法か! このクソチート野郎!」


「属性魔法…って、前にエルヴィラが言ってた」


「魔狼だって使ってくるだろ…対して珍しいもんじゃねぇよ、でもな、複数の属性魔法をそれぞれ最大の力で使える奴なんて聞いた事ねぇよ、普通高い威力で使える属性魔法は一つだけだ」


 ちなみに私は全属性を灯火程度には使えるぞ、と、最低の情報を、エルヴィラは自信満々に言う。前から思っていたが、エルヴィラのステータスは偏り過ぎだ、オーバードーズの生成にほとんどの魔力を使っているのだろうか。


「熱かっただろ、冷ましてやる」


 再びランスロットが剣を叩きつけると、二人に向かって亀裂が走り、その間から大量の氷柱が現れた。周囲を凍らせながら向かってくる鋭い氷柱を、なんとか避けた先には、更に氷が待っていた。


「しまっ!」


 なす術もなく、二人はその氷に覆われてしまう。


 しかし、その様子を見て驚いたのは、ランスロットの方だった。


「なんだ…俺の氷じゃないな」


「ちょっと、氷使いは私だけで十分なんだけど」


 白い冷気の中から現れたのは、別の魔女だった。


「お前の事は…知らないな、エルヴィラと何か話していたのは覚えているが、何者だ」


 警戒するランスロットが言うと、彼女はスカートの裾を摘みながら、丁寧にお辞儀をして名乗る。


「『凍結の魔女』ゲルダ」


 名乗り終えたゲルダは、パチンと指を鳴らす、すると、エルヴィラとジャンヌを覆っていた氷が消え、二人が解放された。


「あ、ありがとうゲルダ…焦った…」


「立派な防御魔法だな、ビックリしただろうが」


「守った上に傷も治してあげたんだから、文句言わないでよ、というわけで、助太刀いたす」


 ゲルダが加わり、三人となったジャンヌ達、しかし、それを見ても、ランスロットは表情一つ変えず、再び剣を振り上げる。


「何人来ようが同じ事だ、どのみち皆殺しにはする、一旦リセットしなければならないからな」


 ランスロットが剣を振る。再び炎の攻撃だった、しかし、今度はランスロットを中心に、水面に浮かぶ波紋のように炎が広がっていく。


 瞬く間に氷が溶けるほどの高温だ、ゲルダが展開した氷の防御壁も一瞬で溶かされた。


「まぁ、問題ないね」


 溶けた氷は水となる。水をも蒸発させるほどの炎だが、しかし、それでも、威力が少しは弱まった。


 そこへ再び氷壁を出現させる。


 ギリギリのところで、炎の攻撃は防ぎきった。


 この攻防も、一瞬の出来事である。


「あっぶなぁ…でも、大した事ないね、まだ威力を上げられたとしても問題ない、私の氷だって全力じゃなかったもん」


「やるじゃないか、水溜りを乾かそうとしてやったんだがな、そこまで炎が届かなかった…せっかく慈悲をやろうと思ったのに」


「なんだ、負け惜しみかぁ? ゲルダの氷には勝てなかったみたいだからなぁ! やっちまえゲルダ! お前がナンバーワンだ!」


「ヤバお前…」


 一気に小物化したエルヴィラに引きながら、ゲルダは次の手を考える。


 自慢じゃないが、自分の氷の威力は尋常じゃない、風だろうと同じく氷だろうと、防ぎきれるし止められる。このまま突っ込んでも勝てる気がする。


(うーん…でもまだなぁんか怪しいよなぁ…奥の手を隠してる感じ…あの落ち着きぶりは、注意したい)


 これだけ仲間がいるのだから、やはり連携をとって安全に仕留めたいところだ。


(私に指揮を取れるような実力は無いし、ジャンヌちゃんに任せよう)


「ジャンヌちゃん、私は、次はどうすれば良い?」


「風…氷に炎…それで…水?」


「ジャンヌちゃん?」


 振り向くと、ジャンヌは何かブツブツと呟きながら足元の水溜りを見ていた。


 そして、次の瞬間、飛び跳ねるように二人を水溜りの外へと突き飛ばした。


「は?」


「え?」


「気付いたか」


 ランスロットが剣を振り下ろすと、凄まじい稲光と轟音と共に、水溜りに向かって、雷が落ちた。


「ーーーーーっ! っああああがああああああああああっ!」


 凄まじい電撃がジャンヌを襲う。


 この為に、わざと水まで蒸発させなかったのか。


「ジャンヌちゃん!」


「忘れ形見!」


 鎧につけた防御魔法のおかげで、全身が黒焦げににならずにすんだものの、ジャンヌは痙攣したままその場から動こうとしない。


「威力が強すぎたんだ、魔法が完全に解けてやがる…次食らったら御陀仏だ」


「本当に全属性操れるんだ…マジで化け物じゃん…」


 人間でありながら、属性魔法を使いこなす存在。


 そんな奴見た事も聞いた事もない。


「魔法において、お前達より俺の方がプロみたいだな」


 再びランスロットが剣を振り上げる。


 絶体絶命かと思った、その時だった。


「今だよ…ウル」


 瀕死のジャンヌが、掠れた声で呟いた。


 その瞬間、いつの間にかランスロットの背後にいたウルが、剣を一閃させる。


「貴様…」


「死んで償ってもらいます」


 確実に剣はランスロットの首を捉えた。


 再び血飛沫が舞う。


 ゴロリと、ランスロット首が落ちた。

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