悠介との出会い
この作品は、全て妄想であり、創作です。
2年生になって、私達六人は全員クラスがばらばらになった。
奈津子とも由香とも一彦とも別になり寂しかったが、一彦とはバドミントンが無い時は相変わらず一緒に帰ったし、すでにあちこちの校内カップルが出来ていたので、私達も浮かなくて済んでいた。
彼、赤沢悠介が理沙を助けたと言うスケッチの君だと分かったのはほんの偶然だった。
前にも言ったが、私は一彦と付き合うようになって、他校の理沙の話など、すっかり忘れていた。
一彦に夢中だったせいもあるが、奈津子の憧れのキャプテンが、突然転校してしまったので、奈津子からキャプテンを理沙に紹介するむねの話を聞く機会がますます薄れたためである。
赤沢悠介は、非常に成績が優秀だった。2年になって、理科が生物から化学と物理に変わり、数1が数2Bになり、この頃から、今までの成績上位者が微妙に入れ替わって来た。
去年まで暗記ものが得意だった女子より、理系男子達が上位を占めるようになって来たのだ。もうその差は歴然としていた。
毎月張り出しされる科目毎のベスト20位までの成績順位は、化学、物理、数学あたりはほぼ男子が占め、英語はリーダー、グラマーと男女半々、現国、古典あたりは女子がダントツの強さを見せた。
悠介は化学、物理、数学、リーダー、グラマーはベスト20位に載ってないない事はまず無かった。どんなテストでも安定の順位だった。
かといって、特別クラスで目立つこともなかった。
悠介がクラスの注目を浴びたのはイラストである。
T高では毎年、体育祭と文化祭を交互に行う。
去年が体育祭だったので、今年は文化祭だ。
どの高校もそうだと思うが、T高の文化祭もちょっとした大イベントだった。
T高はもともと男子校だったため、女子は学年で私達90人しかおらず、残り男子は360人な訳だから、仮に女子全員カップルになったと仮定しても、当然男子が余る。
T高祭は他校の美女を呼び込む、最たる重要ミッションなわけだ。
果たして文化祭の当日、私達の7組はティールームをやったが、これが馬鹿受け。ありとあらゆる女子とカップルと他校生が来た。
私も高校に入ってあんなに働いた事はない。
そんな平凡なティールームが何故受けたかと言うと、悠介が書いたイラストがあまりに美しかったからだ。
悠介はあの当時大人気だった女子漫画の登場人物を全て描き上げ、係全員でそれを張り付けて飾り付けた。あんまりリアルに旨かったので、美術部が、悠介を入部勧誘に来た。ちなみに悠介も帰宅部だった。
私は疲れ過ぎて、ちょっとサボっていた時に悠介のスケッチブックを偶然見つけ、今回使った下書きが沢山描いてあるのを感心しながら見ていた。
すると、悠介がちょっと、焦ったように取り上げた。
そこにはとても見慣れた画が書いてあった。
私が笑っていた。
あれ?悠介にスケッチされてた私。何かが起きそうですね。