悠介に告られる
この作品は、全て妄想であり、創作です。
盗撮と言う言葉があるが、まぁ、芸能人でもない限り気分の良いものではないだろう。
しかし、悠介のスケッチを見たあの時の私の気持ちをどう表現したらいいのだろう?
照れ?驚き?嫌悪?
いやいや、感激だった。
悠介にスケッチブックを取り上げられる前にたっぷり10分は見ていたその私の画は、美しかった。
自分で言うのも恥ずかしいが、自分が他人から見てこんなに綺麗な表情をして笑っているんだろうかと。
もしこれに色を乗せたらどんなふうに仕上がるのか見て見たいと、マジ思った。
黙って下を向いていた私を見て、悠介は私が気を悪くしたと思ったんだろう、必死で謝って来た。
『ゴメンね、菅田さんがあんまりいい表情してたからさ。僕、絵になるなぁと思うと、ついスケッチしちゃう癖あって。これ、返すからさ』
と言って破いて私に渡した。
このシーン、どっかで見たか聞いたかしたよな?と思ったのだが、とにかく私はドキドキしてしまって、その場では理沙の事は結びつかなかった。
私も、必死に
『違う違う。恥ずかしかっただけ。良かったらそれ、完成させてからくれないかな?』とだけ言ってその場から逃げた。
顔が真っ赤になっているのが、自分でも分かる。
逃げるところで、バッタリ奈津子に会い、
『スガ!ー私の呼び名ー 赤い顔してどうしたの?探してたんだ。今、抜け出せるんなら、あっちに一彦も由香もいるから他のところ見に行かない?』
と、グッドタイミングで誘ってくれた。
スケッチ事件があって、私と悠介は急接近した。
悠介は大人しい顔をしてなかなか積極的だった。
私は2年になってから仲良くなった別の友達、由紀と紗江子といつもつるんでだが、2人がおとなしかったせいもあり、私が2人と話込んでても、悠介は平気で話に割り込んで来て、私達を笑わせたり、時には勉強を教えてくれたりした。
悠介は良く自宅にもどうでもいい用事で、まぁ、大抵は勉強にかこつけてだが、電話もして来た。
母は悠介がきちんとしてると言って、勉強もかなり出来る話も言ってあったせいか、結構気に入っているようだった。
悠介に勉強教わりに図書館に行くと言っても母は難色を示さなかった。薄気味悪い!
今まで、母に一彦と会いに行くなんて言った事は無いが、親の勘でなんとなく私が一彦を好いてるのを見透かされていたからだ。
一彦の話題でいい顔をされた事は一度もなかった。
そんなある日、悠介が私に言った。
『菅田さん、佐藤一彦と付き合ってるんでしょ?失礼ながら、僕の方が君に合ってると思うんだけど?』
私はまたまたビックリした。
確かに悠介の気持ちには気づいていた。
メガネの奥から私をじっと見つめる、何とも言えず優しい瞳に。
でも、恋に手慣れてない私はうまくかわす事が出来なかった。
何より私自身が、悠介のちょっと変わった魅力に惹かれていた。
一彦が絵に描いたような誠実男子だとしとら、悠介は秀才君のちょい悪風。
私は返答に困ってしまい、でも一彦が好きなのだと、モジモジしながら言った。
すると、悠介は
『じゃ、今日のところは引き下がるけど、僕の見たところ、まだチャンスはありそうだよね?またまだ高校生活残ってるんだしさ?』
と、自信たっぷりに言ってのけたので、私はイラッとしたが、嬉しかったのも事実だ。
次の日、虫が知らせたに違いない、一彦が私を教室に迎えに来た。悠介は知らんぷりで横を通る。
久しぶりに一緒に帰り道、もうあたりは暗かったのもあり、私は一彦の手を握ってしまった。
すると一彦は人気の無い駐車場に私を引っ張り、私にキスして来た。ぎゅーっと、抱きしめて。
一彦は言った。
『菅田さんが、離れて行くようで、最近、不安なんだ』
私は何言ってるの、バカな佐藤君!
と言いながら、自分のいい加減さが一彦を傷つけてるんだと思い、自分を責めた。
あれま!悠介には告られ、一彦にはキスされ、菅田さん、モテ期に突入ですかな?