夢の宴....最終章
この作品は、全て妄想であり、創作です。
私は東京に逃げ帰った。
浩行と過ごした一夜は封印する事に決めた。
浩行は優しく扱ってくれて、私は幸せだった。
でもきっと二度は無いだろう。
有名な歌にもあるでは無いか、あなたにとって私、ただの通りすがり。ちよっと振り向いて見ただけの異邦人。
よくそんな冷静になれたと、あの件に関しては自分を褒めてやりたいくらいだが、つまりは浩行に溺れて夢中で熱を上げて追っかけ回す自分になるのが怖かったのだ。
一彦の事も、悠介の事も、都合のいい時だけ好きになり、浩行の事も、本当に傷つく前に逃げてしまう私。
大人への道はまだまだ遠そうだ。
でも不思議な事に、女嫌いの噂を流し、薬指に指輪までして女を遠避けてる浩行が、成り行きとは言え、一夜でも私を相手にしてくれた事に、大学に入ってから大嫌いだった自分をまた好きになる事が出来た。
あの夜、裸の私を後ろから抱きしめた浩行は言ってくれた。私の長い髪を片手で梳きながら。
『T高にも君みたいな可愛い子いたんだね?悪いけど、ブス眼鏡しかいないと思ってたよ。あそこ女子も少ないんだし、モテたろ?』
私は笑いながら、
『ほら順君の礼子さんだってT高よ?綺麗な人、沢山いるんだから』
『ふーん。頭も良くて可愛いか。最高だなぁ。ね、マジ、僕の彼女にならない?』
『良く言うわよ。指輪やってる人が。』
『あっ、これは女避け。僕、おっかけられるのが生理的にダメなんだよね。スカした女の子が好きなんだ』
じゃ、私はスカして見えたのか?笑
浩行の枕言葉を鵜呑みにするほど、私も単純でもなかった。浩行といれば幸せな時も沢山あるだろうし、地方のカリスマボーカルの彼女って事でみんなに嫉妬されて気分いい時もあるだろう。
でも、浩行と私は住む世界が違う。異人種の住人だ。そのうちへだだりが出ていがみあったりするだろう。私の常識と浩行の常識が食い違い、相手をこき下ろしたりするだろう。
何と言っても、私は平凡であり、浩行は輝く人なのだ。浩行と一緒にいた時間はほんの一瞬の夢の宴だった。
これからの学生生活、ふて腐らず地に足を付けて歩んでいこう。将来の事も、両親の小言から逃げ回ってばかりいないで、しっかり話し合ってみよう。
今後、一体どんな人が私の隣にいるのか想像もつかないが、少しでも道が開けるよう努力しよう。
自分が、やるべき事、やりたい事、必ず見つかるはずだ。
私はまだ19歳だもの。大学受験に失敗したからって人生まだまだ、これからだよね?
大好きな映画の中の言葉。
明日は明日の風が吹く
浩行と過ごした菅田、未来への第一歩ですね!
この作品のモデルはありません。全て筆者の想像です。