悠介と私
この作品は、全て妄想であり、創作です。
理沙は悠介の絵のモデルになるそうだ。
その件で、悠介がお礼がてら私と話したい、受験に入る前にどこか行かないか?と言うので、私はかる〜い気持ちで、春休みに近くの遊園地と動物園が一緒になっている施設に出かけた。
悠介は理沙みたいな綺麗な子をモデルに絵が描けるのがラッキーだと言っていた。私は聞いてもよく分からなかったが、何とかって展覧会に応募するのだそうだ。
本当に悠介は勉強に絵画に運動に何でも出来る。
私達は珍しいホワイトライオンや、人気の猿山ボスを見て大笑いし、あの頃まだあったコーヒーカップをぐるぐる回したり、観覧車に乗ったりして大はしゃぎした。歩きながらポップコーンやホットドッグを食べた。
考えてみたら、一彦とはサランドルでの喫茶店デートか図書館でのお勉強デートしかした事が無く、 ーまぁ、一彦とは帰り道にお別れのキスが付いたりはしたがー 彼氏じゃない悠介とこんなに無邪気に遊んでいいんだろうか?
帰り間際、私は思い切って聞いて見た。
『このまま理沙と付き合う流れ?』
『うーん。この前の市民ライブの帰り、告白はされたよ。ずっと探してたって。』
と、少し照れくさそうに悠介は笑った。
これは由香が佐々木君から聞いたらしいのだが、理沙と佐々木君はくっついたり離れたりしたらしいが、今は2人ともフリーに戻ったらしい。
悠介によると理沙はお父さんがまさかのリストラを経験し、お母さんは一時期苦労したとか。だから卒業後は一生働いていける美容師になるつもりで、隣の市の専門学校に進路を決めているそうだ。うんうん理沙の雰囲気に似合う似合う。
悠介は医者に、出来れば外科医になるつもりだと。もちろん国立を目指す。現役で行きたいからこの春休みからも死ぬ気で勉強する。趣味の絵も大学まで封印する。
『菅田さんはどうするつもり?どうせまだ進路なんて決まって無いんでしょ?佐藤一彦とおんなじ大学行けばいいや、ぐらいの調子でしょ?』
痛いとこを突かれた。
そう、私は何にも考えてなかった。
そもそも自分に何が向いてるのかさえ分からなかった。
奈津子は薬科大学を、由香は家業をいずれ継ぐため経済学部を、由紀は女子大を、紗江子は英文科を、そして一彦は地元の国立の理学部から同じ地元の大手電気メーカー就職を考えていると。由利子に至っては留学するそうだ。
私は焦った。
母もうるさいし。
図々しく一彦と悠介ので間でぬるま湯に浸かってる場合では無いのだ。
悠介を送って行った駅の工事現場の陰で、悠介は一回だけ抱きしめさせてくれと言って、ぎゅーとして来た。ほんの一瞬。
そして後ろも見ないで電車に乗って行ってしまった。
進路に焦ってきた菅田。みんなは着々と未来に歩き始めてますね!